塩麹、甘酒、味噌玉……etc. 昨年に引き続き、健康志向から発酵食品に関心が高まっている。もともと豊かな発酵文化を誇る日本。昔からの食文化をうまくとりいれおいしいメニューとして提供している、ヘルシーで個性的な発酵食専門のお店を数回にわけてお届け。冬から春へ、季節の変わり目とともに体調を崩しがちなこの季節に訪れてみて。

Vol. 1 京都・嵐山 「発酵食堂 カモシカ」

おいしい発酵食をもっと身近に

地元の人はもちろん、旅行者にも人気なのが、京都 嵯峨嵐山にある発酵食専門のカフェ&レストラン「発酵食堂 カモシカ」。8種の発酵食が食べられる定食や、魚醤のラーメンに自家製の甘酒、見た目も愛らしいスイーツなど、メニューの豊富さと、そのおいしさが評判のお店だ。

ほっと和む店内。カウンター席もあるので、ひとりでも気軽に立ち寄りやすい。

 

 

もともと医療への関心が高かった、店長の関めぐみさん。スウェーデンのヨーテボリー大学で政治経済を学び、その後日本で医療マネジメントの修士号を取得。医療のルーツを探りにギリシャへも留学、医療に特化したコンサルティング会社で活躍するなど、華々しい経歴を持つ。そんな関さんが発酵食へと大きく舵を切るきっかけとなったのが出産のとき。産院に選んだ愛知県岡崎にある「吉村医院」でのできごとだったそう。

命は命で元気になるということを、発酵食を通じて伝えたい

産院で待っていたのは、薪割りをしてご飯を炊く、野菜を育てるなど、人が生きるために必要な“食の営み”を再認識する原体験。「医療に関するさまざまな現場にふれてきましたが、結局は食が人の体を、命を作るんだなと、気がつきました。食こそ生きる営みで、その食の主導権を自分が握ることで、生きる自信がわいてくる。生きていく術を身につけることの大切さを学びました」

 

 

産院での食卓には、昔ながらの暮らしの知恵が生かされた発酵料理が並んだ。「日々の食事から味噌、梅干しなどいろいろなものを手づくりするようになり、台所でつくれるものがどんどん増えていきました。そして、気が付けば、自分が好きなものがお酒や味噌汁やキムチや納豆など発酵しているものが多く、それらを食べると調子がよくなると再認識。発酵とは、人の手の力や関わりで微生物が元気に生きて働くこと。人の“命”と微生物の“命”が食となる。発酵食を食べることは、命を生かすことだと整理がつきました」

柚子胡椒、梅酒、酵素ジュース、みかん酢など、自家製の発酵食がならぶ「かもしだな」。もちろん、料理でも使われる。

 

 

その後、東日本大震災を経て、発酵食堂をオープンすることを決意。場所は、生まれ育った京都に。古いものと新しいものが混在していて、ひとつのものを極めることを許される環境があるこの町が、目指すコンセプトにぴったりだと思ったとか。

おいしい発酵食をパズルのようにバランスよく組み合わせて

メニューは、関さんをはじめスタッフが「好きなもの」「本当においしいと思えるもの」を盛り込む。ピクルスの酸味や納豆のにおいなど、発酵食は味やにおいがはっきりしているものが多い。それらの個性を生かしつつ、パズルのようにバランスよく組み合わせる。大変だけどやりがいがあるし、妥協したくないと言う。

化学肥料を使わないお米や、昔ながらの製法で作られた塩、地産の野菜など、安心で安全な食材を使用。それらがバランス良く合わさった、看板メニューの「発酵8種定食」は1,300円。ご飯に味噌汁、へしこ、麹納豆の基本に加え、季節によって旬の野菜や漬物がかわる。定食のほか、魚醤のラーメン、甘酒パフェシリーズなど、シーズンごとに登場するセレクトメニューも人気。

 

バレンタインの時期におすすめしたいのが「4種の発酵チョコタルト」2,000円。言わずもがな、チョコも発酵食。天然酵母を使ったタルト生地は奥行きのある味わいと風味で大人でも満足できる味わい。みりんかす、ブルーチーズ、ラムレーズン、発酵バターと発酵にちなんだ4種がセットに。こちらは発酵食堂カモシカのウェブサイトからも購入できる。

 

「発酵物」である漆を使った食器、エプロンや暖簾は、漆同様、縄文以前から日本人が慣れ親しんできた「麻」素材など、食以外でも古から紡がれる文化を感じられるのもこちらの魅力。京都を訪れた際にはぜひ立ち寄って欲しい。