【食を制す者、ビジネスを制す】
カツ丼をかき込んで、活をいれてみる
できる人と、できない自分
人生はいつも波のようにプラスとマイナスの感情が交互にやってくる。楽観と悲観、積極と消極。しかし、どちらかといえば、人は悲観的になったり、消極的になったりするときのほうが多いのではないだろうか。
「自分はこのままで大丈夫なのだろうか」「普通の人よりも劣っているのではないか」「自分に自信がもてない」。仕事や人間関係で、そんな悩みや不安に遭遇したとき、負の感情から抜け出すことは意外と難しい。
人は失敗したり、叱られたりすれば、落ち込む。そこからすぐに立ち直ろうとしてもすぐには無理だ。悔しさと不甲斐ない自分に腹が立ち、夜中に大声を出して、一人お風呂の中で悶々と涙するときもあるだろう。上司に何回注意されても、問題点を改善できず、自分は本当にダメだ、何で自分はこんな人間に生まれたのだろうと後悔することもある。
一方、世の中には常に楽観的で積極的に働き、人生を楽しく過ごしているように見える人たちがいる。ときにはそんな人たちがうらやましく思えてくる。でも、自分も彼らのように変わりたいと思ったとしても、そもそも生まれた環境や能力が違うとあきらめてしまうこともあるだろう。できる人と、できない自分とはそもそも違うのだから、と。
自分の失敗や欠点を客観的に語れるか
しかし、意外なことに人生やビジネスを成功させた人ほど、普通の人よりどん底に落ち込み、大きな失敗や挫折を繰り返していることが多い。人は多くの欠点をもっている。欠点はなかなか治らない。だからこそ、失敗もする。成功した経営者や起業家たちも万能ではない。
実はそんな彼らに共通していることが、失敗を失敗として認め、自分の欠点を熟知していることなのだ。彼らは自分の欠点や失敗を客観的に語れる人たちなのである。
私たちが一番やってはいけないことは、自分の欠点や失敗を自分で認識しない、または、しようとしないことだ。まずは欠点や失敗を自分で認めることが大事だ。次にそんな自分を否定していじめるのではなく、肯定するところから始めてみる。自分にはこれはできないが、あれならできる。そこから本当の自分、やりたいことが見えてくるのではないだろうか。
経営学者であるドラッカーは成功した経営者を取材した際に、ある共通項を見いだしたという。彼らの性格はそれぞれバラバラで何ら共通したところがない。つまり、成功するために共通した性格や欠点は見つけられなかった。しかしドラッカーはただ一つだけ共通している部分を見いだした。それが最後まであきらめずに成し遂げる力だった。
実はその力こそ、自分の欠点や失敗した経験を見つめることで、現れてくるものなのだ。自分の欠点や失敗から目を背けるか、または真正面から取り組むか。もし人生や仕事で失敗や挫折があっても真正面から立ち向かったほうが自分の気持ちがすっきりするはずだ。のちのち後悔することもなくなる。そのうえ、人生は楽しくなる。だからこそ、うじうじ、ぐずぐずして何事も決めあぐねている人こそ、失敗を経験してほしい。失敗は成功のもと、とは昔からある言葉だ。
銀座梅林の「スペシャルカツ丼」
失敗しても、一度反省して次のチャンスに向かって歩めばいい。そんなときにもってこいの食事が「カツ丼」だ。ゲン担ぎの意味もあるが、カツをかじり、ごはんをかっ込んでいると、なんだか生きていることを実感できる。食べるという行為に集中できる、そんな食事が落ち込んだ気分から回復するにはいいようだ。
そんなときに私自身が自分に活を入れるときに行くのが、銀座のとんかつの名店「梅林本店」だ。この店で注文すべきは、「スペシャルカツ丼」。このカツ丼が良いところは、カツの量もさることながら、目玉焼きがのっていることだ。半熟の黄身を絡めながら、関東風の甘めのタレで食べるカツは本当にうまい。しかも同店のロースカツ定食が2900円に対し、スペシャルカツ丼は2000円とリーズナブル。むろんソースで食べるカツも格別だが、重いどんぶりを持ちながら食べていると、なぜか得した気分にもなる。
私が訪問したとき、自分の席の近くに、ある著名な政治家がいた。秘書たちと連れ立って来ていたようだが、身体も顔も耳も大きく、一目見て、只者ではないという印象を持った。その人もスペシャルカツ丼を注文していたのだが、食べるのが早いこと。おそらく2~3分程度で食べ終わったのではないか。食べるというか、飲み込むようにあっという間にカツ丼を平らげる姿は荒々しかった。しかも年齢を後で調べてみると70代半ば。そのエネルギーに圧倒されるような錯覚を覚えたことがある。その人も世間的には成功者である。だが、その人の本を読むと、どれだけ失敗し苦労したかという話がたくさん書かれていた。やはり失敗は成功のもとなのだ。