食通が見いだした、今月の新店

新しいお店がどんどん出店し、ますますの盛り上がりを見せる飲食業界。「気になる店が多すぎてどこの店に行ったらいいかわからない!」という人も多いのではないでしょうか。

そこで、グルメ情報に精通している方々に、最近訪れた新店に関するアンケートを実施。特に注目している「今月の新店」について教えていただきました。

今回は、フードジャーナリストの小松宏子さんにお答えいただきます。

教えてくれる人

小松宏子

祖母が料理研究家の家庭に生まれる。広告代理店勤務を経て、フードジャーナリストとして活動。各国の料理から食材や器まで、“食”まわりの記事を執筆している。料理書の編集や執筆も多く手がけ、『茶懐石に学ぶ日日の料理』(後藤加寿子著・文化出版局)では仏グルマン料理本大賞「特別文化遺産賞」、第2回辻静雄食文化賞受賞。Instagram:@hiroko_mainichi_gohan

今月のベストワン

Q. 直近で行った新店の中で、特におすすめしたいお店を教えてください

A. デュシタニ京都の「Ayatana」です

2023年9月に、京都にまた一つ個性的なホテルがオープンした。タイでも有数のホテルチェーン「デュシタニ」グループの直営ホテル「デュシタニ京都」だ。エキゾチックながらシックで落ち着いたインテリアにまず心を癒やされるが、何より魅力的なのが、本場そのままの伝統的なタイ料理がいただける、メインダイニング「Ayatana」だ。

実はこちら、タイ国内外で複数の賞を受賞している有名レストラン「Bo.Lan(ボー・ラン)」が監修している。「ボー・ランは夫のボー・ソンヴィサヴァ氏と夫人のディラン・ジョーンズ氏が共同で経営するレストランで、何より、タイの古典を重んじていることと、オーガニックであることに力を入れている。永らく途絶えていた正真のタイ伝統料理を表現しているのだ。そうした頑ななポリシーをまったくそのままにメニューを構成しているのが何よりの価値と言えるだろう。それはまさに、視覚、味覚、嗅覚、聴覚、触感そして第六感をも刺激する料理といっても過言ではない。 正式なコースは長大だ。前半が、前菜として、1品ずつ5つの料理が供される。そして後半の主菜は、6つの料理がテーブルの上に広げられ、それぞれジャスミンライスの上にのせて食べるスタイルだ。これは、食事を皆でシェアするという、昔ながらのタイの食習慣を大切にしているがゆえの考え方だそう。そうしたところにも、古典を重んじるという意味合いがしっかりと守り継がれているのだ。その2部構成でコースの料金は24,800円。

内装は、金継ぎのデザインから発想されたエレガントな空間。大きく開けたオープンキッチンで手際よく調理されていく様を見ながらの食事も楽しいし、プライベートを重んじたシックなスペースでの食事もエレガントだ。とにかく日本では食べられなかった、古典を重んじたタイ料理がいただけるのだから、間違いなくお試しの価値ありだ。

Q. 「Ayatana」でおすすめしたいメニューを教えてください

A. 「タイ北東部の蒸し魚」(コース内)です

北海道のマスを使った「タイ北東部の蒸し魚」は、ソースを塗ったマスをバナナの皮で包んで蒸しあげる一品。きれいに盛りつけられた野菜と、ソースとともにいただく。しっかりと味の染みマスが郷愁を感じさせる味わいだ。

※価格は税・サービス料込

※アンケート内容をもとに、料理名・金額を掲載しています。最新の情報はお店にご確認ください。

写真:轟あずさ
文:小松宏子、食べログマガジン編集部