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【流行るお店はココが違う!】
行列のできるお店や予約の取れないお店がある一方で、美味しくても、オシャレでも、なぜかいまいちと感じてしまうお店がある。味や見た目だけではない、人気店ならではの流行る理由とは?
レストラン選びで賢い選択をするために、流行る店を探し続けるマーケターの舟本 恵氏に、人気店ならではの特徴を教えてもらいましょう!
Vol.2 流行るお店のコストパフォーマンスを考える(後編)
消費者が支払った金額に対して、得た満足度の割合を意味するコストパフォーマンス(以下、コスパ)。前回の「〈流行るお店はココが違う〉敏腕マーケターが指南。人気焼肉店に見る“コスパ”とは?」では、飲食店がコスパを高めるアプローチとして、「消費者の支出を下げる(=商品価格を下げる)」と「消費者の満足度を高める」という2つの方法があるとお伝えしました。
後編では、流行るお店がどのように「商品価格を下げる」取り組みをしているのかをご紹介します。
Q.流行るお店は、どんな仕組みで商品価格を下げているの?
A.賃料を安く抑えて、商品価格を下げるという方法があります。
今、大阪では大通りの外れにある「裏なんば」や「裏天満」、「裏京橋」という、路地裏に名店が集まるエリアが注目を集めています。
路地裏の人気店は、賃料を安く抑えた分、商品価格から差し引くことで、低価格を実現しています。
Q.どうして路地裏に飲食店が出店するようになったの?
A.賃料の安いエリアが、個人経営者たちから注目を浴びるようになりました。
例えば「裏なんば」と呼ばれるエリアは、もともと難波にお店を構える道具屋や家具屋の倉庫が並ぶ場所でした。時代の変化と共に使われなくなった倉庫は、安く賃貸に出されました。
そこに目を付けた個人経営者達が飲食店を続々と出店するように。そして、今の「裏なんば」となったのです。
Q.路地裏ビジネスは成功しやすいの?
A.いいえ、容易ではありません。でも、成功するチャンスも増えています。
大通りから外れた場所でビジネスをするのは難しいことです。しかし、昨今の消費者は「コスパが高い」と聞けば、多少の路地裏ならどんどん突き進んで行くのも特徴。
ここ数年でのSNSによる情報発信力が、路地裏ビジネスの可能性を飛躍的に拡大させているのは確かです。
Q.単純な値下げと何が違うの?
A.利益を確保しつつ、商品価格が下げられるメリットがあります!
利益を確保することで、新しいメニュー開発への投資や、優秀なスタッフの採用が可能になり、消費者の満足度は高まります。
その点で、賃料を安く抑えることができれば、お店は必要な利益を確保しながら商品価格を下げることができます。反対に、利益を削ってまで商品価格を下げるという方法は、経営を短命にしかねません。
Check point! 流行る店の“ココ”が違う
Case 1「野毛ホルモンセンター」 横浜・野毛
一皿570円以下!コスパも鮮度も高いホルモン
神奈川県横浜市に野毛町というエリアがあります。2004年までは東急東横線の桜木町駅が最寄り駅でしたが、みなとみらい線の開業に伴い同駅は廃止に。
廃止後、野毛町の飲食店街では売上の減少や廃業に追い込まれる店が相次ぎましたが、賃料が下がった空き店舗に個人飲食事業者が出店。
今では若い男女や家族連れを含め、多くの利用者で賑わう飲食店街になりました。
「野毛ホルモンセンター」もそのうちの一つ。その名の通り、ホルモン焼きの名店です。盛り合わせを除く、ほぼ全てのフードメニューが570円以下(税別)。
「名物ペラペラ焼」390円(税別)
おすすめは「名物ペラペラ焼」。なんと、1人前390円(税別)です。豚のシマチョウですが、噛めば噛むほど旨みが口の中に広がります。
「極(きわみ)ホルモン」570円(税別)
鮮度が良くプリプリの「極ホルモン」570円(税別)と、ほぐれる柔らかさの「牛ハラミ」570円(税別)もおすすめです。
「牛ハラミ」570円(税別)
Case 2「焼肉にしだ」 大阪・神崎川
美しいサシに大満足!あるのは自信のあるメニューのみ
大阪の阪急電鉄神戸線、梅田駅より3駅北上したところに神崎川という駅があります。その神崎川駅から徒歩10分、長い商店街を抜けたところに「焼肉にしだ」はあります。
写真手前「バラ」980円(税別)
アクセスに優れた立地ではありませんが、そんなことは全く気にならないほどの、驚きの安さで人気です。お肉の定番メニューを6種類に絞り込むことで鮮度を維持するとともに、絶対の自信があるメニューのみで勝負することで、顧客満足度を高めています。
「ロース」980円(税別)
そして、メニューの絞り込みにより廃棄ロスを減らし、さらに商品価格を引き下げる原資に充てています(日によって、定番以外のメニューもあり)。
先代が精肉屋を営んでいたこともあり、良質なお肉を仕入れられることも大きな魅力の一つです。
「モモ」980円(税別)
コストパフォーマンスの高さは、お店と消費者が一緒に創る
今回は、お店が大通りから少し離れた場所にあることで実現されるコスパの高さをご紹介しました。消費者にとっては不便ではありますが、それが高いコスパを実現する一つの要素にもなるのです。
高いコスパはお店と消費者が一緒に創る。「駅からの距離でお店を絞り込んでいる」という方は、もう少し足を延ばしてみては如何でしょうか。