一番人気なのに未完の肉寿司って!?

カンナの使用は木工細工を職とする客からのアイディア

後半は肉寿司から。「肉寿司ってどうしても一体感がなく、最後に口の中に肉が残るのが嫌で」と試行錯誤してたどり着いたのがローストビーフのように焼いた「ツラミ」を昆布締めにしてから冷凍してカンナで削ることでした。

まるで鰹節のようにフワッフワ!

ベースができるとさらにおいしくなるのではと、トッピングして味を組み合わせてみることに。

塩蒸しして2日間乾燥させた車海老を入れて

ヨーグルト、ナツメグ、シナモンなど、トッピングしているうちに、中に味を入れたほうが良いのでは?と焼いた肉の中にハーブやチーズを入れて冷凍してみたところ、これが功を奏しました。

酢飯の上には「ゆかり」を振りかける

酢飯も試作を重ねたのは言わずもがな。10種類以上の酢を飲み配合を試して現在は4種類の酢を独自にブレンドしています。しかも米を炊く前と後で異なる酢を使うこだわりよう。季節や気温によっても配合を調整しているそう。

衝撃的なビジュアル!

仕上げに昆布出汁醤油を2〜3滴かけていただきます。信じ難いほどふわふわの食感の後にはじんわりと肉のうまみが広がり酢飯とピタリとなじんで喉に落ちていきます。実に感動的な肉寿司です。これがまだ改良の余地ある後半メニューというから驚きます。

クライマックスは塊肉の食べ比べ!

陶芸家、伊藤南山氏に赤く燃える炭で肉を焼くイメージで特注した皿

メインディッシュは部位や調理法を変えての食べ比べです。本日は念願叶って仕入れることができた月出荷約5頭という希少な熊本県の「菊池の誠牛」と、平田さんが1月20日から熟成をかけた豚の内腿「シンシン」で食べ比べました。

添えてある胡椒、塩、黒ニンニクとカシューナッツのソースを好みで

表面に軽く焼き色をつけたら遠火でゆっくりと火入れします。豚は弾力とやわらかさが混在する不思議な食感で特有のにおいがまったくないのにうまみだけを残し、一方の牛は個体そのものが持つ深い味わいが際立ち、噛めば噛むほど肉汁があふれてきます。食べ比べって楽しい!

食の探究は無限ループ

「ここではありとあらゆる食べ比べをします。先日は牛が右腿を下に横たわる性質から同じ牛の両腿を食べ比べました。目隠しして試食しても全員が正解となるほど明確だったので、ならば両腕だとどうなのか?と試してみると利き腕で味が違ったんです」と、平田さんの探究心は食の未来を感じさせます。こちらの醍醐味は店でミラクルな食体験をした後、WEBサイト(https://acl.base.ec)で販売している肉やしゃぶしゃぶを購入すれば自宅で実験の続きができること。その成果をここで披露するのも楽しみの一つ。取材後は“平田沼”にどっぷりハマってしまいました。

※価格は税込


文:高橋綾子、食べログマガジン編集部 撮影:溝口智彦