温かな昆布だしが飲んだ後の体に染み渡る「のり明太子うどん」

のり明太子うどん
 

秋山さん

肉じゃがコロッケ、腸詰め、マグロカマ焼きなど散々食べてお腹いっぱいなのに、この〆のうどんの麺もつゆもおいしくてペロリと食べてしまいます。最近も食べましたが、やっぱりおいしかったです。

程よい軟らかさの麺

お腹いっぱいでも締めたくなるのが、素うどんやかき揚げうどん、とろろうどんなど11種類もそろう「藤八」のうどん。特に具義さんがおすすめするのが、一番人気だという「のり明太子うどん」(869円)だ。

香りの良いのり
 

秋山さん

麺は讃岐うどんのようにしっかりしたコシはなく、やわめでもっちりした麺でスルスルッと食べられてしまいます。かつての東京のうどんといえば醤油の濃い色のつゆでしたが、こちらは昭和の時代から関西の人も納得する昆布だしがしっかり出ている澄んだ色のつゆでした。この味が、〆に最高なんです。

麺は市場から仕入れたさぬきうどんを、飲んだ後でもするりと食べられるよう1人前よりも少ない量茹でている。つゆのベースは昆布だし。先代のオーナー夫妻が九州出身だったことから、昆布だしベースのつゆになったのではないかと田中さんは推測する。

ツルツルのうどん

うどんの上には有明海産の生のり、小口ネギを添え、さらに大葉の上に豊洲市場から仕入れた明太子、なるとをトッピングして完成だ。

透き通るつゆ

明太子うどんというとコッテリ系かと思いきや、こちらのうどんはピュアで滋味深く、どちらかというとサッパリ系。生のりの磯の香りが豊かで、そこに明太子が寄りそう。明太子が主役というよりは、青のりと明太子が合わさった海の恵みを主体としたうどんだと感じる。シャキシャキとしたネギの清涼感も、飲んだあとの口の中をゆっくりと鎮める役割を担う。酒のアテを食べ、酒を散々飲んでから食べるからこそ真価を発揮する、そんなうどんだ。

大葉の上の明太子を少しずつ崩す
 

秋山さん

途中で明太子をつゆに溶かすと味変して、生海苔の磯の風味と口の中で混ざり合っておいしいんです。

物価高のいまも変わらず、庶民の懐に優しい価格帯で、真っ当な料理と酒を提供する「藤八」。どうか、たくさん食べて飲んでから「のり明太子うどん」を頼んでほしい。

※価格は税込。

文:中森りほ、食べログマガジン編集部
撮影:佐藤潮