【肉、最前線!】
数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!
今回は、フランス牛の美味しさを日本に広めた名シェフによる新店。“仏産牛肉マスター”の次なる一手とは?
Vol.25 肉焼きの技に目を奪われる!肉と熟成鶏編
日本人が赤身の牛肉を好んで食べるようになって久しいが、フランスでは昔から牛肉と言えば、赤身。肉を熟成させるという手法もまた、赤身肉をいかに美味しく食べるかという思想のもとに発達した技術といえるだろう。
日本でフランス牛が注目を集めたのは、3年前にパリから日本に上陸した「ユーゴ・デノワイエ」や、2年前に同じくパリから上陸した「ル・セヴェロ」の存在が大きい。それまで日本人になじみのなかったシャロレー、リムーザン、オーブラックといった仏産の牛肉は、熟成によって引き出された濃厚な旨みが持ち味。そのヘルシーかつ力強い味わいはたちまち多くの肉好きを虜にした。
シェフの齊田 武さん
「ユーゴ・デノワイエ」の立ち上げ時に料理長を務め、のちに「ル・セヴェロ」の日本第一号店のエグゼクティブシェフに抜擢された齊田 武さんは“パリ屈指の高級精肉店”を営むユーゴ・デノワイエ氏の薫陶を受け、「ル・セヴェロ」のパリ本店でも修業を積んだ筋金入りの“仏産牛肉マスター”。和牛とは異なる仏産牛肉の魅力を世間に広めた立役者でもある。
その齊田シェフがこのたび「ル・セヴェロ」の系列店を、5月24日、目黒にオープン。「セラフェ」は“Cellar”(ワインセラー)と“Fête”(お祭り)を合わせた造語で「ワインを飲みながら、みんなで賑やかに食事ができるビストロ」がコンセプトだ。
料理は6,000円のお任せコースがメイン。アミューズ2品にはじまり、テリーヌや魚介のステーキ、シャモロックのロティ、タルタルにコンソメスープをかけていただく牛タルタルの“ひつまぶしスタイル”など、盛りだくさんの内容だ。仕入れによってはラカン産のパンタード(ホロホロ鳥)や、ドーバーソール産の舌平目、日本ではめずらしいアイルランド産のグラスフェッド牛などもメニューに盛り込まれるという。
「セヴェロが牛肉主体なので、ここでは違う食材も使おうと思っています。これは、と思う日本の食材は積極的に取り入れたいです。たとえば、青森県産のシャモロックとか梅山豚とか。シャモロックは身がギュッと締まっていて弾力があり、皮目が厚いところが気に入っています。鶏は個体にもよるけれど1週間前後熟成させます。熟成させることで旨みが増すのは牛肉だけではないんですよ」と齊田シェフ。
時間をかけてじっくりと火を入れた鶏肉は、皮はパリッと香ばしく、身はとびきりジューシィーで脂もマイルド。歯を押し返すような弾力と旨みの深さが印象的で、思わず手づかみで頬張りたくなるほどの美味しさだ。
少人数の場合は、胸肉ともも肉を合盛りに。豪快な丸焼きをオーダーするなら、4人以上で訪れるのがおすすめだ。さらに、陽気な気分を盛り上げるナチュラルワインは1,000本ものストックが。グラスワイン(1,000円~)は10種前後を、料理に合わせたペアリング(3杯4,000円)も用意している。
カウンターには調理場を目の前にした贅沢なスタンディングスペースもある
スタンディングスペースでは「和牛のタルタルステーキ」3,800円などと一緒にワインで“サク飲み”を楽しんで
齊田シェフが見事な技術で焼き上げる肉とワイン、そして、本場のビストロさながらのご機嫌な雰囲気に、俄然テンションが高まる。大いに食べて飲んでお祭り気分を満喫したい。
※すべて税別価格
◆セラフェ
電話番号:03-6420-0270
写真:大谷次郎
取材・文:小寺慶子