教えてくれる人

マッキー牧元

株式会社味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチ、エスニック、スイーツに居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ・テレビ出演。とんかつブームの火付役とも言える「東京とんかつ会議」のメンバー。テレビ、雑誌などでもとんかつ関連の企画に多数出演。

青森でマッキー牧元さんの心を打った2軒とは?

ミートプラザ尾形

青森で馬肉を食べるなら「五戸町」へ。知る人ぞ知る「ミートプラザ尾形」は、同建物内に精肉店も併設している、いわば“馬肉”のスペシャリストの店なのだ。

この店の名物は「義経鍋」。マッキー牧元さん流のツウな食べ方をご紹介していこう!

店に入った瞬間、馬にとり囲まれた。
ここは五戸の「尾形精肉店」である。

普通の精肉店と同じように、生肉を陳列したガラスケースがあるのだが、そのほとんどが馬肉なのであった。

牛や豚、鶏もある。だが日本中の精肉店で、こんなにも牛や豚、鶏肉が、肩身を狭くしている店はない。

馬ロース、ヒレ、刺身用ロースとヒレ、こうね、馬ホルモン、馬内臓、馬筋、馬中肉、馬切り出しに馬ハンバーグが正面で堂々と売られ、他の肉は隅っこに追いやられている。

五戸はかつて、軍馬として名を馳せた、南部馬の生産地であった。戦争の武器の近代化によって軍馬の需要が減り、余剰飼育された馬を食べ始めるようになったのだという。

純血種の南部馬は絶滅したというが、食べ過ぎちゃったのかな。

そんな青森馬食文化を代表するのが、五戸の「尾形精肉店」であり、2階にはレストラン「ミートプラザ尾形」も併設されている。

名物は「義経鍋」だという。円形で中央が盛り上がり、淵にくぼみがあるジンギスカン鍋に似た鉄製鍋で、馬肉を焼いていく。

ジンギスカン鍋と同様に兜のような形をしているが、周囲で焼けるようになっていて、中央に小鍋が併設された、変わった形をしている。小鍋で野菜や豆腐を炊き、周囲で肉を焼くというのが作法らしい。

「義経鍋(1人前)」2,860円

さらに優れているのが、外に向かって傾斜がついている部分の縁に、小さな脂だまりが併設されていることにある。つまりここに、馬脂が次第に溜まっていくわけだ。

これは素晴らしい。

なぜなら、脂が溜まったここに、生肉をどぶんとつけてから焼く、ネギを突っ込んでコンフィにするといった遊びができるからである。