教えてくれる人

マッキー牧元
株式会社味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチ、エスニック、スイーツに居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ・テレビ出演。とんかつブームの火付役とも言える「東京とんかつ会議」のメンバー。テレビ、雑誌などでもとんかつ関連の企画に多数出演。

青森でマッキー牧元さんの心を打った3軒とは?

魚菜市場

八戸では、ホテルで朝食を取らない。陸奥湊にある「魚菜市場」に行って、好きな刺身を買い、焼き魚を買い、ご飯と味噌汁で朝定食を決める。
なにしろ入り口には「日本一元気な朝ごはん」と書かれているではないか。「朝ごはんをもりもり食うぞ」と、意欲が湧いてくる。

「魚菜市場」へ入った瞬間に「落ち着いて」と、誰かが頭の中でささやいた。
あれも食べたい。これも食べたい。
これでも抑えた方である。

マグロ、イカ、タコ、ヒラメ、ホタテ、鮭の刺身、いくらにすじこ、帆立の佃煮。鯖のパストラミに、オイランガレイの塩焼きと鯖の塩焼き、目玉焼きに納豆も頼んでしまった。
ああ、めかぶの味噌汁がうまい。
青森だというのに、意外と塩気少なく、朝の胃袋に優しい。

刺身類はご飯にのっけて海鮮丼にしてみた。
もりもり。もりもり。
音が聞こえるほど、みんなで飯をかきこむ。

朝ごはんをお腹いっぱい食べる人生は、素敵だ。
自分が生きているという当たり前が、体に満ちて幸せだ。

ある日は、即席ヒラメづけ、つぶ貝、茎わかめにすじこ丼といってみた。
またある日は、ヒラメ、ウニ、イイダコ、ホタテ、海苔佃煮をのせて海鮮丼とし、おかずに鯖の塩焼きを食べた。
その他、塩鮭のカマやヒラメの縁側、カニ類などもあって、どれにしようかとうれしい悩みが待っている。

ただしここで腹十分にしてはいけない。
目の前の駅に隣接した「駅ナカ酒場 62371◎」へと向かうのであった。

駅ナカ酒場 62371◎

ここは朝7時からやっている酒場である。朝バルである。
酒が進んで困る肴を頼み、酒を飲む。
なにしろここは八戸の銘酒「陸奥八仙」を醸す「八戸酒造」がやっている店なのである。

飲み比べセットは、陸奥八仙特別純米と陸奥男山超辛純米が定番で、3本目は新酒やおすすめを店の人に聞いて飲もう。
あるいは朝イチ燗酒というのもよい。
朝から燗酒を飲むことがどれくらい気持ちがいいのか、今まで知らなかったことを恥じるに違いない。

燗酒は目覚めの舌に優しく、労わるように流れ込んで喉に落ち、体を温めていく。
燗酒とは、朝飲むために生まれたのではないかと思うほどである。

つまみは「魚菜市場」から持ち込んでもよし、青森の郷土料理「せんべい汁」もあるので、これを燗酒に合わせてもよし。

「魚菜市場」でお腹いっぱい食べてから、ここで酒を飲んでほろ酔いになる。他の都市や魚市場にはない幸せが、あなたを待っている。