定食王が今日も行く!Vol.62
優しさが染みる!代官山と渋谷の間にあるオアシス「ひまわり亭」
交番前にポツリと佇む食堂は
闇の中の一筋の光のよう
人通りも多くなく、ビジネス街でもなく、学生街でもない、閑静な住宅街のど真ん中にポツリと佇む食堂「ひまわり亭」。目印は鉢山町交番、知らなければ見逃してしまうかもしれない場所に、そっと存在する。
昔、書いていたブログを見返してみたら、このお店の初来訪の記録を発見。10年ほど前の8月21日のことだった。写真は当時のものだ。
中目黒で仕事を終えた後、渋谷方面へ歩いて向かう途中で「ひまわり亭」に巡り合った。20時ごろだっただろうか、ドアを開けると、オーナーさんが閉店作業をしていた様子。にもかかわらず、「いいわよ、まだご飯あるから食べていきなさいよ」と迎え入れてくれた。すでに疲労困憊していた自分には、まるで暗闇の中で一筋の光のように見えた。
卵形のコロッケは
体が求める優しさの塊
「ひまわり亭」の看板メニューは卵形をしたコロッケだ。具材はじゃがいも、挽き肉、玉ねぎ、にんじんと、とてもシンプルなもの。しかし素材や、調味料を厳選し、揚げ油には埼玉「米澤製油」の国産ブレンドなたね油100%を使っている。
店主の赤沼さんが、お母様から譲り受けたレシピをアレンジして作ったのが、この食べ飽きることのないコロッケだそう。他のコロッケと比べ、驚くほど軽い仕上がりで、ジャガイモやにんじんなど素材の味を、十分に堪能することができる、優しい味わいだ。
丁寧に手で切られたキャベツの千切りには、ほんの少しの紫キャベツがトッピング。シンプルな料理の中にも、こう言った細かい彩りや色の変化があることで、食べている側も感覚が研ぎ澄まされ、一つ一つの料理や食材、そして作ってくれる人に、感謝の気持ちを抱かずにはいられない。
NO MSG!天然のお出汁で
仕上げた自然派食堂
店内にも表示があるように、化学調味料は使用しておらず、すべて昆布・かつお・煮干し・しいたけなどを使った自然出し汁を使用している。
味噌汁は、頭とはらわたを取り除いた新潟産の煮干しを空煎りし出汁をとっているそうで、とても香り高い一杯だ。
名物のだし巻き玉子は甘すぎず、薄味すぎず。そこはかとなく優しい味だ。自家製のお漬物もほどよい漬かり具合で、ご飯と合う。
すべての料理に、我が子に料理を振る舞うような愛情がぎっしり詰まっている。シンプルだが、とっても栄養バランスが良く、手間がかかっている。愛情と思いやりこそが、最高の調味料であることを体現している。
いくつかこのお店との思い出を自分のSNSで遡ってみた。5年前に、この店を訪問した時にいただいた、りんごの兎だ。小学校時代の、母の温かさを思い出させるちょっとした遊び心が、何よりのご馳走だ。
温かく優しいコロッケは、胸もあたたまる。仕事でも私生活でも、人生の闇に遭遇した時には、ぜひ希望の光を灯した食堂を訪れてほしい。未来への活力が湧いてくるかもしれない。