【噂の新店】「晦庵 河道屋」

100年近く続くそばの味

江戸時代中期創業で「蕎麦ほうる」で知られる「総本家河道屋」をルーツに持つそば屋「晦庵河道屋」が、2025年10月、麩屋町通から姉小路通に移転オープン。新店舗は以前に店主の家族が暮らしていた母屋を、“空間の継承”をコンセプトとし改装。前の店の土壁を再利用したり、玄関に中庭の石を使用したり、巧みに以前の店の雰囲気を残している。

最寄りの駅は「京都市役所前駅」で、店は「俵屋」「柊家」など老舗旅館が立ち並ぶエリアにある
店内は懐かしさとモダンな雰囲気を兼ね備えている
奥にある庭も前の店で馴染みのあった庭と同様

店主はそば屋としては4代目になる植田徹さん。大学在学中に祖父が亡くなり、店を継ぐことを決意したという。大学卒業後、東京の「かんだやぶそば」で2年経験を積んだ後、京都に戻り、本店や支店にて仕事を覚えたとのこと。移転に際しては、“暖簾を守る”ことを優先し、メニューを絞り調理を一人で担当することに決めたという。

店主の植田徹さん。「昭和7年からそば屋は営業していますが、私の代では、来てくださるお客様にしっかりと守られてきたうちの味を提供したいです」と話す
 

門上さん

長年続いた老舗が老朽化のため、移転建て替えをしました。新たなオープン時に訪れ、再訪以前の佇まいとは少々変わりましたが、味わいは変わらずだと感じました。

いただけるお料理はこちら!

そばのメニューは、定番で冷・温合わせて7種、酒の肴にもなるつきだしは、にしんやしんじょなど4種揃う。そばは北海道産のそば粉を使い、七三でやや太め。かけだしは利尻昆布や薄削りの鰹節を使用して割烹のようなひき方をし、上品な味わいに仕上げている。移転前と変わらぬ味を続けるため、移転後も井戸を掘り直し、地下水を使用しているそう。メニューの中から、門上さんのおすすめを紹介していく。

まずは温かいおそばで一番人気の鴨なんば。鴨はもも肉を使用。肉片は細かいが、だしが出やすいとのこと。たっぷりの九条ネギの食感も楽しい。山椒をかけていただく。

「鴨なんばそば」1,600円
 

門上さん

鴨とネギの味わいが溶け込み、奥行きが出ます。

次は冷たい天ざるそば。そばは香り高くしなやか。そばを受け止めるつゆはだしの香りがありつつもしっかりした味わい。大ぶりの海老の天ぷらは食べ応え充分だ。門上さんのイチオシ。

「天ざるそば」2,100円
 

門上さん

ざるで、そばの実力がわかります。まず、ざるでこの店のスタンダードを知り、天ぷらを食べて味の膨らみを楽しむのがおすすめ。

最後は看板の鍋「芳香炉(ほうこうろ)」。植田さんの曽祖父が考案した。中国の火鍋「火鍋子(ホーコーズ)」をもとに名付けたそう。「外食の少ない時代に珍しいとありがたがっていただけたそうです」。具材は、湯葉、しんじょ、ひろうす、椎茸、菊菜、ネギなど。だしはかけそばのだしを使用している。

「芳香炉」(2日前までの要予約)9,800円(2人前)
野菜がたっぷりいただけると人気の鍋。通年味わえる。すだちを搾っていただく。〆にはそばとうどんを
 

門上さん

麺類の新たな鍋料理を満喫できます!

変わらぬ味を守る、著名人も愛した名店

過去にはデヴィッド・ボウイやスティーブ・ジョブズ、黒澤明など内外の著名人も数多く訪れたという。「常連の方も多く、50年以上通ってくださる方もいらっしゃいます」と植田さん。「老若男女、国内外問わず、これからもいろんな方に来ていただいて、変わらない味で楽しいひとときを過ごしてほしいですね」

京都の町屋らしい風情ある一軒。移転後待合ができ、より快適に
 

門上さん

奥に中庭が見え、京都の町屋らしい空気感が漂う空間で、真っ当なそば屋の味わいを楽しんでほしいです。

教えてくれた人

門上武司
1952年大阪生まれ。関西中のフランス料理店を片っ端から食べ歩くももの足らず、毎年のようにフランスを旅する。39歳で独立し「株式会社ジオード」設立後はフードコラムニストというポジションにとどまらず、編集者、プロデューサー、コーディネーターとマルチに活躍。関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問であり、全日本・食学会副理事長、関西食文化研究会コアメンバー。著書には「食べる仕事 門上武司」「門上武司の僕を呼ぶ料理店」(クリエテ関西)、「京料理、おあがりやす」(廣済堂出版)、「スローフードな宿1・2」(木楽舎)、など。年間外食は1,000食に及ぶ。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

※価格は税込。

文:木佐貫久代
撮影:福森公博