〈食べログ3.5以下のうまい店〉

グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回はトルティーヤ研究家の吉川さんが教えてくれた、ご近所さんに愛される気軽な雰囲気ながら、本場メキシコ屋台の味を忠実に再現していると話題のタコス店を紹介。

子どももシニアも足を運ぶ地域住民の憩いの一軒

自由に選べてかけ放題の手作りサルサが人気の秘密

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

白い壁に映える赤のロゴが目印。ロゴのデザインは店主自ら手掛けたそう

西武池袋線富士見台駅から徒歩約3分。地元の人で賑わう駅前の商店街から1本入った路地に佇む「タコス・デル・バリオ」は、夫婦で営むメキシカンタコスの店。元はショットバーとして営業し、月1度メキシカンタコスイベントを開催していたが、今年3月にリニューアルオープン。現在の業態になってからまだ半年も経っていないにもかかわらず、本場の味わいが評判に。子どもからシニア層まで幅広い層の地元住民が足を運んでおり、食べログの点数は2026年8月時点で3.15。

 

吉川さん

タコス好きの友人から紹介してもらいました。サルサや具材が本当においしくてビックリ!

カウンター6席、テーブル席が2名用2卓、4名用2卓の全18席

店内は赤と白をベースに、メキシコタイル柄の壁紙やカラフルなパペルピカド(メキシコの伝統的な切り絵細工のガーランド)、ルチャドール(覆面が象徴的なメキシコのプロレスラー)のフィギュアなど、メキシカンテイストを盛り込んだ明るくPOPな空間。誰でも気軽に立ち寄り自由に楽しめるよう、あえて屋台風の雑多な雰囲気を意識したという。

 

吉川さん

とにかく夫婦お二人の雰囲気が最高です。優しく、客への細かな気遣いが感じられます。また、富士見台という場所柄、地域の客の憩いの場感がありアットホームな雰囲気もとてもいいです。

店主はメキシコ帰りの元ボクサー

「子どもたちがおいしいと言ってくれるのがすごくうれしいですね」と店主の大槻克磨さん

「僕らが子どもの頃に初めてハンバーガーを食べた時のような感動って、ものや情報が溢れている今の時代、なかなか触れる機会がないですよね。今、誰もが手に取れる食べ物でそれを提供できるのが、メキシカンタコスなのかなと思うんです」と語るのは、店主の大槻克磨さん。
プロボクサーを生業としていた20歳前後の頃に訪れたメキシコで、屋台のタコスのおいしさに衝撃を受けたのが25年以上前。

ボクシング引退後は食の道に進み、イタリアンレストランの経営などを経て、2021年に現在の場所でショットバーをオープン。「メキシコで出会ったあの味をみんなに食べさせたい」と月に1度イベントでメキシカンタコスを振る舞っていたが、完成度には満足できていなかったそう。
そんな時、知人からメキシコのハーブ類や缶詰を入手できるようになったことで、味わいが一気にアップ。納得いくものが作れるようになったことを機に、2026年3月に同店のオープンに至った。

トルティーヤは直径9cm、大きめの餃子の皮ほどのサイズ。店内でマサ(トウモロコシ粉)から一枚一枚仕込んでいる。たっぷりのラードをかけて焼くのも本場メキシコの屋台流

チレ(唐辛子)やハーブ類など、多くの素材をメキシコから仕入れ、タコスに欠かせないサルサはすべて手作り。「サルサ・ベルデ」(食用ほおずき「トマティーヨ」を使用したさっぱりした酸味の定番サルサ)、「サルサ・ロハ」(焦げ目が付くほどしっかり焼いてうまみを凝縮させたトマトと玉ねぎ、ハラペーニョの代わりにピーマンと、ライムなどを使用した辛みのない定番サルサ)、「サルサ・チポトレ」(燻製したハラペーニョをベースにトマトや玉ねぎを合わせたスモーキーでピリ辛風味のサルサ)、「サルサ・ハバネロ」(ハバネロを使用して本場の辛さを再現しつつも、温度を抑えて抽出することで甘みやうまみも感じるうま辛サルサ)、「サルサ・マチャ」(2種の唐辛子とナッツ、ハーブやニンニクを合わせたメキシコの食べるラー油。やや刺激強め)の5種のラインアップ。セルフで自由にかけられるよう、カウンターの一角にセッティングしてあり、本場メキシコスタイルを取り入れている。
「サルサは一口食べてまた別のものにしてもいいですし、何度かけてもOKです。選ぶ楽しみをぜひ味わってほしいですね」(大槻さん)

おすすめのタコスや辛さレベルも書いてあるので、参考にしつつ自分好みの組み合わせを探せる。数種のサルサを組み合わせるのもアリ
 

吉川さん

どの料理も本場のような力強いおいしさがありながらも日本的な優しさも感じられる味です。サルサを自分で自由にかけられるのもうれしいポイント。

まずは王道! ホロホロ肉がたまらない「スアデロ」

「スアデロ」2ピース780円。牛肉の上にのっているのはセボージャ(玉ねぎ)とシラントロ(パクチー)。すべてのメニューに添えられる、酸味が強く渋みが少ないメキシコ産の小ぶりなライム「リモン」も、実はおいしさの“キモ”だとか

牛バラ肉を3〜4時間かけてコンフィした「スアデロ」は、メキシカンタコスの代表格であり、同店でもトップ人気の一品。ホロホロの食感と、一口目からガツンとくる肉のうまみたっぷりな味わいで幅広い世代に支持されている。

煮込んだ塊肉を細かく叩くことで、より肉のうまみが強く感じられるという
サルサ・ロハは、唐辛子を使用しておらず辛みゼロなのでお子様にもOK
 

吉川さん

メキシコのタコスの中でも王道を行くタコスですが、こちらのスアデロもホロホロに軟らかく煮込まれていて、自家製サルサのどれをかけてもおいしいです。サルサを4種類くらい使って味変しながら食べるのがおすすめです!