自由にできる環境で模索し続ける自分ならではのスタイル

本田:この先はどういうふうにしていきたい?

國居:近い将来までしか考えていないというのが正直なところです。3年単位で考えると3年前、想像してなかったことが今、できている。うまく縁が転がって、勉強もしてステップアップできたのかなと思っています。これからも出会った縁を大切にしていきたいですね。独立しないのってよく言われますが、独立しようとかは一切思ってないです。それより今やるべきことをやりたいですね。

本田:20年前ぐらいと違って、今は時代の変化が激しい。昔は何か目標を持って生きた方がよかったけど、今は、あんまり決めつけすぎないで、サーフィンと同じでいい波が来たときに乗れるような準備をしておくぐらいがいい。

國居:今は自分の力をつける、土台をしっかり安定させる時期なのかなと思っています。基本的に何でも自由にやらせてもらえているので。だからこそ、自分という形を作る時期かなと。でもそんなふうに形を決めつけたくないなとも思っています。

本田:今はそういう時代かな。世の中、すごく変化していて、レストランのあり方も変わってきている。

國居:昔だったら、ほとんどの人が独立を目指してやっていたと思うんですけど、僕は、それは絶対じゃないと思っていて。料理人でも絵を描く人でも、モノを生み出す人の横にはマネージメントしてくれる人がいる方が合理的かなと思っています。料理をしたいとなったときに、他にやらなきゃいけないことがたくさん出てきて、それらをこなせる自分がイメージできないですね。

本田:料理にフォーカスしたい?

國居:今は料理が楽しいです。

本田:楽しいっていいな。これまでつらいこととかなかったの?

國居:精神的に挫折していることは多いと思います。何となく一通りポジションをやって、一人前になったかなみたいなときに、フランスに行ったら、想像以上に食材も限られていて。そのとき、自分は言われたことだけをやっていたんだと痛感しました。「Maruta」ではメニューが週替わりで、料理を一人何品って割り振りがあって、自分も試作して提案したんですね。でも、イノベーティブな和食みたいになっちゃって、「Maruta」という店にそぐわない。和食しか作って来なかったから、引き出しが意外と少ないんです。毎週金曜日になるとお腹が痛くなっていましたね。でも、すごく鍛えてもらったなと思っています。

本田:制約や制限があって、自分の経験と違うことをやると、鍛えられて伸びるよね。いいステップアップをしてきているのかもね。

國居:今もそうですけど、常に何か課題が置かれている状況で仕事をしてきています。

本田:自分で考えなきゃいけない。

國居:それがすごくありがたいと思います。

本田:今日はおもしろかった。ありがとうございます。

國居:ありがとうございます。

撮影:長尾 真志
取材:本田直之、食べログマガジン
文:小田中雅子