【森脇慶子の新店開拓】食べた瞬間、感動でみんな無言になるカレー


梅雨明けが待ち遠しい今日この頃。蒸し暑さに食欲もどんよりしがちな時は、スパイシーな料理で気分も胃袋もシャキッとさせたい!

 

ならば、やっぱりカレーが一番。そこで、今回ご紹介するのは、2017年5月26日にオープンした二ューフェイス。その名も「GOOD LUCK CURRY」。

 

場所は恵比寿。と言っても、駅から歩いて10分弱かかり、決して便利とは言えない場所にありながら、開店2週間めにして、早くも大盛況!!

 

時分時(じぶんどき)となれば、定員10人の小さな店は満員御礼。待ち人も出る賑わいぶりで、何ヵ月か先には、階段の下まで行列ができそうな勢いだ。

 

それもそのはずで、実はここ、代官山の魚介フレンチ「Ata」の掛川哲司シェフが、新たに仕掛けたカレー専門店。お味の方は推して知るべしだろう。

 

でも何故、フランス料理のシェフがカレーのお店を?

「日本人にとってカレーは国民食。フランス料理と違って、デイリーなものですよね。そんな日常生活になじんだ食べ物をリノベーションしてみたかったんです」溌剌とこう語る掛川シェフ。

 

フランス料理の要“フォン”(出汁)を生かせる料理は何かと考えた時、真っ先にカレーが頭に浮かんだのだとか。もとより、掛川シェフ自身も大のカレー好き。けれども、なかなかこれぞという味に巡り合わなかったそうで、「カレーってもっと美味しくできるはず。ずっとそう思っていたんです。食事としてちゃんと満足できる、バランスの良いカレーって意外に少ない。食後感の軽いカレーを作りたかったんですよ」とも。

 

それゆえ、フレンチをベースとしながらも、いわゆる欧風カレーとは全く別物。ルーに頼らないサラリとした口当たりとキレのあるスパイシーさが特徴だ。

 

それも、もともとのスープに手間をかけキチンと仕込んでいるからこそ。しかも、具材に応じてベースのスープもスパイスもそれぞれ変える手間のかけ方だ。

 

通常、メニューに並ぶのは2種類。定番の海老カレーと日替わりが1種類で、取材日はチキンカレー。その他、現在、レパートリーはビーフやキーマカレーなど数種類。


「これから、もっとバリエーションを増やしていくつもりです」と話すのは、お店を任された菅原 悠さん。

「Ata」のオープニングスタッフで、この店を始めるにあたり、インドのスパイスやカレーについて猛勉強したとか。しかし、軸足はあくまでもフランス料理だ。そこにブレはない。掛川シェフによれば、「特にインドカレーを意識して作っているわけではない」そうで、フレンチの伝統と自らのインスピレーションの融合から生まれたのが、ご覧のカレーのスタイルなのだ。

【カレー単品は800円。あいがけは900円】

 

一見、インドカレーのようだが、海老カレーのベースは、魚のアラやオマール海老の頭などでとったフレンチの本格的ビスク。ビーフカレーにはフォン・ド・ボーを使うなど骨格は、まさにフレンチだ。

 

一方で火が入りやすく、味がよく出るチキンには、フォン・ブランではなくあえて水を使用。これは味にキレを出すため。また、具材は、各々に適した火入れを施し、注文の都度、ホールスパイスと共にカレーソースと合わせ、あまり煮込まず、ア・ラ・ミニッツで仕上げている。

 

それゆえか、いずれのカレーも 、香辛料の香りがフレッシュ。鼻孔を貫くスパイシーな香りが痛快だ。

まずは海老カレーを一口。軽やかな辛さの中、仄かな磯の香りがじんわりと口中に広がり、ビスクの深いコクが余韻豊かに味蕾を潤す。

 

対して、爽やかな辛さとヨーグルトの微かな酸味が後を引くのはチキンカレー。チリやクミン、コリアンダー、カルダモン等々扱う香辛料はインドカレーと大差ないが「アプローチの仕方はフランス式」と掛川シェフ。個人的には、チキンカレーの方がややインドのカレーに近い味わいに感じるのだが、いかがだろうか。

 

さて、カレーライスだけでは物足りず?なんとカレーパンまで作ってしまった掛川シェフ。こちらも自信作で、注文を受けてからパン生地をのばし、具を包んで揚げる丁寧さ。中身は、ライスと同じ海老やチキンなど。テイクアウトもできるが、やはり、ここは揚げたてにかぶりつきたい。

【カレーパン800円(テイクアウト380円)】

 

アツアツ、トロトロのソースが飛びだす感覚は、まさに小籠包。思わず、無言になる美味しさだ。

 

カレー、カレーパンいずれも14時からテイクアウトもできる。

 
写真:片桐 圭