〈ニュースなランチ〉「natuRe tokyo(ナチュール トウキョウ)」

毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!

ハワイで人気のサステナブルアイランドフレンチ「natuRe waikiki」の新業態が都⽴明治公園内にオープン

2024年4⽉12⽇、都⽴明治公園内にオープンした「natuRe tokyo」

ハワイの豊かな大地に育まれた良質かつ環境に配慮されたサステナブルな⾷材をフレンチの伝統技法で仕上げる、ワイキキで人気のファインダイニング「natuRe waikiki(ナチュール ワイキキ)」。エグゼクティブシェフを務めるのは、東京・南青山の「NARISAWA」やニューヨーク、パリの星付きレストランでの経験を経て「PARIS.HAWAII」でスーシェフを務めた⼩川苗さん。RED U-35 2019ではGOLD EGGおよび岸朝⼦賞と滝久雄賞を受賞、2021年の「natuRe waikiki」オープンより、エグゼクティブシェフとして活躍し、ハワイで最も歴史ある賞のひとつ「ハレ・アイナ賞」を2022年、2023年と2年連続で受賞した若き実力者だ。

小川苗シェフ

そんな彼女がクリエイティブディレクターを務める「natuRe waikiki」の新業態「natuRe tokyo」が2024年4⽉12⽇にオープンした。コンセプトは⽣産者と消費者の距離を縮め、安全安⼼な地元の⾷材を使う地産地消=“Farm to Table”。サステナブルな日本食材を使用したフレンチをベースに、ハワイのエッセンスをプラスしたボーダーレスな料理を提供する。

1階

「natuRe tokyo」が位置するのは国立競技場に隣接する都⽴明治公園内だ。1階はオープンキッチンを備えたカウンター席やペットの同伴もOKで開放的なテラス席、2階は個室利用も可能なテーブル席がありさまざまなシーンに寄り添う。ランチからティータイム、ディナーまで楽しめる通し営業で、レストランの繊細さとビストロの気軽さを併せ持つユーズフルダイニングとなっている。

2階
テラス席

ベジタリアンにもうれしい! コース料理をお盆の中で表現した薪火御膳

ランチでは、コース料理をお盆の中で表現した薪火御膳が味わえる。メインの薪火料理は「熊本 熟成艶姫牛 サーロイン」「長野 安曇野げんき豚 ロース」「薪焼きハンバーグ 八丁味噌のデミグラスソース」「薪焼き ジャンボマッシュルーム」「鮭粕漬け」があり、スープや冷菜などで構成された4種の小鉢と十穀米、薬味がついてくる。

VEGGIE GOZENの「薪焼き ジャンボマッシュルーム」

直径10cmほどにも及ぶ千葉県産のジャンボマッシュルームをはじめ、タケノコやトマトなどフレッシュな野菜を薪火で調理した「薪焼き ジャンボマッシュルーム」3,300円は、ベジタリアン仕様だ。自然の熱源を使用した薪火調理で、野菜は強いうまみとみずみずしさを湛えている。そのままでも滋味深いおいしさだが、添えてある黒ニンニクのアイオリソースをつけることで、マッシュルームでありながらメインディッシュのような食べ応えと満足感をもたらす。

「薪焼き ジャンボマッシュルーム」の副菜は「焼き茄子と紫蘇のマリネ トマトコンソメジュレ」と「クレソンの発酵サラダ」「リークとヴィシソワーズ」「根セロリのポタージュ」。トマトのコンソメジュレに塩麹を合わせるなど、フレンチの技法に発酵大国・日本の食文化を取り入れた副菜は、どれも野菜が持つ力を思う存分に引き出している。確かにこれは副菜というよりも、コースにおけるスープや冷菜、温菜のような完成度の高さで、メインを最高潮の状態でおいしく食べるための料理だ。

彩も鮮やか! ハワイ名物“ポケ”と日本の“ちらし寿司”を掛け合わせた「鮪のポケちらし」

「鮪のポケちらし」

ランチタイムには薪火御膳に加え、彩り鮮やかな薪火ごはんも味わえる。「鮪のポケちらし」2,550円は、ハワイの名物料理ポケと日本のちらし寿司をかけあわせた逸品だ。

さまざまな食材の食感を楽しめる、オリジナリティ溢れるポケ

十穀米の上には大きめのサイコロ状にカットされた漬け鮪にイクラ、玉子焼き、枝豆、天かす、スライスした根菜、野沢菜の漬物、山椒の若葉である木の芽、ゴマ、エディブルフラワーが鮮やかに散りばめられている。マヨネーズなどを使わずヘルシーに仕立てられたポケちらしは食感も楽しく、天かすのコクや木の芽の清涼感、野沢菜の漬物のほのかな酸味など、一口ごとにさまざまな味わいが広がっていく。

お肉気分の日は「薪焼きサイコロ和牛ステーキご飯」でパワーチャージ!

