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選考対象は東京23区&政令指定都市を除いたレストラン!「Destination Restaurants」2023年の顔ぶれは?
世界中の人々のために「日本人発のレストランリストを作りたい」という思いから、2021年にスタートした「Destination Restaurants」。あえて東京23区や政令指定都市を選考対象から外して、旅行の目的地にふさわしいクオリティのレストランを毎年10軒、ジャンルを問わず厳選してリストにするセレクションだ。その背景には、126年の歴史を誇る英字新聞『The Japan Times』の創刊から受け継がれたDNAがあると姉妹誌『Sustainable Japan Magazine』の編集長、白井良邦氏は話す。
「創刊当時は明治時代。日本は欧米列強から不平等条約を押し付けられ、関税を決めることすらできませんでした。それを何とか打開したいという思いから当時の政財界の人たちが一丸となって、日本の状況を日本人の視点で海外に英語で伝えようと考えて創刊されたのがジャパン・タイムズなのです」
日本人の視点で、日本の実情を海外に向けて発信する。「Destination Restaurants」は星や点数をつける訳でも、ランキングにする訳でもなく、これまでとは違う角度から日本の食文化を伝えることを目的としたセレクションなのだ。
今年を象徴するのは、東日本大震災を乗り越えてきたレストラン「HAGI」(福島)
授賞式で特に印象に残ったのは、福島県いわき市にある「HAGI」のオーナーシェフ、萩春朋氏によるスピーチ。2023年に選ばれた10軒の中でも、特に象徴的なレストランに贈られる「The Destination Restaurant of the year 2023」の受賞者である。
「福島県は海も山もあり箱庭のような街です。皆様もご存じのように、2011年には震災に遭い、放射線問題で非常に苦しみました。農家の皆さんの目の前にあった食材が、この土地で何代も続けてきたものが、一瞬にして消え去りました。このまま農業を続けてよいのか、この土地で料理を続けてよいのか、悩みながら、これまでやってきました。あれから農家の方々は50年分の仕事を10年でやりました。今、目の前にはおいしい食材がたくさんあるんです。私はそれを用意しております。田舎の小さな店なので、できることは限られますが。素晴らしい食材が、福島には今、あふれています」
東日本大震災を乗り越えてきた萩氏が振る舞うのは、地元産の野菜、魚、肉などを使ったフレンチベースの料理。漁港まで15分、畑まで10分。最高の鮮度から生み出される福島ならではの味が、今では復興の象徴となっている。