爽快な辛さの特製ゴマダレと夏野菜が、ツルッと喉越しの良い中華麺に絡む!

東龍さんの推し麺は「花梨」の「冷やしサラダ和え麺」(3,605円)だ。ホテル開業以来夏季限定(2023年9月24日まで)で毎年登場している「冷やしそば」と「冷やし担々麺」に肩を並べる形で、新作として加わった。

 

東龍さん

ホテル中国料理の老舗で、多くのファンがいます。夏の涼麺も人気で、定番ものに加えて新作も出されるので、毎年楽しみにしています。「冷やしサラダ和え麺」は今年の新作麺です。さっぱりとしたサラダ仕立てなので、食欲がない時にも非常に食べやすいのが特徴。食欲が湧く特製ダレや、エディブルフラワーを散らした色鮮やかなプレゼンテーションも印象的です。

「冷やしサラダ和え麺」を考案したのは「花梨」で30年以上腕を振るう前菜長の河野和夫さん。元々、大久保武志料理長に「賄いで濃いタレを使った冷やし麺が食べたい」と要望を受け、濃厚なゴマダレを作り、レタスやトマトなど余っていた野菜などで作ったのが始まりだ。その味が料理長のお墨付きをもらい、色合いや食味、食感を意識して使用する食材をブラッシュアップし、今回新作としてメニュー化された。

手前が冷麺用の中華麺で、奥が温麺用の中華麺

使用するのは、指定の製麺所に特注したちぢれ麺130g。温かい麺料理に使う中華麺より太さがあり、和え麺でもタレがしっかり絡むよう縮れており、食べやすいよう麺の長さも短い。

また、麺が伸びる心配がある温麺と違い、氷水で締めて食べる冷麺は麺に硬さが残らないよう4分以上沸騰したお湯で茹でて完全に火を通す。

茹で上がったらすぐに氷水で麺を冷やし、入念に水切りを行う。この茹で加減、冷やし方、水切りがツルツル、モチモチとした喉越しの良い麺の味わいを生むという。

 

東龍さん

麺はツルツルッとした細麺で、軽やかなサラダにもぴったりなテクスチャ。のどごしがいいので、レタスやレッドオニオン、ラディッシュなどみずみずしい野菜との相性も抜群です。

ボウルに麺を移したらレタス、キュウリにクラゲ、蒸し鶏をトッピングし、特製のゴマダレをかけて全体を和える。このゴマダレは先述した「冷やしそば」で使用されるゴマダレの3〜4倍以上の白ゴマと醤油、砂糖、ネギと生姜、自家製ラー油で作られた濃厚ダレだ。

 

東龍

香ばしい濃厚な練り胡麻にラー油で風味付けをした特製ダレは、ちょっぴり刺激的で食が進む味付け。スープは細麺に軽く絡むので、しつこいという感じはありません。生の野菜のフレッシュさが際立ちます。

その後和え麺を器に移し、錦糸玉子、スライスしたレッドオニオンとラディッシュをまわりにまぶし、マイクロリーフのルッコラと青紫蘇、ラディッシュリーフを真ん中にトッピングする。さらにカットしたトマトや揚げたワンタンの皮を円形に添え、キンギョソウという黄色いエディブルフラワーを中央に配置し、再びゴマダレをまわしかけたら完成だ。

 

東龍さん

具材がとても豊富なのもうれしいところ。暑い季節の滋養に適した蒸し鶏、錦糸玉子、クラゲ、細切りしたキュウリとレタス、スライスしたレッドオニオンとラディッシュ、さらには紫蘇、ルッコラ、ラディッシュスプラウトなどの3種のハーブとトマト、香ばしい揚げたワンタンの皮をトッピングし、エディブルフラワーが添えられています。さまざまな食味と食感が体験できるので、最後まで飽きずに食べられます。野菜もたっぷり取れるのでヘルシーです。

一口目からガツンとゴマの濃厚な味わいが広がる「冷やしサラダ和え麺」は、麺と同量にも思える多彩な食材たちが口の中でさまざまなハーモニーを奏でる。最初はゴマダレの甘さが絡むツルッとモチモチ食感の麺に舌鼓を打ち、その後夏野菜のみずみずしい味わいが波打つように変化しながら口の中に広がる。蒸し鶏や揚げワンタンの食感を楽しんでいると、後から青紫蘇の香りとラディッシュリーフ由来のナチュラルな辛さ、最後に一味の利いたピリリと爽快なラー油の辛さがやってくる。暑い夏でも食欲をそそる味わいと栄養価の高さを誇り、ついつい箸が進んでしまう。

使う食材も一品一品こだわり抜き、丁寧に下ごしらえをしたものばかりだ。厚さ1cm程度とも思える立派なクラゲは貴重な中国呂泗産のものを丸ごと仕入れ厨房でカットしており、蒸し鶏は地鶏の一種であるさつま鶏を使用。さつま鶏はバラした後にネギや生姜などの塩スープに漬け込み、蒸籠で30分蒸しあげており、前菜の「よだれ鶏」と同じものが冷麺に使われている。ゴマダレに使用されているラー油も四川風ではなく、辛さはあるが油っぽさがあまりない広東風の自家製だ。

一つひとつの仕事が丁寧なのはさすがホテル中国料理の老舗。伝統に裏打ちされた技術を活かした新作冷やし麺で、涼をとりつつ英気を養いたい。

※価格はすべて税・サービス料込。

取材・文:中森りほ、食べログマガジン編集部
撮影:溝口智彦