味噌汁を世界へ!日本とアメリカを行き来するディレクターの思い
浅草に今年オープンした「MISOJYU」は、書道家の武田双雲さんが結成した「TEAM地球」プロデュースによる、味噌汁の専門店。日本の昔ながらの定番食・味噌汁をアレンジしたオリジナルメニューを提供し、人気を集めている。コンセプト作りから関わっているフードディレクター、エドワード・ヘイムズさんに話を聞いた。
浅草・雷門近くという好立地。イートインのほかおにぎりのテイクアウトもOK。
一階の席のほか、二階にはテーブル席も用意。ふらりと立ち寄れる気さくな雰囲気で、老若男女幅広い層が訪れる。
武田双雲さんによる書が飾られた店内。
「発酵食が今世界的なブームになっていますが、日本の発酵食といったら味噌。いろいろアレンジもしやすく、おいしくて体に優しい。日本の定番食である味噌汁を世界に広めたいと思いました」と語るのは、「TEAM地球」のフードディレクターであり、メニュー開発を手がけたエドワード・ヘイムズさんだ。
エドワード・ヘイムズさん。東京で生まれ、18歳で渡米。写真家や料理人として活躍するなど多彩な顔を持つ。
アメリカ人の父と日本人の母を持ち、18歳まで日本で暮らしたというエドワードさん。小さい頃から毎日お母様が作る味噌汁を食べて育ってきた。
「食卓には必ず母の手作りの味噌汁と自家製の奈良漬けがありました。一から取った出汁のおいしさは、僕が子供の頃に舌で覚えた味の記憶として残っています。添加物を使わずとも、発酵の旨みで十分おいしい。それをぜひ多くの人に知ってほしいですね」(エドワードさん)
セットメニューは味噌汁やおにぎりのチョイスが可能。お好みで組み合わせて。
おにぎりは常時6種類ほど。しおやしゃけなど定番具材も独自にアレンジされている。
日本人客はもちろん、海外からの観光客も視野に入れ、旅行客の多い浅草に店をオープン。味噌汁の概念を超えた独創的なメニューをそろえ、幅広い層へ広くアピールしている。
「例えば『豆乳とホタテのとろーり みそポタージュ』は、白みそに生クリームと練り胡麻を加えることで、クリーミーでポタージュのような仕上がりに。具材も大きめなので、スープ感覚で楽しめる。日本人にとっては新鮮で、海外からのゲストにとっては親しみやすい味になっているのでは」(エドワードさん)
味噌汁に使う野菜や調味料は有機素材を使用。一つ一つの素材を吟味し、おいしくて体にやさしい味わいを生み出している。
「有機の味噌をいろいろ試した結果、辿り着いたのが島根のやさかみそ。メニューに合わせて白味噌や辛味噌など数種をブレンドして使っています。出汁は日高昆布をメインに、削り節は築地の専門店に頼んだものを店で一から出汁を取っています」(エドワードさん)
MISOJYUスペシャルセット1,380円。
味噌汁とおにぎりはお好みでチョイス。写真のみそ汁は豆乳とホタテのとろーり みそポタージュ、おにぎりは塩。京都・和束町産のお茶の葉をまぶして風味をプラス。味付けたまご付き。大山どりのグリルやおひたしなど、サイドメニューは日替わりで登場する。
人気No.1のMISOJYUスペシャルセット「ごろごろ野菜と角煮のすんごいとん汁」1,380円。
一番人気の「ごろごろ野菜と角煮のすんごいとん汁」。大根、ごぼう、人参、こんにゃくなど、大ぶりの具材がごろごろと入る。赤ワインでじっくり煮込んだ角煮は口の中でほろりととろける柔らかさだ。
朝ごはんセット600円(8:30~11:00)みそ汁は日替わり。写真は大根とほうれんそうとあおさ。おにぎりはお好みでチョイス。写真はうめ。
左:スパイシーツナ。びんちょうまぐろをスリラチャソースで味付けした外人客に人気の一品。右:しゃけ。しゃけとのりでシンプルに。おにぎりに使う米は有機のこしひかり。さらにミルキークイーンを加えることで、冷めても硬くならないよう食感を調整している。おにぎり単品は一個220円。セットに追加の場合はプラス120円。
「現在は都内に二店舗目を計画中。その後は世界を目指したい」とエドワードさんは語る。出汁をしっかり取って進化を遂げた味噌汁に、ファンが増え続けている。
取材・文:小野寺悦子
撮影:森山祐子