【THEご褒美スイーツ 〜知っておきたい通な店〜】

「食事と同じくらい、むしろそれ以上にデザートやスイーツにも絶対手を抜きたくない!」と、日々おいしいスイーツを探し求めるスイーツガチ勢の皆さんにお届けする本連載。スイーツの歴史研究のみならず、製菓にも精通するお菓子の歴史研究家・猫井登さんが「これを食べるために出かける価値あり!」と太鼓判を押す、ご褒美スイーツを紹介します。

〈第9回〉「UN GRAIN(アン グラン)」

アン グランは、表参道の大通りからちょっと奥まった住宅街の中にひっそりと立つ、隠れ家的なパティスリーだ。正確に言うと、青山通りから骨董通りに入り「南青山六丁目交差点」を過ぎて1つ目の路地を右折したところにある。

2015年にオープンした「UN GRAIN」

道沿いには看板が立っており、階段を3段ほど上ってエントランスへ。奥を覗いても突き当たりの壁が見えるだけ。知らないと入るのにちょっと勇気がいる店構えだ。エントランスの壁には「UN GRAIN」のロゴが刻印されている。通路の突き当たりを右に進むと、洗練されたモダンな空間が目の前に広がる。

店に並ぶお菓子はパティシエにより丁寧に作り上げられていく

UN GRAINとは、フランス語で「一粒の種」の意味を持つ。「一粒の種から大切に育てられた食材を使い、作り手の思いとともに丁寧に仕上げられた一粒のお菓子は、やがてお客様の中で新たな気持ちの種へと生まれ変わります。それぞれのお客様に楽しく幸せなひと時を提案させていただきながら、ゆっくりと大切にUN GRAINという『一粒の種』を育てていきたいという願いを込めて名付けました」とのこと。

南青山のみゆき通り沿いに本店がある洋菓子製造販売会社「ヨックモック」が運営するミニャルディーズ専門店であり、現在は、渡仏経験の豊富なスーシェフの中村匡希(なかむら まさき)氏がお店を牽引している。

外観からのイメージを裏切らないシックな雰囲気の店内

店内には、L字形のショーケースが配置されており、入り口より左手に生菓子・パウンドケーキなどの半生菓子が、正面にクッキーなどの焼き菓子が陳列されている。特製のショーケースに陳列されたスイーツは光り輝き、ラグジュアリーなジュエリーショップにいるような感覚だ。

ショーケースに陳列されたスイーツは、どれもやや小ぶりで「ミニャルディーズ(mignardises)」と呼ばれるものだ。そう、こちらのお店はミニャルディーズの専門店なのだ。

生菓子・半生菓子、合わせて約20種類が並ぶ

「ミニャルディーズ」とは「可愛い」を意味する「mignon(ミニョン)」という語から派生して生まれた言葉とも言われる。一般的にフレンチのコース料理の締めくくりとして食後の飲み物とともに提供される小菓子のことを指すが、こちらのお店では「家族や友人など大切な人たちと過ごすひとときにおもてなしの心を表してくれる、小さくてシックなお菓子」を総称して、そのように呼んでいる。

クッキー・ムラングなどの焼き菓子も約20種類用意されている

こちらのミニャルディーズは、単にふつうのケーキを小さくしたものではない。約4cm四方という限られた大きさの中で、味わいの組み合わせや食感を極限まで追求し、精緻に計算された独自の世界観を作り上げている。

「カフェグルマンセット」は、2品の選べるケーキ+ドリンク(1,800円)と、3品の選べるケーキ+ドリンク(2,200円)の2種類がある。

イートインでは、2種類の「カフェグルマンセット」が用意されており、店内のミニャルディーズとドリンクを一緒に楽しむことができる。

今回は、数あるミニャルディーズの中から、特におすすめの3種類を紹介しよう。