立ち飲み店もグルメエンタメビルも共存するカオスの街、新橋

組み合わせの妙、ドイツ生ビールと串焼き

新橋は銀座の隣なのですが、いまだに昭和が香るカオスのような街です。11月28日にオープンした「BadenBadenStand 新橋/炭焼(バーデンバーデンスタンド)」は、ドイツ「ホフブロイハウス」のおいしい生ビールが飲めることで有名な「バーデンバーデン」の串焼き店。しかしドイツっぽいのはBGMのヨーデルくらいで、あとは完全な立ち飲み居酒屋。

場所も「ニュー加賀谷」などの大衆居酒屋があるガード下の近くで、10人も入ればいっぱいです。しかしそのギャップがたまらなく、生ビールとねぎまや砂肝の串焼きの相性はもちろん抜群。新橋らしさを堪能できました。

「ねぎま」「砂肝」「ハラミ」 撮影:大木淳夫

健全な怪しさ? 新橋のレジャービル

その足で向かったのが、こちらも11月28日、新橋駅前に出現したフードエンターテインメントレジャービル「グランハマー」。地下から8階、さらに屋上まで一棟まるごとグルメエンタメという造りが話題で、運営は「渋谷横丁」などで有名な(株)浜倉的商店製作所。珍しくて地下から8階までエスカレーターで回ってみましたが、居酒屋はもちろん、ステージやラウンジ、クレーンゲームにスナック、サウナなど階ごとにテーマがあって、健全な怪しさとでも言いましょうか、サラリーマンからインバウンドの観光客までどのニーズにも対応できそうです。

2階のアジア各国の味が集う「シンバシyokocho 亜細亜 ~ASIA~」にある「蕎麦饂飩と焼鳥 繋匠」に入ってみたのですが、メニューに幻の酒ともいわれる「ホイス」があったり、天抜きがあったりで、一人飲みでも楽しめました。

「天抜き」 撮影:大木淳夫

贅沢な時間を楽しみたい人に美味なるワインとラムを

飲みすぎ必至、スターソムリエのワイン

10月16日、青山一丁目にオープンした「AVIS de VIN FORT(アヴィ ド ヴァン フォール)」の支配人は田村理宏さん。今年7月、その閉店が多くのグルマンを嘆かせた自由が丘「モンド」のスターソムリエだった人です。直球も変化球も一流で、なおかつ空のグラスを決して見逃さない絶妙な接客。

さらに運営元がワインのインポーターとして有名な「Terravert(テラヴェール)」で、グラスワインが20種ほどもラインアップされています。ワインを楽しんでほしいからと、グラスも料理も値段は控えめ。そうなったらもう、勧められるままにワインをいただくだけです。飲みすぎてもOKな夜にぜひ訪れてみてください。

「メヒカリのフリットとラディッキオタルティーボ」 撮影:大木淳夫

珍しいマトンは、羊一頭買いのなせる技

最近、羊料理のレストランが数多く生まれています。11月11日、赤坂にオープンしたジンギスカン「ヒツジ乃キ」は、そんな中で注目の一軒。店主の菊池佑太さんは麻布十番「ジンギスカン YOSHIHIKO」の元店長という経歴。ジンギスカンで提供される羊肉の多くは海外産のラム(仔羊)なのですが、こちらは希少な国産がメイン。菊池さんが各地の牧場をめぐり、良質な羊肉をなんと一頭買いしています。

それゆえ、珍しいマトンもいただけて、これは格別な味でした。ジンギスカンにおいて野菜も主役ということで、信頼できる農園から直送。定番の玉ねぎやかぼちゃだけでなく、トウガラシやチコリ、ケールなど9種が用意されていました。野菜が豊富だと、お肉がよりおいしく感じられるから不思議です。

「炭火焼きジンギスカン」
「炭火焼きジンギスカン」   写真:お店から

立ち食いそばの新たなブーム到来か

通いたくなる立ち食いそば

今年後半、なぜか立ち食いそば店も多くオープンしました。最後にそんな中で異色の2店をご紹介しましょう。

11月11日、戸越銀座駅改札のすぐ隣にオープンしたのが「立喰いそば でん」です。経営は近所の「もつ焼 でん」。オーナーが熱烈な立ち食いそば好きというだけあって、こだわりが詰まっています。限定20食の「丸チョウそば」は、鮮度のいい丸チョウ(小腸)がたんまり入っていて、この脂身の甘みが濃いめの出汁にぴったり。食欲をそそります。揚げ物も充実していて、紅しょうが味のおにぎりを天ぷらにした「米揚天」や「カリカリポテト天」などの変わり種も。ちょっと通いたくなりました。

「丸チョウそば」 撮影:大木淳夫

ジャス喫茶のようなヴィーガンそば店

そしてこちら、東北沢と下北沢の間の井の頭通り沿いに12月1日、オープンした「Vegan Soba Tokyo Ayler」はヴィーガン立ち食いそばのお店です。

鰹節の代わりにシイタケなどの茸類で出汁を取っていて、麺も卵は不使用。かき揚げそばをいただきましたが、知らなければ全くわからないくらいの味わい。ただし後味は軽やかです。

店のたたずまいは完全にオシャレなカフェで、メニューには当たり前のようにコーヒーとそばが並んでいます。さらに100年前の蓄音機と2台のレコードプレーヤーがあり、ジャズ喫茶の要素も。店主の森就史さんは「好きなものを一緒にしただけです」と笑っていましたが、好事家が集うような面白い空間になりそうです。

「かき揚げ蕎麦」 撮影:大木淳夫

※価格は税込です

文:大木淳夫

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