〈極上の激辛グルメ〉
食通が愛してやまない“うま辛”な逸品を紹介する「極上の激辛グルメ」。刺激的な辛さのその先にある旨みが食通の心を虜にする秘訣なのかもしれない。
今回訪れたのは、グルメライターの武智 新平さんが教えてくれた、西麻布の「ホルモン・焼肉 8 hachi」。楽しみ方無限大!の「青唐辛子」をご紹介。
教えてくれる人
武智 新平
1970年生まれ。食雑誌をメインにフリーの編集&ライターとして活動中。食事では寿司、そば、カレー、洋食全般など、お酒は特に日本酒が好きで、仕事でもそれらを担当することが多い。一見でも心地よく、かつリーズナブルに楽しめる店を中心に紹介していきたい。
閑静な西麻布に位置するホルモンの名店
西麻布の交差点から1本奥に入った住宅地にもほど近い閑静なエリアに、14年前にオープンした「8 hachi」。焼肉店といえば黒い外観が定番だった当時、白を基調とした内・外観は目を引いた。加えてブランドではなく、赤身と脂のバランスの良い国産和牛のA4ランクにこだわって仕入れる正肉。そして表面がきらめくほど鮮度抜群のホルモンを売りに、有名店や老舗がひしめく西麻布で徐々にファンを増やし、今では西麻布に「8 hachi」ありと言われるまでに。
武智さん
にぎやかで華やかなイメージのある西麻布ですが、同店は喧騒から離れた路地にあり、静かに食事できるのがいいのです。ただし、店内は別。高級店が多い西麻布でカジュアルにおいしい肉・ホルモンを堪能したいというファンたちの心地よい活気にあふれています。ぜひ、その活気の一部になってください。
弱冠27歳の若き店主の思い
店長の須藤さんはまだ27歳。手に職をつけたいと調理師学校に進学し卒業後は和食の道へと進んだが、縁あって3年前、それまであまり扱うことのなかった肉料理、それも焼肉店である同店に。「肉は部位や繊維の流れによって切り方を微妙に変えなければいけないんです。個人的には魚を捌くよりも肉を捌くほうが難しいと思っています」。一見何気なく切っているように見えるが、須藤氏のその気遣いも味わってほしい。あ、そうそう。「実は辛いものが苦手なんです」という一面も。
武智さん
とにかくいいお肉を気軽にリーズナブルに楽しんでもらいたいというだけあって、豚ホルモン1皿600円〜、牛ホルモン1皿400円〜、カルビやロースも2,000円以内で楽しませてくれます。牛ホルモンは塩か味噌の味付けで、1切れから提供してくれます。黒を基調としたシックな空間でいただくのもいいですが、気取らず飾らず、財布の中身も気にすることなく、思う存分焼肉&ホルモンを楽しんでください。
ほんのりから激辛まで。アレンジ無限大の万能な一皿はこれだ!
それはずばりサイドメニューにある。国産の青唐辛子にこだわって仕入れ、2mm程度の輪切りにし、ごま油で炒める。それを醤油と合わせて少なくとも1週間は寝かせる。そうして出来上がるのが「青唐辛子の醤油漬け」だ。
炒めることでほのかな香ばしさが生まれ、寝かせることで醤油が青唐辛子に浸透。青唐辛子の鮮烈さはそのままに辛さをおだやかにしてくれ、色々な料理に合う一品となるのだそう。焼き上がった焼肉やホルモンにのせてもいいし、スープ類に加えるのもいい。もちろん、1切れ2切れをつまみにお酒を楽しむのだってありだ。個人的なおすすめは、ご飯の上にこの青唐辛子をのせ、さらにハラミなど好きな焼肉ものせ、一気に口の中へという食べ方。噛むほどに青唐の辛みが肉や脂の旨み、米の甘みを引き立て、言葉にならないおいしさ。1皿頼むだけで、さまざまなおいしさが楽しめる万能メニューなのだ。
「脂のりの良い部位で、タレよりも塩でしょうか」(須藤さん)。さまざまな部位と合わせておいしいのだが、よりおいしく楽しむ組み合わせの目安として教えてくれたのがこのルール。さらに具体的にはということで「&塩ハラミ」「&ホルモン(小腸)」を。
焼く前から青唐辛子をのせるのではなく、好みの火入れで焼き上げたところにまずは1切れか2切れをのせてパクリ。青唐辛子の鮮烈な辛みで旨みや甘みがグッと引き立てられた肉を楽しみたい。もっと辛いのが好みであれば、今度は3切れ、さらに4切れ……と少しずつ増やすのが良いそうだ。確かに、限界を超えた辛さにしてしまうと、その後の食事が大変だものね。
武智さん
コチュジャンの甘み、旨みのある辛さも焼肉に合うけれど、青唐辛子の醤油漬けがもたらす辛さはさらにクセになるおいしさです。キリリとシャープな辛みは(何度も書いていますが)噛むほどに肉の旨み、脂の甘みをグッと引き立てる名脇役。なので、一度に口に運ぶ量には注意。辛さが立ちすぎると口に刺激が残って後の食事が台無しになることも。少しずつ使い、残ればスープに加えたり、お酒のつまみにしたりすればノープロブレムです。この一皿が皆さんの焼肉ライフを変えると言っても過言ではないと思っています。