「薪焼きサイコロ和牛ステーキご飯」

お肉料理を味わいたい人は「薪焼きサイコロ和牛ステーキご飯」3,850円を。十穀米の上にのるステーキは、トリュフ塩で味付けした熊本県産の艶姫牛のサーロインを薪火で焼き上げてサイコロ状にカットしたもの。さらに枝豆や酢漬けした蓮根、天かす、木の芽を散りばめ、真ん中にトリュフオイル漬けの卵黄をトッピングしている。

ランチで気軽に薪焼き肉を味わえるのがうれしい

薪焼きによる絶妙な火入れにより、味付けはシンプルでありながら、スモークの香りをまとうとここまで満足度が高まるのかと驚くステーキだ。断面は肉質の良さが表れたあずき色で、サーロインでありながら脂のくどさがなく、噛み締めても噛み締めてもうまみの余韻が続く。ステーキに酢漬けされた蓮根の食感と酸味がアクセントとなり、芳しいトリュフの香りとトロッとした口溶け、濃厚さをプラスする卵黄がさらに箸を進めさせる。

薪火ごはんに添えられる「根セロリのポタージュ」は乳製品不使用で、本来は捨てられてしまう野菜の葉っぱを使ったオイルで作られたもの。優しい味わいで、細胞の隅々まで心地よく染み渡るようだ。このほか、ビーツのたくあん、わさびも別皿で添えられる。

昼からナチュラルワインやアラカルト、ワイキキ本店で人気のデザートも楽しめる!

「ブッラータチーズ 旬の果実とホワイトバルサミコ」

「natuRe tokyo」はヴァン・ナチュール(ナチュラルワイン)も豊富で、日本をはじめオーストラリアやフランス、イタリアなど世界各地のワイン(グラス850円〜)を昼から味わうことができる。ランチメニューに合わせてもいいし、アラカルトメニューをオーダーするのもいいだろう。

「ブッラータチーズ 旬の果実とホワイトバルサミコ」2,700円は、イタリア産のブッラータチーズととちおとめ(時期により異なる)にオリーブオイル、ホワイトバルサミコを回しかけた一品。生クリームのようなミルキーにとろける口溶けのブッラータが、とちおとめの甘さを引き立てており、ミネラルな酸味を伴うポルトガルのアルヴァリーニョを使ったスパークリングワインが寄りそう。

「蓮根としし唐の竹炭フリット 黒ニンニクのアイオリソース」

「蓮根としし唐の竹炭フリット 黒ニンニクのアイオリソース」1,200円は、ハワイのマウイ島の溶岩をイメージして作られた見た目のインパクト抜群の料理だ。衣に竹炭を練り込んだ真っ黒な蓮根のフリットは、蓮根のシャキシャキとしたみずみずしさを残しつつ、自然な甘さが感じられる。黒ニンニクのアイオリソースをつけることで、よりお酒が進む。

「紫芋のモンブラン おからのクランブル」

食後にはぜひ「紫芋のモンブラン おからのクランブル」1,400円をオーダーしてほしい。こちらはハワイ本店のシグネチャーデザートであり、おからのクランブルに、オーツミルクを使ったジェラート、紫芋のペースト、菊芋のチップスをトッピングしたヴィーガン仕様だ。モンブランとジェラートはねっとりした口溶けの穏やかな甘さで、ほの甘い菊芋のチップスがカリカリと小気味よい食感。紫芋のたおやかな甘さが舌に残る、ギルティーフリーなスイーツとなっている。

店内にはロスフラワーを飾り、有機栽培を行う農家から規格外の野菜や果物を積極的に仕入れ、ディナーの肉料理には経産牛を使用するなどサステナブルな取り組みを続ける小川シェフ。自然を守り、自然の魅力を伝えるためにどうすべきかを考え続けている小川シェフが織りなす料理は、目や舌だけでなく心や体にもたっぷりとおいしい栄養を与えてくれる。

※価格はすべて税込

撮影:佐藤潮

文:中森りほ、食べログマガジン編集部