実力派シェフによるイタリアンが、北参道と白金台に独立オープン

北参道に期待のイタリアン

7月24日、北参道にはイタリアン「IL MIO LUOGO(イル・ミオ・ルオーゴ)」がオープンしました。シェフの吉川朴さんはイタリアに約10年。ピエモンテやヴェネチアで修業後、パドヴァの三つ星店でメイン料理を担当後に帰国し、芝浦の人気店「リストランテ・ラ・チャウ」で9カ月ほどシェフを務めた後に独立しました。

コースもありますが、シェフとのやりとりで作り上げる「おまかせパスタ」などもあるので、ぜひアラカルトで本場の味を楽しんでください。ワインはボトル5,600円からとリーズナブル。ひとりでふらっとグラスとパスタも、複数でガッツリもOKです。

エビを詰めた花ズッキーニのフリット アグロドルチェソース

アンティパストからおいしすぎる

同じく7月24日、 白金台にオープンした「enoteca Rocco(エノテカロッコ)」は自由が丘「モンド」出身で、「あんちゅう」を経て代々木上原で「Rocco」のシェフだった中澤泰徳さんの独立店です。元はワインバーだったという10坪ほどの店内はカウンター2席とテーブル6席という、アットホームな造り。

まずは5種1,800円の野菜の小皿とお酒を楽しみながら、ゆっくりアラカルトのメニューを選ぶスタイルです。1皿ずつ提供される「三尺ささげと玉ネギのストゥファート」や「キュウリ ミント クスクス サルサヴェルデ」などのアンティパストがおいしすぎて、前菜の前に飲み過ぎてしまうほどでした。料理もいかにもイタリアンなものから、アレンジメニューの「地鶏のからあげ シチリア風」まで魅力的。時間を気にせず食事を楽しみたいときにぴったりのお店でしょう。

穴子と夏野菜のフリット カラスミがけ

名店の跡地に誕生した中華と吉祥寺で復活した老舗とんかつ店

名物のオムチャーハンに夢中

松陰神社前の名店「五指山」の閉店は、地元民のみならず、多くの中華ラバーを悲しませました。しかし7月18日、その場所に居抜きでオープンした「中華立波」は早くも多くのファンを掴んでいます。店主の立波右恭さんは「菱田屋」「キッチンマカベ」を経て、荻窪の人気町中華「中華屋 啓ちゃん」に。お店の定休日には「中華立波」として間借り営業をして、腕を磨いてきました。

荻窪譲りの「焼豚チャーハン オムトッピング」をいただきましたが、すごいボリュームとしっかりした味付け。時々、ふわトロの卵や紅ショウガを混ぜて、夢中で食べてしまいました。夜は一品料理も充実とのことですし、これからが楽しみです。行列ができていても、1人客を2人掛けのテーブルで相席させないところや、さすが元球児と言いたくなる、心のこもったお辞儀ぶりも好感が持てました。

焼豚チャーハン オムトッピング

あのかつ丼定食を吉祥寺で

7月1日、吉祥寺にはとんかつ専門店「とん㐂」がオープンしました。もともとは銀座で会社員から著名人まで、多くの人々を魅了した老舗で、昨年12月に建物の老朽化のために47年の歴史に幕を閉じていました。新たなとん㐂は、先代の娘さんが引き継いだとのこと。

清潔な店内でいただいたのは、もちろん名物の「かつ丼定食」。カウンターで職人さんの流れるような調理を眺めていたら、すぐに提供されました。きざみ海苔ののったかつ丼は、ご飯と一体感があって、これぞ丼の醍醐味。濃厚な豚汁と漬物で充足感も加速します。

かつ丼定食

食感を追求した創作うどんと島根名物の割子そば

モチッとうどん、その名も「餅麺」

7月31日、 渋谷にうどん店「餅麺」がオープンしました。店名は「モチッ」「つるり」という食感の麺を目指したゆえです。名物と書かれた「釜玉明太カルピスバターうどん」1,180円をオーダー。明太子とカルピスバターを和えながら食べ、さらに卵黄を投入し、時々出汁に漬けてみたり。どのバージョンも麺がしっかり受け止めてくれて楽しめます。そして必ずサービスの「一口追い飯」はいただきましょう。丼に残った明太、バター、卵黄が混ざった出汁にご飯を投入すると、抜群のうまさです。

それにしても気づけば、渋谷駅から並木橋に至る明治通りは「餅麺」「香川一福ART」「山下本気うどん」が並ぶ創作系うどんストリートに。

釜玉明太カルピスバターうどん

出雲のそばを楽しむ

6月30日、 市ケ谷と麹町の間、かつて日本テレビ本社があったエリアにオープンしたのは「十割そば 塩名人 市ヶ谷店」です。

本店は島根県出雲市にあって、出雲といえば「割子そば」。3段に重ねられた丸い朱色の器に入ったおそばの一段目にまず、つゆをかけていただきます。次に残ったつゆを2段目に入れ、つゆを足し……。それぞれの器に異なる薬味を入れることで、通常の3倍楽しめるわけです。十割そばは北海道産をメインに2種をブレンド。コシのあるそばと甘みも感じるつゆのバランスがよく、いくらでも食べられそうです。おすすめはもちろん都内では珍しい「3色割子そば」と「割子そば」ですが、注文後に揚げる天ぷらのメニューも充実。アルコールもあるので、サクッとのつもりでも、つい長居してしまいます。

割子そば

新宿にはサーモン、渋谷ではわさび特化の居酒屋が

鮭好きにはたまらない店

最近、特化型のお店が人気を得ていますが今月も外食グループの面白いお店が登場です。

まずは8月4日、株式会社ダイヤモンドダイニングが新宿三丁目にオープンした「酒としゃけ SALMON'S」。店内には教科書でもおなじみ、高橋由一の明治初期の名画「鮭」のレプリカが飾ってあり、やる気を感じます。鮭は有名な「王子サーモン」「富士山サーモン」など4種あり、その部位を昆布締めやしょうゆ漬けにした「サーモンのお造り7種」や「焼銀鮭3種盛り合せ」といったメニューは、鮭好きにはたまらないでしょう。

焼銀鮭3種盛り合せ
焼銀鮭3種盛り合せ   写真:お店から

わさびを贅沢にいただく店

こちらも8月4日、渋谷には株式会社渋谷の歩き方が運営する「食堂はなわさび」がオープンです。

「名物 わさび飯」と「伴助の特大さば」をオーダーしたところ、生のわさび半本とおろし器が付いてきました。これを自分ですりおろすという仕組みです。わさび飯はかつお節がかかったご飯に、たっぷりわさびを入れて醤油をかけていただくのですが、おろしたてはやはり香りが抜群。形が不揃いだったりで、市場に出せないものを農家から直接仕入れているとのことで、高価な生わさびを贅沢に使えるのはうれしい限りです。ランチでは海鮮丼や生マグロ丼を提供しています。

名物 わさび飯

教えてくれた人

大木淳夫
『東京最高のレストラン』編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本『東京最高のレストラン』編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に『キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由』(堀江貴文)、『新時代の江戸前鮨がわかる本』(早川光)、『にっぽん氷の図鑑』(原田泉)、『東京とんかつ会議』(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、『一食入魂』(小山薫堂)、『いまどき真っ当な料理店』(田中康夫)など。 好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事、「料理レシピ本大賞」特別審査員も務める。最新刊『東京最高のレストラン2026』が12月に発売。10月に初の著書『50歳からの美食入門』(中央公論新社・中公新書ラクレ)を出版。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

※価格は税込です

文・撮影/大木淳夫