目次
【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレー】6月を振り返る
今月のカレーは、
・盛り上がりを見せているカレーイベントのレポート
・沖縄ミックスの個性派インドネパール系
・時代を先駆けるカレーカフェ
・間借りから単独店舗として営業開始した南インド料理店
以上4つ。
ジャンルもスタイルも違うお店ですが、全てのお店に共通するのは接客が良いということ。飲食店は味だけではなく、ホスピタリティも重要ですよね。素敵な接客なら味も良く感じるものです。接客、サービスの良さとはただ気さくに話しかけるということではなく、客のニーズに的確に応えられているかということも含まれます。
今月のカレーでご紹介するお店は、全て僕のニーズに完璧に応えてくれるお店ばかり。どうぞご覧ください!
【第1週のカレー】人気間借りカレー店が集結! 行列の出来るカレーイベントをレポート
ひとつの店舗を、異なる飲食店とシェアしてカレー店を営業する「間借りカレー」という言葉もすっかり一般層にまで定着しつつある昨今。先日、東西間借りカレーの人気店が一堂に会し、その味を食べ比べることが出来るというイベントが東京・馬喰横山にあるホステル「CITAN」で開催されました。
人気店が集結するとあって、開場前から長蛇の列が出来るほどの集客。最長では2時間以上待った方もいらしたようで、やはり今、カレーが本当に注目されているのだなと再確認しました。イベントはDJによる音楽の中でカレーを食べられるというもの。カレーの美味しさと音楽の心地良さの相乗効果で、お客さんも皆笑顔でした。
この日集まったお店は、東京の間借りカレーの古株といえる渋谷「ケニックカレー」、間借りカレーの聖地・新宿ゴールデン街での間借り営業で人気に火が付き、今は東新宿で実店舗営業中の間借りカレー卒業生「サンラサー」、高田馬場と高円寺で間借り営業をしている「Sho Curry」、そして大阪からは、メディアでも大人気の「堕天使かっきー」。
最後に、会場を提供した、言わば間貸し主である「CITAN」もイベント特製カレーを振る舞い、5つのカレーを食べ比べることができました。三者三様ならぬ、五者五様のカレーはどれも美味しく、カレーの進化と楽しさを感じさせるものばかり。

ケニックカレーは看板メニューの「ケニックキーマカレーと魯肉飯のあいがけ」1,000円。お店と変わらぬ美味しさに大満足です。


サンラサーは「バイマックルーキーマカレーと鯖キーマのあいがけプレート」1,200円。タイのハーブをインドのカレーと合わせるそのセンスと、確実に美味しくしあげる腕は流石です。

Sho curryは「マトンブナ(羊肉のカレー煮込み)」と、ケララ出身の若きインドシェフ・ヴィシュヌさん特製の「チキンカレー」各500円。こちらはそれぞれハーフサイズでいただきました。このイベントの中で、ナンで食べられるカレーはこのメニューのみ。オーセンティックな美味しさで見事な差別化ができていました。

CITANは「チャイニーズキーマカレー」(ハーフサイズ)500円。ここ数年で人気急上昇の中華系カレーです。花椒の痺れのみならず、トウチーによる深みも加わり、ナッツの食感も楽しく、他の名店に負けない美味しさでした。CITANは普段のメニューにもカレーがあるのですが、だからこそですね。

そして注目度の最も高かった堕天使かっきー。「鯛×鶏×豚のスパイストリプル清湯スープ」「本マグロとホタルイカのスパイス炊き込み飯」「苺スパイス酢味噌のぬた添え」がセットで800円。メニューからして意味が分かりません(笑)。しかもこれにトッピングで「飯がけスパイス漬け日本酒」100円がつけられるという。さらに意味不明ですよ(笑)。
食べてみても頭が混乱するんです。「なんだこれ?」と思いながらも、食べ進めていくと「よく分からないけどとてもおいしい!」という結論に達する摩訶不思議な料理。カレーなのかカレーじゃないのかも分からないのですが、日本酒をかけてみると不思議とカレー感が強まり、食べ終わった後の口中はおいしいカレーを食べたんだという満足感に浸れるものになっていて、堕天使かっきーの天才的な変態(褒め言葉)ぶりを東京のカレーマニアに見せつける結果となりました。
また、イベントでは僕と、カレー大好きで知られる人気モデル村田倫子さんによるカレートークも行われ、若い世代のお客さんも集まってくれて、次世代のカレーを支えて行くであろうカレーマニア、カレーファンが着実に増えていることも実感しました。

