ほかにも季節のおいしいものが充実

「タイラギ貝ときゅうりの酢味噌和え」800円

サクッとした食感のタイラギ貝と薄く切って塩もみしたきゅうりを、酢味噌で和える。白味噌のほの甘さもあって優しい味わい。魚介類はもちろんのこと、野菜などもその時季一番おいしいものを仕入れ、的確な調理で持ち味を引き出す。

 

中井さん

春は山菜、夏は鱧や賀茂茄子、秋はしめじなどキノコ類。その時季の京都のおいしいものを、さまざまな料理にしてくれるから、うれしくなります。

「甘鯛と豆腐の酒蒸し」1,600円には、一番出汁をはって

今や全国的にメジャーになったぐじ(甘鯛)だが、やはり京都へ行ったら注文し、ねっとりと甘い身やパリッとした皮を味わいたくなる。酒蒸しは、塩焼きとはまた違ったぐじのうま味を感じられる一品。嵯峨野の名店「森嘉」の豆腐とともに酒蒸しにすると、皮までふっくら。しっとりした身のうま味、一番出汁との相性も抜群。

ぬか漬けは必食の一品

「季節のぬか漬け」350円も、外せない一品

店主の上門さんが毎日漬けるぬか漬けも、この店の名物のひとつ。きゅうりや人参、大根などのほか、その時季の野菜が登場する。写真は夏から初秋にかけておいしい茗荷も。おろし生姜が添えられ、好みで醤油をたらして味わうのもいい。ほどよい酸味と野菜自体の甘味が相まって、日本酒にもビールにも合う。

 

中井さん

ぬか漬けは、私がこの店を訪ねてまず注文する品。同じ糠で漬けているのに、毎回風味が違います。以前、もんちゃんに「今日は人参のぬか漬けはないの?」と聞いたところ「いつも仕入れているおじいちゃんのところのがなくて」と。その人参でなければ、やさしい甘味のぬか漬けにならないそうで。野菜ひとつも吟味して仕入れる。料理人魂ですね。

定番のぬか漬けやおでんのほか、黒板に書かれた日替わりの一品料理も

1階はカウンターとテーブルで9名、2階はテーブル6名とキャパが少ない店。京都旅の予定が決まったらすぐ予約をするのがおすすめ。初めてならば、造りや和え物、天ぷらなどその日の料理5品、6,000円のコースもあるので、お試しを。

わかりづらい場所を探しながらたどり着くのも、旅の楽しみ。おいしいものに巡り合うために、京都の路地をあっちへ行ったり、こっちに行ったり。そんな迷いも、きっと京都の思い出になる。

※価格は税込、2023年7月現在のもの。

撮影:高嶋克郎
文:中井シノブ