定食王が今日も行く!Vol.63

銀座の路地裏で50年!何を食べても旨い昭和レトロな大衆食堂

銀座の袋小路を行けば

時を遡るタイムトンネル

 

東京に「三州屋」の看板を掲げる店は多い。1964年に創業した蒲田の総本山から、各地に広がっていったと言われている。10年以上前、銀座一丁目のお客さんの担当をしていたころ、よくお世話になっていたのが銀座店だ。店主の岡田さんは親戚が営んでいた神田店から独立し、1968年に開店したそうだ。

銀座の並木通りと晴海通りが交わるあたりに看板が見えると、袋小路が現れる。この短い距離を歩みながらお店にアプローチするだけで、タイムトンネルをくぐっているような感覚に陥る。

昔ながらのガラスの引き戸、暖簾というTHE 昭和の居酒屋、という雰囲気にも心高まる。

店内にずらっと並ぶ短冊形のメニューに、白木の卓は壮観。都庁が有楽町にあった頃は、都庁職員で溢れるお店だったそうだ。

築地から豊洲市場へ    

新鮮な海鮮を路地裏で

 

この店での初体験は海鮮丼だった。先日の豊洲市場への移転でお店自体も数日お休みをしていたことからわかるように、毎日新鮮な魚を市場から仕入れている。

海鮮丼以外にも、刺身定食や、天然ブリ、カツオ、アジ、イワシの叩きなどとれたて新鮮な魚を担当する定食が勢揃い。魚の定食は名物の鳥豆腐がついてくる。カツオのだしがガツンと効いたスープは、ぐいっと飲むとホッとする。香り高い春菊がアクセントで、時折無性に飲みたくなるほど中毒性の高い味だ。

昼食のランチ利用も良いが、酒に合う名品が勢揃いなので、銀座の夜にお手頃に一杯、なんて時にも使い勝手の良いお店だ。

春はアジ、秋は鮭、

冬は牡蠣フライのフライ天国

 

刺身や海鮮がうまくても、揚げ物はイマイチというお店はたくさんある。しかし、この店の真骨頂は、季節の味を堪能できるフライだ。とんかつ屋と同じラードを使っているので、油が軽いのが特徴だ。

冬限定の牡蠣フライはプリップリで大粒の牡蠣のジューシーさがサクサクの衣から溢れ出す。

マヨネーズで和えた付け合わせのサラダは黄桃入り。創業当時からのおなじみの味だ。

秋には鮭フライ。衣が軽く薄いのでジューシーな厚切り鮭をシンプルなソースで。

そしてビッグサイズの海老フライ。ご飯のお供にも、酒の魚にもぴったりの大ぶりな海老は、衣のサクサクと身のプリプリが最強のコントラストだ。

味噌汁はなめこ豆腐でとろみたっぷりの赤だし。これだけでご飯が進む一杯だ。

 

創業以来、昼から夜まで通し営業をしているため、ランチを食べ逃した時には必ず駆け込む切り札だ。夜の定食を一人で食べる女性の横で、夕方から飲み始めている常連客もいる。50年変わらない営業スタイルを続け、老若男女多様な客が訪れる懐の深い食堂だ。

 

銀座の裏路地の角を曲がると、昭和ファンタジーを体験できるタイムトンネルがある。ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。