このようなイベント、大阪では多数あるのですが東京ではまだまだ少ないです。しかし、今回の大成功も踏まえて、これから徐々に増えて行くと確信しています。カレーは音楽やファッションなど、他のカルチャーとの親和性が非常に高い食べ物です。だからこそ、もっともっと面白くなっていく可能性を秘めています。
他文化との融合ははからず、イベントにも出ないで求道的に己の味を突き詰めていくような名店も存在します。同時に、柔軟な発想とフットワークの軽さでカレーの新しい楽しみ方を提示していくお店も少しずつ増えてきており、そのどちらもカレーの世界には必要不可欠だと思います。
カレーは元々、自由度の高い食べ物です。様々な楽しみ方があってしかるべきもの。カレーがさらに楽しい文化となっていきますように!
※価格はすべてイベント限定&税込
【第2週のカレー】各国の“おいしい”が凝縮! 唯一無二の“インネパ”料理店とは?
ここ数年のスパイスカレーの流行、そしてここ最近の南インド料理店の急増など、カレー界の流行は色々とあるのですが、ネパール人によるインド風料理を中心としたアジア料理店、つまりはマニアの間では「インネパ」とも呼ばれるタイプのお店も、流行とは全く関係の無い所でしっかりと存在し続けています。
インネパというとあまり良い意味では使われないことも多いのですが、個人的には愛を込めてその言葉を使っています。確かに本格的なインド料理ではないかもしれません。しかし、だからこそ面白い独自メニューがあったりもするのです。カレーマニアには敬遠されがちなインネパですが、中には面白いだけではなくおいしいお店もしっかり存在しています。
今回はそんなお店の中から、僕が定期的に通っている「パパスバル」をご紹介しましょう。
「パパスバル」はネパール人がオーナー、沖縄出身の日本人が店長というタッグ。だからこそ、インド、ネパールのみならず、沖縄的なものがミックスされているのが珍しくて良いです。バルというだけあってお酒も豊富。

ネパール焼酎からハブ酒まで常備しています。また、パクチーに対するこだわりもしっかりとしていて、オーナー所有の畑で自家栽培したパクチーを使用しており、フレッシュな美味しさです。

僕の定番は、日替わりの「本日のカリーおつまみ」650円。この日はキーマ野菜カレーでした。こちらはナンやライスはつかず、おつまみとしていただけるセミドライタイプの小さ目カレー。優しい味で夜遅い時間にちょうど良いです。


そして僕のイチオシメニューである「インド風ゴーヤチャンプルー」800円も欠かせません。これこそこちらのお店の真骨頂! ゴーヤチャンプルーとしてもクオリティが高いものにカレーのスパイスが加わって、ゴーヤの苦味が見事に美味しさに繋がっています。
そもそもカレーとは、単体では苦かったり辛かったりするスパイスが、組合せ次第でえもいわれぬ美味しさに変わるもの。つまりこの料理では、ゴーヤは具材であると同時にスパイスにもなっているんですね。他のお店では味わえない逸品です。

そしてこちら、タンドール料理もおいしいのです。無難にタンドリーチキンも良いですし、絶品ラムチョップもおすすめなのですが、この日いただいたのは「釜焼きラフテー」800円。ラフテーとはつまり沖縄の豚の角煮。これをタンドールで焼いたという個性的メニュー。程良い甘味の豚肉が香ばしく焼き上げられており、これまたこちらでしかいただけない味ですね。
こちらのように流行とは関係ない場所にある、楽しくて個性的なお店も少しずつ増えてきています。そういうお店も大事にしていきたいと思っています。
※価格はすべて税抜
【第3週のカレー】一歩先行く中華カレーが食べたい人に知ってほしい「担々カレー」
「スパイスカレー」という言葉は、カレー界においても扱いが難しい言葉といわれています。事実、厳密な決まりというものはなく、ルーで作る欧風カレーとは異なりスパイスで作るカレーであり、インドカレーともスリランカカレーともまた少し違うカレーというような意味で使われることが多いように感じています。
大阪でそのようなカレーが増え、全国に広がっていることからここ数年で使われだした言葉なのですが、そのスパイスカレーという言葉が生まれる前から、東京・要町で独自のカレーを作っている名店があります。その名も「かえる食堂」。今週のカレーはこちらのご紹介です。
カウンターのみの小さなお店。小麦粉を使わず野菜とスパイスで作ったカレーライスと、自家製スイーツやドリンクが味わえるのですが、どれを食べても飲んでも最高においしいお店です。僕がここで一番好きなのは担々カレー。つまり担々麺の“担々”がカレーになったこの店オリジナルのカレーです。

中華カレーが増えてくる前から存在し、そして中華カレーが増えた今の時代においても一歩先行く美味しさのこのカレー。昨年から「赤担々カレー」900円と「黒担々カレー」950円の2種類の担々カレーが食べられるようになりました。このカレーの為だけに専用の醤を作っているというこだわりよう。赤はシャープに、黒は奥深く、違う美味しさになっているので食べ比べも楽しいです。

