駅弁のプロが太鼓判! お花見エリアの必食駅弁リスト〈北海道編〉

お花見シーズンのラストを飾るのは北海道エリア。今年最後のお花見は列車の旅で堪能するのはいかがでしょう?  駅弁のプロのお三方が、お花見とベストマッチの駅弁を紹介する短期集中連載。最終回となる今回は北海道地方の春駅弁をお届けします。(九州編関東編中国・四国編東海編関西編中部編東北編もチェック!)

ウェブサイト「駅弁資料館」館長 福岡健一さん推薦!:函館駅「鰊みがき弁当」

梅と桃と桜をまとめて味わえるのが5月の北海道。南仏プロヴァンス地方や北米大陸の五大湖周辺などと同じ緯度に位置しながら、太平洋の千島海流やユーラシア大陸がもたらす寒気により凍り付いた大地は、ここで一気に生気を取り戻し、爽やかな夏へと駆け上ります。氷雪で真っ白になりながら疾走した、札幌駅~函館駅の特急「スーパー北斗」もまた、茶色から緑色やピンク色に移り変わる季節の植生に触れながら、函館・五稜郭や登別などのサクラの名所を遠巻きに、内浦湾沿いや石狩平野などをダイナミックに滑り行くようになります。

かつて北海道の玄関口として鉄道と連絡船を乗り継いだ函館駅には、その当時からの名物駅弁「鰊みがき弁当」が健在です。ご飯の上に、1966年の発売当時から変わらない、天日で干した身欠きニシンの甘露煮と、柔らかく調理されたカズノコをたっぷり載せ、茎ワカメの醤油煮と、大根の味噌漬を添えたもの。かつて3~5月に北海道の日本海側へ大量に押し寄せたことから春告魚(はるつげうお)と呼ばれるニシンを一年中、味でも量でも十分に味わえる傑作は、北海道も新幹線の時代となり、新たな駅弁が登場したなかでも、函館駅でナンバーワンの存在感を示していると思います。

駅弁ライター望月崇史さん推薦!:厚岸駅「氏家かきめし弁当」

せっかく北海道で桜を観るなら、根室の「日本一遅咲きの桜」を観たいものです。根室市観光協会によると、昨年・平成30(2018)年は、5月13日開花、16日に満開を迎えました。根室へ鉄道で行くには、まずは札幌・南千歳から特急「スーパーおおぞら」号に揺られ、釧路までおよそ4時間、さらに根室本線の快速「ノサップ」「はなさき」などで、およそ2時間!

6時間も列車に揺られると、お腹が空きますので、途中の厚岸(あっけし)駅で腹ごしらえ。やはり、氏家待合所の「氏家かきめし弁当」をいただかずして、根室に行くことはできません。プリッとした牡蠣、煮汁がしみ込んだ甘いご飯、ひじき、刻み海苔のハーモニーが見事! 特に厚岸発9~15時台の列車では、ホームまでかきめし弁当を持ってきてくれます(2時間前までの要予約、お釣りの要らないように現金を用意、電話:0153-52-3270、木曜定休)。終着・根室駅からは、徒歩10分ほどで、チシマザクラの名所「清隆寺」へ行くことが出来ます。桜のために、半日をかける旅というのも貴重な人生経験。「花咲線」の愛称で親しまれている根室本線・釧路~根室間の列車で、駅弁の花を咲かせながら、“桜前線の終着駅”を見届けてみませんか?

旅行ジャーナリスト 小林しのぶさん推薦!:札幌駅「札幌駅弁よくばり膳」

札幌の駅弁は海鮮系を中心に、幕の内、肉めし、押し寿司など種類も豊富で、新作も毎年のように登場し、駅構内の売店を覗くのがとても楽しみになります。今回紹介する「札幌駅弁よくばり膳」は、それら札幌の人気駅弁4種類が同時に食べられる画期的な駅弁。箱の上にデザインされた4つの掛け紙がそれぞれの駅弁で、4分の1ずつの量がひと箱に収まっています。右上は「牛めし」。北海道産牛肉を使用し、シシトウとシメジがのっています。ヒモを引くと温まる加熱容器入りの「あったか牛めし」からのエントリーです。左上は「石狩鮭めし」。大正12年から販売されている札幌駅立売商会の顔ともいえる駅弁で、鮭めしの上にイクラがたっぷり。あぁ札幌に来たなぁと実感する駅弁でもあります。そして右下は「海鮮えぞ賞味」。通常版にはカニ、ウニ、イクラ、鮭などがたくさん盛り込まれていますが、ミニバージョンなので少しずつ。しかし食べ終えた時の満足度はすこぶる高い駅弁です。左下は「知床とりめし」。特にファンが多い人気の味で、知床どりの炊き込みご飯と照り焼きがバランスよく入っています。1箱で4度美味しい、ちょっと得した気分になる楽しい駅弁です。

 

教えてくれたのは

ウェブサイト「駅弁資料館」館長 福岡健一さん

1973年長崎県生まれ。日本全国と海外の駅弁を紹介するウェブサイト「駅弁資料館」の館長。年間約400個のペースで全国各地の駅弁を食べ集め、今まで食べた駅弁は6,600個以上。日本国内の全線と海外25か国の鉄道に乗った「乗り鉄」でもある。

 

駅弁ライター 望月崇史さん

1975年静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、ニッポン放送で放送作家に。番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年、およそ4,500個! 放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。「1日1駅弁」を基本に、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の執筆を行う。

 

旅行ジャーナリスト 小林しのぶさん

千葉県出身。新聞・出版・編集制作会社を経て独立。年間150日近くを旅するという旅行ジャーナリスト。駅弁はこれまで30年以上、5,000個以上を食べ歩く。雑誌やウェブだけでなくテレビ番組でも活躍中。