出世ごはん
デキるビジネスパーソンはこんなお店で食べている! 元銀座のホステス&開運アドバイザーの藤島佑雪が、かつての同伴その他の経験から見極めた「出世する店」を「おいしい理由」とともにご紹介!
No.9 水商売の頂点、銀座ならではの洋食店の絶品カツサンド
みやざわ
銀座のホステスで、こちらのお世話になっていない人間はいないんじゃないかしら。といっても「オムライスもハンバーグもおいしいのよね」とか「ナポリタン最高!」なんて、言ってるようではホステス失格。ましてや「あそこのマスターが〜」とか「私はいつも一番奥が指定席」なんて方は銀座の女でいる資格がありません。
なぜか。「その程度で、おいしいなんて満足したらダメだから?」。全然違います。「みやざわ」さんは懐かし系の古きよき洋食屋さんで、舌のおごった銀座村(夜の銀座の世界をそう呼びます)の住人を何十年と満足させている名店です。
答えは「いいクラブに在籍しているホステスは、B級グルメのお店に出入りしてはいけないことになっているから」です。ま、高級クラブといっても、いろんな考え、カラーのお店がありまして、あくまでわたくしがお世話になっていたお店をはじめとする昔ながらのルールを守っているところのお話ではあるのですが。
そんなお店では、ホステスになると担当の黒服から、いろんな心構えを吹き込まれるのですが、そのひとつにラーメン屋さんや定食屋さん、ファストフードといったカジュアル店に出入りするなというのがあるのです。というのも、高いお金を払ってくださるお客さまの頭の中にある「銀座の女=高嶺の花」というイメージを崩してはいけないというブランディング戦略あってのこと。自宅付近など、銀座以外の街で、ホステスの格好をしていなければいいのですが、銀座で誰がどう見てもホステスの出で立ちで、そういったお店に出入りするところ、とりわけ夕食時に利用しているところを目撃されると「あのコ、同伴の約束がないんだ」つまり、売れてないんだと思われて、安く見られてしまうのがイケないということなのです。
だから、いざ、出勤する姿で銀座にきてしまえば、どんなに大盛りチャーハンと餃子が食べたくても、暖簾をくぐって食券機のボタンを押すのは我慢しないとイケない。そんな悲しい宿命を銀座の女は背負ってしまっているんですよね。
出典:bbemuさん
でも、世の中、捨てたもんじゃないです。神さまはいます! そんな哀れな女を助けてくれる「出前」システム。夜の銀座でダントツの人気を誇る出前店が「みやざわ」さんなのです。功成り名を遂げたビジネスパーソンが「キミ、お腹空いてない?」と、ホステスの腹具合を気にかけて、みんなでつまめるサンドイッチ類をとってくれるというのが日常的に行われているんですよね。具には玉子、エビフライ、ハンバーグなどがあって、必須はカツサンド。「みやざわのカツサンド」でワンワードとなっているくらいカツサンドは欠かせません。また、銀座のお客さまっていうのは、そのテーブルの人数プラス、黒服の分もとってくださったりと、やさしい気遣いのある方が多いんですよね。ひとの上に立つ方はさすがです。
そんなこんなで、銀座のホステスが「『みやざわ』さん、大好き〜」の後に言うべき模範解答は「出前でしか食べたことないから、場所、知らなくて。えっ、サンドイッチ以外もあるんですか?」です。
ま、「みやざわ」さん、喫茶だけの利用もできますから、スカウトや打ち合わせなんかのときにママや黒服と行ったり、まだ、お客さまが歩いていない早い時間にこっそり行っちゃったりもしてたんですけどね。
出典:江戸っ子嫁ちょこ子さん
で、なんでもおすすめですが、クラブ気分を味わいたいなら、やっぱり、カツサンド。できたてももちろん美味ですが、あえて10分置いてからいただくと、出前のお味にかなり近くなるはずですし、ウイスキーの水割り(ドリンクメニューにあります)と合わせれば、“銀座のクラブ風味”がアップ。目を閉じて、隣にホステスがいると想像しながらお召し上がりいただけましたら、幸いです。