出世ごはん
デキるビジネスパーソンはこんなお店で食べている! 元銀座のホステス&開運アドバイザーの藤島佑雪が、かつての同伴その他の経験から見極めた「出世する店」を「おいしい理由」とともにご紹介!
No.4 エグゼクティブには料亭よりも喜ばれる、軒下営業のもつ煮込み店
げんき
今回は1串150円でもつ煮込みを出す、軒下営業の名店をご紹介します。メインダイニングは「お母さん」と呼ばれるオーナーシェフのご自宅の軒下、東京・月島の狭〜い路地裏で、家の外にカウンターを取り付け、椅子をギュウギュウに並べてるだけ。「庶民の店でしょ?」と思われる方も多いと存じますが、それ、違いますから。
出典:hitougourmetさん
なんてったってお店が開いているのは15時30分〜18時30分。でもって日曜・祝日は休み。当然、平日は「みんなが働いている時間に酒飲んで酔える」という選ばれし方々がメインゲストとなります。なので、多くのビジネスパーソンのみなさんには土曜に行くか、平日に有休とるか、営業中の休憩地点として組み込むかして、特権階級気分を味わっていただかないといけません。もともと、築地と隣り合う月島は早朝(深夜?)から働いて、昼前には仕事が終わる市場の人々向けに早い時間から飲めるお店が多かったというのもあるのでしょうけどね。
で、こういうお店に来ると、生まれて初めてディズニーランドに来た小学生のように舞い上がっちゃうのが、金と地位なら任せとけ!なお歴々です。接待すれば効き目抜群!
あるとき、なかよしの芸者さんから、とある財界人にお世話になったお礼に接待したいんだけど、という相談を受けました。毎日、料亭や会員制のレストランで会食をし、海外のあらゆる有名店にも出かけているうえに、どこへ行っても最高の待遇をされているような方を今さらどこへお連れすれば……というのです。
わたくしの頭にひらめいたのはマーク・トウェイン先生の『王子と乞食』。だったら、王子さまに庶民の暮らしを見せてあげたらいいじゃないの!
なんだかんだでわたくしもお供することになり、お連れしたのが「げんき」さんだったのです。お酒は1人につき2缶までなら持ち込み可。近所の酒屋さんでビールやチューハイを買って、軒下でお母さんに串を注文。それぞれ食感や脂のノリが違う「牛モツ」「牛フワ」「牛ナンコツ」を1串ずつ食べていると、たいがい、常連さんともおしゃべりするような感じになります。そうそう、My盃をポッケに入れてくる方がいたりして、こちらの常連さんって粋なんですよね。サッと来て、サッと帰って。風のような自由さがあって。また、そういうのが刺さるんですわ、エライ方々には。
出典:いおしろさん
日頃、同じように金も名もある方々に囲まれ、秘書にスケジュールを分刻みで管理されてたりして、戦前みたいに「重役ならお妾さんいて当たり前」なんてことはとんでもなくて、コンプライアンスでガチガチに縛られてると「げんき」の常連さんが眩しくて仕方ないわけです。飄々とした彼らの姿をお見せすること自体が接待になっちゃう。てか、平日昼間に酔っ払ってるのに、市場関係者でもないって、いったい何者ですか? また、お世辞も言わず、ピシャッと容赦のないお母さんにみんなと平等に扱われるのも心地いいわけですよ。
出典:ぽぱいさん
さらに、名の知れたお金持ちの方々と一緒にいてわかったことですが、「あれ? ここ前に女子会で行ったとこだよな。確かコース4,800円の……」というようなお店でも彼らと伺うといきなり、コース1人前5万円!みたいな。いや、そこなんかは中華でしたから、わたくしたちには餃子やキュウリなんかを出してたのが、その方たちにはフカヒレやアワビをこれでもか!って盛り込んでたらしいから、適正なんですよ、適正。でも、そんなことがちょいちょいあるもんだから、名のある富豪は「オレ、また高いもの売りつけられてるんじゃ……」という心配が絶えないんです。で、そういう心配もしなくていいと。
フリーダムで平等で、安くてうまい! でもって営業時間が特権階級御用達。「げんき」さんには出世を極めた人間が抱く、夢がてんこ盛りに詰まっています。