今注目の「隠れた美食エリア」

常磐線・常磐道でつながる茨城県と福島県。実はこのエリア、全国から食通が足を運ぶ名店がひしめく「隠れた美食エリア」であることをご存じだろうか。地元の生産者と二人三脚で食材を追求するシェフたち、霞ケ浦の淡水魚から常磐沖の天然魚、常陸牛まで、この土地でしか味わえない一皿がある。

今回紹介する7店は、すべて「The Tabelog Award」受賞店。実際に食べログを利用したユーザーの評価をもとに選出される、日本で唯一のアワードだ。週末を使って、東京からわざわざ訪れる価値のある一軒を巡る旅に出てみよう。

常磐エリアの魅力

【食材】
常磐沿岸地域では「常磐もの」や農水産物のブランド化が強力に推進される中、シェフたちが自ら畑や漁港に赴き、生産者や漁師との信頼関係のもと厳選した食材で魅力を表現している。

【交流】
シェフコミュニティ「CIT~Chefs for the Ibaraki Terroir~」の活動に象徴されるように、ジャンルを超えた料理人同士の技術共有や、地元の生産者との交流が活発に行われている。

【新拠点】
その土地の風土を伝える「ローカルガストロノミー」の新たな拠点として、自治体とも協働しながら常磐エリアの食の魅力を発信する取り組みは、地域全体の食文化のクオリティを押し上げ、全国のフーディーからも非常に注目されるエリアへと進化を遂げている。

Ohtsu(オオツ)── 茨城県水戸市

やっぱりモツが好き
伊勢海老   出典:やっぱりモツが好きさん

1991年創業、老舗でありながら常に進化を続けるモダンフレンチ。父の代から続く古典フレンチの技法と、息子世代が取り入れる現代的な感性が融合した一皿は、茨城県産の食材を惜しみなく使用する。とうもろこしのスープや那珂川の天然鮎、大洗のはまぐりなど、地元の恵みを丁寧に調理し、シンガポールや台湾からもわざわざ訪れる客がいるほどの評判を誇る。

pateknautilus40
内観   出典:pateknautilus40さん

◾️ここがポイント!

都会的な王道クラシック・フレンチからここ数年でのローカルガストロノミーへの深化は目を見張るものがある。シェフの大津高志氏とスーシェフである息子の高彬氏が自ら現場へ足を運び、生産者とコミュニケーションを重ねて選び抜いた地域食材。そこに伝統的で骨太な重厚感あふれるソースが見事に寄り添う。シェフの円熟した技術とスーシェフの若きセンスの融合が、深みと気品を兼ね備えた唯一無二の極上な味わいを生み出している。地元野菜、魚、ジビエへの巧みな火入れ、そしてマダムによるペアリングも秀逸で、「わざわざ遠方から訪れる価値がある」と絶賛される正統派ガストロノミーの名店。

―DATA―

The Tabelog Award 2026 Bronze受賞(7年連続)/食べログ フレンチ EAST百名店選出
水戸駅から徒歩10分。完全予約制。

よし町(よしちょう)── 茨城県土浦市

八寸
八寸   写真:お店から

創業約180年、江戸時代から続く魚商を前身に持つ8代目当主・木村英明氏が営む日本料理店。毎日250km以上車を走らせ生産者のもとへ通い、霞ケ浦の鯉や鰻、常磐沖の石鯛やあわびなど、土浦ならではの食材を仕入れる。「茨城テロワール」を体現するコースは、収穫直前まで表情を変える野菜と真摯に向き合う職人技の結晶だ。

内観
内観   写真:お店から

◾️ここがポイント!

