【食を制す者、ビジネスを制す】

「逆境は誇り」。その言葉に突き動かされて、とんかつ店に行った

ゲームとワインで成功した経営者

「モンスターハンター」「バイオハザードシリーズ」など人気ゲームソフトを擁するカプコン。創業者の辻本憲三氏は、ゲームで大きな成功を収める一方、莫大な私財を投じ、米カリフォルニア州ナパバレーの個人会社ケンゾーエステイトでワイン事業も行い、業界関係者の間で高い評価を得ている。まさにゲームとワインで2つの成功を収めた幸運な富豪だと言えるが、実は人知れず苦労を重ねてきた経営者でもある。

1940年に奈良県橿原市に生まれた辻本氏は、中学2年のときに父が他界、困窮に陥ったため、高校は定時制を選び、昼は釣り具を製造する近所の会社で働いた。高校卒業後は親戚が経営する県内の菓子卸問屋に就職。その後、23歳で事業を譲り受けたが、借金を重ねることになった。1966年にで大阪に出て、今川焼の販売から始め、綿菓子を売るようになる。そのとき綿菓子製造機に群がる子供たちをヒントに、今度は綿菓子製造機自体の行商を始める。だが、鹿児島まで営業に行ったところで、偶然にもパチンコ改造機を扱うことになった。

それが幸運を呼ぶことになる。この市場は広く、瞬く間に商品が売れ、これをきっかけに遊戯レンタル・販売の会社を創業することになった。そこで大成功したのが、あの「スペースインベーダー」ゲームだった。しかし成功もつかの間、ブームはあっさりと去り、10億円の損失を出すことになった。

 

苦労を重ねた末に得た「逆境は誇り」という言葉

すでに2度の失敗で借金もある。では、どうすればいいのか。そんなとき辻本氏に手を差し伸べてくれたのが、「スペースインベーダー」の発売元であるタイトーの創業者だった。先方は辻本氏を赤坂のフレンチレストランに呼び出し、「20億円出すから、一緒に商売をしよう」と説得するが、辻本氏は固辞。逆に「自分でゲームを開発したい」と申し出た。その熱意に打たれたタイトーの創業者は、なんと辻本氏に「1億5000万円の融資をする」と言い出したのである。文字通り、捨てる神あれば拾う神ありという場面に遭遇する。

その資金をもとに42歳のときにカプコンを創業したが、またしても落とし穴があった。その直後、支援してくれた創業者が死去。関係者からは即刻借金を返済するように迫られた。船出したばかりにもかかわらずの不運。辻本氏は結局、20%という高金利で借金し直す事態に陥った。その後も、辻本氏は何回も倒産の危機を迎えるが、50歳のとき、「ストリートファイターⅡ」が大ヒットし、経営の基盤を築いていくことになるのである。

こうした辻本氏の半生を眺めると、失敗して借金し成功するという、まさにジェットコースターのようなビジネス人生を送ってきたように見えるのだが、多くの困難を乗り越えることができた理由とは何か。それが、超がつくほどのポジティブ・シンキングだったことだ。どんなに悪い状態でも、自分で見方を変えれば良い状態に思えてくる。辻本氏は自身の高校卒業の寄せ書きには「逆境は誇り高き人生なり」と記したという。辻本氏は、40代の半ばを過ぎてから、本格的に成功者への道を歩み始め、70代となった今でも第一線であり続けている。

 

ポジティブになるための食事をする

4月から新しい生活が始まったビジネスパーソンも多いだろう。だが、仕事に失敗や挫折は付き物である。これから自分が同僚より劣って見えたり、上司が自分だけを目の敵にしているように感じたりすることがあるかもしれない。そんなとき辻本氏のような苦労を重ねた筋金入りの経営者の言葉が、あなた自身を救ってくれるときがある。

私の場合、会社を辞めて独立した直後、なかなか良い仕事が来なかった。どうすればいいのか。将来を不安視し、眠れない夜を幾度も過ごした。そのころたまたま出会った言葉が辻本氏の「逆境は誇り」という言葉だった。その言葉に出会ったとき、ふと食事についても自分の好きな“ハレの食事”をしていないことに気付いた。これではいけない。気分が良くなる食事をしよう。そう思った。

 

そこでたどり着いたのが、目黒にあるとんかつの名店「とんき 目黒店」だった。男ならロースかつ定食を注文すべき。そう考えた。白木のカウンターに座って、ロースかつ定食を頼み、とんかつをつくり上げていく職人たちの動きを眺めながら、とにかく待った。

出典:3litt55さん

そして、目の前に現れたロースかつ定食に対し、まずロースかつにからしを塗り、ソースをつけて口の中に入れた。次にごはんをかっこむ。そしてキャベツを少し。この動作を繰り返しながら、味噌汁で一息入れる。その間、とにかく黙々と食べた。味を感じながら、かみしめたのである。そうやって求道者のようになって黙々と集中して食べていると、なぜか突然「勇気」が湧いてきたのである。「うまい」という感覚が私を楽天的にさせたのだろう。途端に目の前が晴れ渡ってくるような感じがした。

出典:サプレマシーさん

こうした感覚を今でも私は忘れないようにしている。自分にとって気分を盛り上げてくれる食事とは何か。それを知っているだけで、きっと人生は歩きやすくなるはずだ。