今年7月、神保町の路地裏にオープンした「猫猫」。わずか5.5坪の古民家を改装した店にはアイデア満載の料理とこだわりの中国茶割りを目当てに人々が訪れます。ギューギューになるから楽しい立ち飲み文化。今宵も盛り上がっています!

神保町の路地裏に立ち飲み中華がオープン!

店名も覚えやすい!
店名も覚えやすい!

神保町グルメといえばカレー、純喫茶と、安くておいしい店が並びますが、意外にも立ち飲みは少ないのです。そこで立ち飲み好きの金子将来さんと長田 岳さんが神保町駅から白山通りを水道橋方面に進み、一本入った路地裏に「猫猫」をオープンしたのです。

左:金子将来さん、右:長田 岳さん
左:金子将来さん、右:長田 岳さん

金子さんは美容師から動画編集者という異色の料理人。地元の中華料理店から「手伝って!」と言われ、飲食の道に入りました。長田さんが働いていた店に客として通ううちに飲み友になり、ある日、2人で飲んでいた時に「立ち飲み屋を一緒にやろう! まずは立ち飲み屋巡りをSNSに投稿してバズったらその時に店を作ればうまくいくはず」とSNSのアカウントを作って立ち飲み屋巡りを始めました。ところがまったくバズらないうちに急遽金子さんの退職が決まり、慌てて物件を探すことに。

「フォロワーは400人くらいでした(笑)」
「フォロワーは400人くらいでした(笑)」

出会ったのが築80年越えのこちらの物件。資金も時間もないのでできることは自力で改装したとのことですが、残した古い天井と真新しい壁との組み合わせや、提灯を思わせる照明、使い込んだような木のテーブルの質感がとても心地よく、立ち飲みながら長居したくなる空間です。

店のあちこちにいる猫探しも楽しい!
店のあちこちにいる猫探しも楽しい!

なんと言っても店名のエピソードがおもしろい! 「僕は髭が長くて、当時は長田がロン毛で、2人の特徴が“毛”。だから2つ合わせた『毛毛』を中国語読みをしたらマオマオで。音が可愛くて気に入ったものの、『毛毛』は飲食店の名前にしてはいかがなものか?となり、同じ発音の単語を探したら『猫』が当てはまったので『猫猫』にしました」と、なかなか笑わせてくれます。

黒板以外の秘蔵の酒は長田さんにお尋ねあれ!
黒板以外の秘蔵の酒は長田さんにお尋ねあれ!

立ち飲み好きの2人が考えただけあって、ドリンクも“わかっていらっしゃる”なラインナップ。中国料理に合うと言う「カルシス」をはじめ、ビール、中国茶割り、サワー、日本酒、何を飲んでも一律660円というのも潔い!

馴染みの中華料理をひと工夫、これにハマる人が続出!

中国茶
中国茶

メニューは「冷菜」、「揚物」、「焼物」、「点心」、「締」に分かれていて、どれも1人飲みの胃袋にちょうどいいポーションです。価格も150円〜860円と財布にも優しい。まずは冷菜数品をつまみに中国茶割りでスタートします。

「よだれ鶏」(598円)
「よだれ鶏」(598円)

こちらの「よだれ鶏」、よく見る鶏肉が液体のタレに浸かっているスタイルではありません。「ドロッとさせたかったんです」と言うように、タレは芝麻醤、オイスターソース、醤油など10数種類ほどの調味料を混ぜた田楽味噌のようなテクスチャー。これを低温調理器でしっとりさせた鶏もも肉の上にかけています。タレはしっかりと辛みが利いてうまみもたっぷり。これは酒が進みます。

「パクチーの白和え」(528円)
「パクチーの白和え」(528円)

こちらは白和え。「パクチーが苦手でも食べられるように胡麻多めで甘めの味付けにしています。白和えも豆腐だけだと寂しいので搾菜と長ネギを入れています」と、パクチーらしさは残しつつ特有のクセを搾菜や胡麻が穏やかにして食べやすい!

「スパイシー人参ムーチョ」(440円)
「スパイシー人参ムーチョ」(440円)

湖池屋公式レシピ「カラムーチョにんじん」にクミンやガラムマサラ、花山椒を加えた「スパイシー人参ムーチョ」。花山椒がガツンと利いて、スパイシーさがアップ。これは手が止まりません!

「水餃子(2個)」(363円)
「水餃子(2個)」(363円)

ほぼ全員がオーダーするという「水餃子」。手作りの皮に使っているのは「武蔵野うどん」の小麦粉。厚みがあるのに粉っぽさはなくツルツルでモッチモチ。まさに“皮を食べる水餃子”です。

ずっしりと重い!
ずっしりと重い!

その皮に負けじと、餡は粗挽きにした豚肉に玉ねぎとニラと粗みじんにした生姜を混ぜています。味わいも肉汁も食べ応えも申し分なし! 味変には中国黒酢を。

おいしい、楽しい! 夜な夜な暖簾をくぐりたくなる!

「ラム麻婆豆腐」(726円)
「ラム麻婆豆腐」(726円)

麻婆豆腐にはラムの挽肉を使っています。人気メニューの麻婆豆腐なのにあえて苦手という人が多いラムを使うとは、なんとチャレンジャーなのだろう。そう思いながら口に運ぶと、その野生味はエキゾチックな味わいへと見事に反転!

豆腐はプルップル
豆腐はプルップル

訊けば、「かなりしっかりと火入れして臭みを取り、2種類の豆板醤を使い下味をつけて冷凍しています。これだけで挽肉に味が浸透するので、炒めて仕上げにクミンや花山椒で香りづけすれば羊肉特有の匂いは気にならない程度になります」と、羊肉の個性を魅力に変えた一皿となりました。これは“飲める麻婆豆腐”です。

「炒飯」(726円)
「炒飯」(726円)

炒飯も個性的。焦茶色の正体は中国のたまり醤油と黒麻油。米一粒一粒にコーティングされたたまり醤油のふくよかなコクと黒麻油の圧倒的な香ばしさがたまりません。濃厚に見えますが酒のつまみにもなるようにラードで作った葱油を使い、後味が軽やかになるよう考え抜かれています。「ラム麻婆豆腐」をかけるという裏技もお試しあれ!

メニュー全品制覇したい!
メニュー全品制覇したい!

料理のアイデアは「降ってくるんです」と言う金子さん。メニュー表には「極太クミンメンマ」(495円)、「エノキの山椒マリネ」(460円)など、思わずオーダーしたくなるネーミングの料理が並びます。ここには「何これ? でもおいしい!」が待っています。

この暖簾をくぐりたくなる!
この暖簾をくぐりたくなる!

この店の魅力は料理や酒だけではありません。何より金子さんと長田さんが醸し出す“ゆるい”空気感が心地いい! わずか5.5坪の店内は今宵もその心地よさに吸い寄せられた大人たちでいっぱいです。

教えてくれた人

高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

※価格は税込

文・高橋綾子 写真・溝口智彦