「茨城テロワール」の追求。今やシグネチャーとも言える霞ケ浦の「鯉のあらい」、天然鰻やスッポンをはじめ、茨城県の新たなブランド「常陸国天然まがも」や旬の地野菜など、茨城が誇る素材の素晴らしさを極限まで引き出すために日々茨城県内を奔走し、試作に試作を重ねて生み出された繊細な料理の数々。そして自らをより高みに導くために全国の名店を回り、常に自身の研鑽を続ける日々。そんな木村氏の料理への真摯な思いと溢れ出る情熱は、素材本来の野趣と洗練が見事に調和した「この土地でしか味わえない極上の美食体験」を生み出し、数多くのフーディーを魅了してやまない。

―DATA―

The Tabelog Award 2026 Bronze受賞(2年連続)/食べログ 日本料理 EAST百名店選出
土浦駅から徒歩12分。完全予約制。

Nonna Nietta(ノンナ ニェッタ)── 茨城県つくば市

常陸牛
常陸牛   写真:お店から

イタリアで6年間修業を積んだ川村憲二シェフが営む、つくばの閑静な住宅街にひっそり佇む一軒家イタリアン。プロシュートやチーズまで自家製にこだわり、茨城の畑と海の恵みを、伝統的なイタリア郷土料理の哲学で表現する。店名は、シェフ奥様の祖母の名前に由来。8席のみの隠れ家で、常陸牛や那珂湊直送の魚介を使ったコースが楽しめる。

内観
内観   写真:お店から

◾️ここがポイント!

つくば市の住宅街にポツンと佇む一軒家。今やそこを目指し全国からフーディーが集まる。イタリアから取り寄せた調度品が醸し出す雰囲気とともに、本場の伝統技術とイタリア郷土料理の本質を追求し、無駄をそぎ落としたシンプルな料理は記憶に残る食体験となる。店内で手打ちされたパスタ、茨城県産の銘柄豚を使用し丁寧に仕込まれた自家製の生ハム、そして多彩なチーズはいずれも自家製。さらに力強い香りを纏わせる薪焼きや豊かな味わいのジビエなど、素材本来の旨みを極限まで引き出す仕事は圧巻。川村シェフの確かな技術が生み出す一皿は、全国のフーディーを唸らせている。

―DATA―

The Tabelog Award 2026 Bronze受賞/食べログ イタリアン EAST百名店選出
つくば駅からバス利用。完全予約制。

YOSHIKI FUJI(ヨシキ フジ)── 茨城県常陸大宮市

写真:お店から

「風土」を体現するフレンチ・バスク料理店。食材・水・薪炭のすべてを半径60km圏内から調達するというこだわりの徹底ぶりで知られる。国産鳩や常陸牛、地物の野菜を薪火で丁寧に焼き上げ、素材の力強さをそのまま皿の上に閉じ込める。水戸駅から車で約40分、決して交通至便とは言えない立地にもかかわらず、わざわざ訪れる価値のある「デスティネーション・レストラン」だ。

内観
内観   写真:お店から

◾️ここがポイント!

本場バスクでの研鑽が生んだ「革新的なイノベーティブ・フレンチ」。最大の特徴はモダンスパニッシュやバスクの美意識と、フレンチの古典技法が見事に融合したコース構成にある。骨太なソースの深みと独創的なセンスを両立する藤シェフの類まれな感性と技術により、地元・茨城の厳選食材が洗練された一皿へと昇華している。現在は「茨城県北限料理」をテーマに、茨城県北地域の郷土料理、地域性、風景などを盛り込んだ料理に挑む。目の前に広がる自家製の畑からその場で摘んだ野菜をいただく食体験、美しいプレゼンテーションやペアリングの完成度も秀逸で、数多くのフーディーから注目されている。

―DATA―

The Tabelog Award 2026 Bronze受賞/食べログ フレンチ EAST百名店選出
常陸大宮駅から徒歩18分、車5分。完全予約制。

La Stalla(ラ・スタッラ)── つくば市

パスタ
パスタ   写真:お店から

北海道・稚内出身の佐藤誠之シェフが、46歳でイタリア・ピエモンテへ渡り、牧場を営むレストランで畜産や熟成肉の技術を学んだ末にオープンした一軒。北海道の羊肉やジビエ、つくばのオーガニック野菜など、生産者とのつながりを大切にした食材選びが光る。全て手打ちのパスタ「タヤリン」に、ズッキーニやトマトなど旬の食材を合わせた一皿は必食。

内観
内観   写真:お店から

◾️ここがポイント!

