【肉、最前線!】

数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

 

今回は、六本木をステーキの街に変えた立役者と言うべき、ステーキハウス。今年3月にリニューアルを果たし、パワーアップしたその内容をお届けする。

Vol.21 ステーキハウスの雄がさらなる進化!肉と街編

“銀座で鮨”のように“六本木でステーキ”というイメージが定着して久しい。米国牛の輸入規制緩和をきっかけにアメリカから多くのステーキハウスが上陸してきたことで熟成肉や塊肉のブームが加速。

写真:グランド ハイアット 東京より

 

六本木界隈には外国人居住者や食のトレンドに敏感な人が多いという理由からこの場所に日本上陸第一号店を構える店が多かったと聞くが、グランド ハイアット 東京内にある「オーク ドア」はまさに、アメリカンステーキハウスの先駆け的な存在と言えるだろう。

 

ホテルが開業した2003年にウッドバーニングオーブンで焼き上げるステーキをメインにしたレストランとしてオープン。日本のラグジュアリーホテルで肉料理を扱う店といえば、鉄板焼きが王道だが、コンテンポラリーな外資系ホテルらしい、重厚感のあるアメリカンステーキハウスは開業時から大きな話題を集めた。

 

豪快なステーキやグルメバーガーは六本木界隈で働くビジネスマンや外国人ゲストからも好評で、ハレの日使いや宿泊客の利用が主だったホテルダイニングに“ウォーク・イン”の需要が増えたのはオーク ドアの功績ともいえるかもしれない。

写真:グランド ハイアット 東京より

 

国内外の多くのゲストから愛されたオーク ドアがホテルの開業15周年を迎えるにあたり、この3月にリニューアル。内装とメニューの一部を刷新し、新たなスタートをきった。ラグジュアリーホテルのステーキハウスらしい華やかな空間を手がけたのは、世界的に有名なデザイナーのトニー・チー氏。

 

“ノスタルジー”をコンセプトに掲げた美空間にはオーク ドアについて書かれたさまざまな記事が一面に飾られ、クリエイティビティのなかに温かみを感じさせる雰囲気に。天井には、ホワイトオークを使用した直径2.5mのペンダントライトが設置され、モダンなインテリアと柔らかな光のコントラストが上質な空気感を生み出している。

「ホテルメイドのアメリカンフード」という料理コンセプトはそのままに、炭火を使ったチャコールグリルと高温で一気に焼き上げることのできるモンタギュー社製のガスブロイラーを新たに導入。古典的な火入れ術と最新機器を巧みに使い分け、豪快に肉を焼き上げるのはアメリカ・サンディエゴ出身のパトリック・シマダ氏だ。

 

「これまでのウッドバーニングオーブンの最高温度が400℃なのに対し、モンタギュー社のガスブロイラーは900℃。高温で旨みを封じ込めながら肉を焼くには最適です」と話す。

数あるステーキメニューのなかでもオーク ドアのシグネチャーといえば正味1.6kgのトマホーク48,600円(税・サービス料別)。インディアンの斧に形が似ていることから名づけられたというエピソードに思わず納得する圧巻のビジュアルだが、大迫力の塊肉もパトリック氏の手にかかれば極上の焼き上がりに。表面は、カリッとクリスピーに、中は赤身と脂の旨みがたっぷりと凝縮されており、これぞ、アメリカンステーキの真骨頂と思わず唸る。

 

いわゆるNYスタイルのステーキは高温で一気に火を入れるのが一般的だが、オーク ドアのトマホークの場合は炭火で肉の旨みを繊維に内包させながら焼き上げた後に、短時間だけ高温で表面を焼くため、ふっくらと仕上げることができるのだという。

リニューアルで、新たに加わったメニューのなかでもぜひ味わってほしいのが、アメリカのステーキハウスでは定番のボーンマロー2,200円(税・サービス料別)。香ばしくとろとろに焼き上げられた骨髄はシャンパーニュとの相性も抜群。至福のアペタイザーにステーキへの期待も一層高まる。さらに、5月31日までのランチ限定で総量4kgの15周年記念バーガー15,000円(税・サービス料別/3日前までの要予約)もオンメニュー。ホテルダイニングならではのスケールの大きさを感じさせるハンバーガーは6~8人でシェアしてわいわい楽しむのにぴったりだ。

 

オーク ドアといえば、ワインのラインアップが充実していることでも知られているが、果実味豊かな300種以上のニューワールドのワインはとくに圧巻の品揃え。普段、肉にはブルゴーニュやボルドーを合わせるという人もここで“新境地”を試してみるのも面白いかもしれない。

 

ホテルならではの洗練されたサービス、ラグジュアリーな気分に浸れる空間、そしてダイナミックな肉料理。“ステーキハウスの聖地”で、これからも大いに肉ラバーを楽しませてくれることを期待したい。

 

 

写真:上田佳代子
取材・文:小寺慶子