〈食べログ3.5以下のうまい店〉

おいしいもの好きのあの人に「食べログ3.5以下のうまい店」を教えてもらう本企画。今回は、連載「森脇慶子のココに注目」でおなじみ、人気フードライター・森脇 慶子さんおすすめの創作料理店「春鶯亭(しゅんおうてい)ひら」をご紹介。

教えてくれる人

森脇 慶子

「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。

商店街のにぎわいを離れた一軒家で営業

趣ある佇まいの店舗。梅の木などの植栽にも風情がある

石川町駅から徒歩13分、元町・中華街駅から5分、横浜元町ショッピングストリートのにぎわいを少し離れた閑静な一角、外国人墓地との境目に伸びる路地に面した一軒家レストランが「春鶯亭ひら」だ。

「母の実家が吉田町(横浜市中区)にあった『梅林』というお店で、1975年にのれん分けして母が開いた店が『元町梅林』。私は、元町仲通りで野菜料理中心の『健食優菜ひら』を営んでいたのですが、母の店と私の店のよいところを一つに合わせ、2020年に開いたのが『春鶯亭ひら』です」。こう教えてくれたのは、女将を務める平尾伊津子さんだ。

「元町梅林」時代の貴重な品も大切に保管されている

「元町梅林」の時代から長年通う客も多く、新店になってからの口コミ数はそう多くはないが、食べログ点数は3.45、食べログユーザー約6,500人が気になる店として保存していることから、隠れた名店であることがうかがえる。

※点数は2024年2月時点のものです。

あえて席数を抑え“もっともおいしい作りたて”を提供

天井の中ほどに設けられたすだれを下ろせば空間を2つに分けることもできる

店舗は、昭和、平成、令和にわたり使われてきた一軒家を2022年にリノベーション。かつては1階の厨房で作った料理を、ダムウェイターと呼ばれる小型エレベーターで上階に運んで提供していたが、一新した厨房の近くに客席を設けたことで、できたての料理をすぐに提供できるようになった。

「ダムウェイターを使うと、移動時に受ける風の影響で料理の温度が2~3℃下がってしまうため、麺料理など出せないメニューもありましたが、今は最もおいしい作りたてをお出しできます。お客様と料理人との間に語らいが生まれるなど、とてもいい距離感でやらせていただいています」と平尾さん。

 

森脇さん

以前はお座敷でしたが全てテーブル席となり、木の温もりが漂う洒落た落ち着きのある内装になっています。横浜元町ショッピングストリートの裏手の一軒家という隠れ家的シチュエーションも興をそそるのでは。

梅の枝を細かくスライスしガラス繊維に封入した建具。光が当たるとさまざまな表情を見せる

味わいのある既存の柱や梁はそのままに和モダンな空間に生まれ変わった店内は、空間全体に木、石、漆喰などの自然素材が多く使われリラックスできる雰囲気。全席が完全個室や半個室として利用できる使い勝手の良い造りで、洗練されたデザインのイス席のほか、程よいおこもり感のある掘りごたつ席も備える。

最奥にある完全個室は4~5人用。この部屋がお気に入りという常連客も多い

ちなみに2階にもお座敷があり2022年までは利用していたのだが、現在は使用していない。「家族やスタッフと話し合い、無理なく本当においしい料理を提供できる人数に絞って営業しようと決め、20人以下という現在の席数にしています」(平尾さん)