「料理は人を表す」。その言葉を最も体現しているシェフの一人が佐藤シェフであることは間違いない。カウンター越しに繰り広げられるメニューのない完全おまかせコースは、さながらライブを鑑賞しているかのよう。40代後半でメガバンクの法律職を辞し、そこからイタリア各地で研鑽を積んだシェフが出身地である北海道と茨城の豊かな素材と真摯に向き合い、そのポテンシャルを極限まで引き出した料理の数々。手打ちパスタや絶妙な火入れの肉料理、そこに何気なく寄り添うワインの提案も秀逸。「食材への敬意」が宿る佐藤シェフの人柄に魅了され、気づけば常連となっているフーディーも多い。

―DATA―

The Tabelog Award 2026 Bronze受賞(3年連続)/食べログ イタリアン EAST百名店選出
つくば駅からバスで15分。完全予約制。

HAGI(ハギ)── 福島県いわき市

魚料理
魚料理   写真:お店から

福島県いわき市出身の萩春朋シェフが営む野菜料理のレストラン。2013年にはパリの料理フェアに参加しフランス大統領やモナコ公にも料理を振る舞った実力派だ。漁港まで車で15分、畑まで10分という立地を活かし、「鮮度」を何より重視する。朝どれのいわしを競りで自ら買い付け、薪火でじっくりと火を入れる。木々の香りが「ソースのような役割を果たす」というシェフの哲学が息づく一皿は、福島の食材の底力を教えてくれる。

内観
内観   写真:お店から

◾️ここがポイント!

先日上梓された『いのちが出会う皿―福島の土と人とともに、生きる―』。萩シェフ本人が作中に書いているように、自らが畑へ足を運び、生産者と深く交流しながら土地の生命力を紡ぐようレストランで提供する姿は、まさに究極のファーム・トゥ・テーブル。朝どれの野菜をはじめ、地元の厳選食材がシェフの確かな感性と技術、そして情熱によって昇華し、素材本来の力強い旨みとみずみずしさがそのまま表現された一皿へと結実している。徹底的に試作を重ねた上で無駄を削ぎ落とし、素材の持つ素晴らしさを極限まで引き出したシンプルな料理は、まさにここでしか味わえない至高の逸品。

―DATA―

The Tabelog Award 2026 Silver受賞(2023年Bronzeから昇格、6年連続受賞)/食べログ フレンチ EAST百名店選出
いわき駅から車で15分。完全予約制。

鮨 いとう(すし いとう)── 福島県いわき市

赤貝
赤貝   写真:お店から

常磐沖の新鮮なメヒカリを筆頭に、地元漁港直送の魚介と全国各地の旬魚を握る、いわきを代表する寿司店。カウンター7席のみの隠れ家的な空間で、店主の軽妙な会話を楽しみながら、コハダやシャコ、ボタンエビなど、東北随一と評される握りの数々に舌鼓を打てる。予約が絶えない、全国区の実力店だ。

内観
内観   写真:お店から

◾️ここがポイント!

常磐沖の地物にこだわる「常磐前」寿司でありながら、今治の藤本氏や長井漁港の長谷川氏など、名だたるカリスマ漁師との関係性を活かした見事な仕入れを誇る。最大の特徴は妥協を許さない丁寧な仕込みと、それに応じた熟練の握りの技。地元いわきが誇る極上の「常磐もの」をはじめ、全国から厳選された旬の魚介に、長年の経験に裏打ちされた緻密な仕事が施され、絶妙な塩梅のシャリと完璧な一体感を生み出している。つまみから握りへと続く至高の流れや、静謐で洗練された空間、温かなもてなしも秀逸。「遠方からでも足を運ぶ価値がある」と、フーディーを虜にし続ける名店。

―DATA―

The Tabelog Award 2026 Bronze受賞(5年連続)/食べログ 寿司 EAST百名店選出
いわき駅から徒歩10分。完全予約制。

週末は美食旅へ!

茨城県水戸・土浦・つくば・常陸大宮、そして福島県いわきと、常磐線・常磐道でつながるエリアに点在するこの7店。いずれも生産者との深いつながりを持ち、「その土地でしか味わえない一皿」を追求する姿勢が共通している。1店舗だけなら日帰りでも十分楽しめるが、2〜3店を巡るなら1泊の小旅行がおすすめだ。すべて完全予約制のため、早めの予約を忘れずに。この週末、東京を飛び出して、常磐エリアの美食旅へ出かけてみては。

文:食べログマガジン編集部
※記事制作に一部AIを使用しています。