今月からほんの少しだけ値上げに伴ってメニューを改定したのですが、そのタイミングでトッピングもできるようになりました。おすすめは「ソーキ」150円。豚軟骨を甘辛く煮たもので、沖縄のソーキそばのソーキです。これを担々カレーに追加したら、美味しさの相乗効果でとんでもないことになります。ご飯の量をグラムで指定できたり、添えられたレモンを途中から搾って食べると味変になったりと、細かいサービスも嬉しいです。
おいしいカレーの後はおいしいスイーツもいっちゃいましょう! おすすめは、自家製のシフォンケーキとキャラメルアイス。どちらも食べたい方は「シフォンサンデー」450円がおすすめ。

シフォンは日替わりなのですが、この日はレモンとポピーシードのシフォンでした。ふわっとしっとりしたシフォンケーキと、甘さ控えめのキャラメルアイスは相性抜群! さらにさらに、こちらのお店が素晴らしいのは、カレーと飲み物を一緒に食べると100円引きとなり、さらにスイーツを追加すれば200円引きとなるサービスがあるということ。

こうなったら飲み物も追加だ! というわけで「スパイスティー」450円をいただきました。シナモンとカルダモンが香るマサラチャイ的な飲み物ですが、しっかりと泡立ったミルクと隠し味の生姜のバランスが最高で、幸せ度合いをさらに深めてくれます。
昼のみの営業で売切れ次第終了ということでなかなかハードルが高いお店なのですが、カレーも甘いものも好きという方は一度行っておかねばならない名店です。そして一度行ったら二度三度行きたくなるでしょうし、行くべきです。何しろ全てのメニューが最高に美おいしいのですから。
一周回って担々カレーにたどり着いた僕。皆さんはどこにたどり着くのでしょうか。それを探すのもきっと楽しいですよ!
※価格はすべて税込
【第4週のカレー】単独営業化でさらにパワーアップ! 西荻窪で注目の南インド料理店
ひとつの店舗を、異なる飲食店とシェアしてカレー店を営業する「間借りカレー」。本連載でもことあるごとに取り上げてきましたが、その間借りカレーが単独営業に変わるのは、音楽業界で例えるならインディーズバンドがメジャーデビューするようなものであり、喜ばしいこと。
今回ご紹介する、東京・西荻窪の「とら屋食堂」は、そんな中でも特に幸せな形で令和元年6月に単独店として営業開始したお店です。
何が幸せかというと、元々とら屋食堂が間借りしていたお店が閉店することになり、そのまま移行する形で、同じ場所がとら屋食堂という独立したお店に変わったということ。これはお店の人気も、店主のお人柄も、どちらもあってこそでしょう。
そしてこの日は、基本的に予約営業となるディナーの時間帯にうかがいました。

「ディナーミールス」2,000円は、肉や魚が入っていないベジタリアン仕様。そもそも南インドのベジミールスは、日本人の舌ではひとつひとつのカレーや副菜の味が薄く感じ、その味を理解しきれないこともしばしばあるので、混ぜて完成する美味しさだということを知っておくべきでしょう。
しかしこちらのお店のミールスは、ひとつひとつのカレーや副菜の味が薄味ながら奥深い味わいで、それだけで食べてもおいしいのです。それを混ぜればさらに美味しさが倍増するのだから感動もの。和の食材を取り入れた独自性あるミールスは日本人シェフだからこそ。

一緒についてくる「ワダ」(南インドの甘くないドーナツ的なもの)も揚げたてで、サクっとフワっとした食感は前菜として完璧です。
肉や魚を食べたい人は、オプションで追加するのが良いでしょう。この日は「三元豚のヒレ肉ポークビンダルー」800円と、「茄子のマサラ詰ロースト」400円を追加オーダー。

「三元豚のヒレ肉ポークビンダルー」(豚肉のカレー)は、ヒレ肉使用だけあって柔らかくて、噛む程に豚の旨味がしっかりと感じられる部位。酸味が特徴のカレーは、ミールスと混ぜても最高の美味しさです。

そして「茄子のマサラ詰ロースト」。文字通り茄子の中にマサラ(スパイス)が詰められており、茄子好きでスパイス好きにはたまらない逸品。本来肉好きの僕が、あえて野菜をオプションで追加する程の美味しさであり、高い満足度。素晴らしい味の世界です。
味が良いだけではなく、こちらは接客の良さも特筆すべき点。常連さんのわがままメニューに気軽に応えたり、それに応えて作ったものを他のお客さんにサービスで振る舞ったりと、嬉しいサプライズが巻き起こることもあります。
初対面のお客さん同士を上手に繋げてくれる接客は、美味しさをさらに引き上げてくれるもの。これはこちらのお店が全国各地でカレーイベントを開催し、旅先で出会った人達との繋がりを大事にしているからこそでしょう。
人との一期一会、そして食の一期一会も堪能できる素晴らしいお店の実店舗営業化。嬉しい限りです。
※価格はすべて税抜
取材・文・写真:カレーおじさん\(^o^)/