いただけるお料理はこちら!

いただけるお料理は、夜16,500円(14~16品)、ランチコース7,700円(9品、土・日・祝のみ)のおまかせ。おまかせコースの中から門上さんのおすすめを紹介していく。

季節ごとの具材を味わえる、蒸しスープ。撮影時は、自家製の乾燥つぶ貝、干し貝柱、乾燥山芋、鶏の手羽先、なつめ、クコの実、夏草花を使用。しみじみと心に染み入る滋味深い味わい。

蒸しスープ。古藤さんが収集した一客ごと異なる茶器で供される
 

門上さん

クリアにしてうまみの塊です!

「小籠包は、皮は薄すぎずもちっと感があり、程よい量のスープがある」ものが理想と古藤さん。撮影時は上海蟹をあんに練りこんでいる。

一つずつ丁寧に包まれる。「中国料理は焼いたり炒めたりとダイナミックに思われがちですが、点心などでは手先の器用さも重要なんですよ」
カウンター前の蒸籠で蒸されていく
熱々を味わいたい、小籠包
 

門上さん

包みたての皮のしなやかなことに驚かされます。

そして門上さんイチオシのローストダック。一羽ごと客の目の前で焼き上げていくパフォーマンスも必見だ。

開いたダックに切り込みを入れ、塩、砂糖、五香粉を練りこんで1日置く。翌朝、身側には味噌を練りこみ、皮側に水あめと酢を塗り、扇風機の風を当てて、開店時間まで乾かす。その後、客の前で、オーブンへ。焼き上がりしばらく寝かせたあと、さらに中華鍋でダイナミックに油をかけながら、皮目をぱりっと香ばしく仕上げていく。

「吊るす炉を使わず、独自の方法で焼き上げています」と古藤さん
オーブンで焼いた後のローストダックに油をかけ加熱。つややかに色よくなっていく
部位ごとに切り分ける
完成した大皿盛りのローストダック。1羽で12名分まで供せるそう
骨付きのもも肉は梅ジャムで、骨なしのロースは味噌と一緒にクレープで巻いてと、2種の食べ方で味わえるのも楽しい
 

門上さん

そのままでもうまい。ジャムをつけてなおうまい。大胆に齧りましょう。

コースの〆で喜ばれる、麻婆豆腐と炒飯。大皿を取り分けるスタイルだ。

炒飯は麻婆に合うように、水分、塩分、油分を控えている。「パラパラを超えたさらさらに。米はジャスミンライスを使用し、卵でコーティングしながら焼き上げ、さらに追い卵をしてコーティングしながら焼き上げています」。具材は塩味をもたらすザーサイと、香りと食感をもたらすセロリのみで「炒飯だけで食べてもおいしいアンダーラインぎりぎりをイメージしています」とのこと。

一方、麻婆豆腐は辛みや塩味で味の誤魔化しをしない、豆腐は崩さないことがポリシー。ミンチは黒毛和牛と黒豚を使っているが、さらにとろとろに煮込んだ和牛のアキレス腱もプラス。肉と豆腐との間の食感を加えることで両者をつなげる役割を持つと話す。また、麻婆豆腐の辣油にはセロリの葉を用い、炒飯とのリンクを図っている。

追い卵をしながら焼き上げていく
炒飯は想像以上に、さらさらな仕上がり
適度な辛さがありつつも奥行きのある味わいの麻婆豆腐
麻婆豆腐と炒飯。「相乗効果で両方を交互に口に運べば、どんどん食べられますよ!」
 

門上さん

麻婆用の炒飯が見事です。

ここにしかない料理を追求

「店舗を増やしたいという気持ちや店を大きくしたいという希望はありません。ただ、がむしゃらにクオリティーを追求したいんです」と古藤さん。それは芸術的な完成度ではなく、また来たいと思っていただいたお客様の期待に応えられるようなクオリティーとのこと。「ここにしかない料理、また来たいと思っていただける料理をずっと考え、作り続けていきますよ」

店には茶器が飾られている。30年熟成までグラスで楽しめる紹興酒や日本人醸造家を中心としたワインなど酒類も豊富に揃い、中国茶もポットで楽しめる
 

門上さん

とにかくライブ感が楽しい。そこには技術に裏打ちされた確かな味があります。出来立てのローストダックの凝縮されたうまみをぜひ味わっていただきたいです!

教えてくれた人

門上武司
1952年大阪生まれ。関西中のフランス料理店を片っ端から食べ歩くももの足らず、毎年のようにフランスを旅する。39歳で独立し「株式会社ジオード」設立後はフードコラムニストというポジションにとどまらず、編集者、プロデューサー、コーディネーターとマルチに活躍。関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問であり、全日本・食学会副理事長、関西食文化研究会コアメンバー。著書には「食べる仕事 門上武司」「門上武司の僕を呼ぶ料理店」(クリエテ関西)、「京料理、おあがりやす」(廣済堂出版)、「スローフードな宿1・2」(木楽舎)、など。年間外食は1,000食に及ぶ。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

※価格は税込。

文:木佐貫久代
撮影:東谷幸一