創業時から通年提供される中国古来のスタミナ冷麺「ツールー麺」

「中国古来のスタミナ冷麺(ツールー麺)」2,600円

「北京風チリソース」と同じく、「王府」のレシピを引き継ぎ、創業時からいまなお提供され続けているのが「中国古来のスタミナ冷麺(ツールー麺)」だ。中国語では「醋滷麺」と表記され、直訳すると酢で煮込んだ麺という意味になる。海老原弘康料理長によるとツールー麺の起源は定かではないそうだが、現在日本で知られているツールー麺は「王府」がルーツだという。

 

東龍さん

オープン以来、年間を通して提供されている人気のメニュー。塩味ベースのスープにお酢が適度に利いていて食欲をそそられます。食欲が湧かない時にも、これなら食べられると思う一品です。

具材となる豚ひき肉は醤油、旨味調味料をベースにした味付けで、香りのバランスを追求し自家製と市販品をブレンドした山椒油も使いながら炒める。

エビは下味として塩、卵白、片栗粉をもみ込む。素材をコーティングして旨味を逃さないようにする中国料理では一般的な漿(チャン)という調理法だ。

麺はほぐしながら茹でていく

スープは、鶏の胴ガラと脛をメインにした豚ガラで5時間とった出汁に、1割程度マルカン酢を足したもの。麺ははしづめ製麺の中太ストレート麺を、冷たいスープと合わせることを考え柔らかめに茹でている。さらに1cm程度にカットしたニラを湯通しし、スープ、ひき肉と一緒に氷水で6℃程度まで冷やす。

大きなラーメンどんぶりの中には麺が1.5玉、その上に色とりどりの具材も山盛りになった圧巻ビジュアルのツールー麺だが、料理長いわく「女性でもペロリと召し上がります」というほど箸が進む一杯だ。

 

東龍さん

スープは塩味ベースでシンプルです。旨味はたっぷりと溶け込んでいますが、脂は少なく、酸味があるので、さらっとした喉越し。ごくごくと飲めてしまいそうなほど、軽やかです。ツルッとしてやや太めのストレート麺によく絡みます。

スープは冷たすぎないちょうど良い涼やかさで、スープはじんわりと五臓六腑に染み渡る滋味。マルカン酢は角がなく丸みがあるお酢のため、ツンとした酸味ではなく後味がピュアな爽快さで、スープを完飲してしまう人もいることに納得する。

ツルッと喉越しの良い麺に、ニンニク不使用ながらも豚ひき肉とニラのスタミナ食コンビが主役となり食べ応えをもたらし、ほのかに山椒の清涼感が鼻を抜ける。プリッとしたエビもスープや豚ひき肉によく合うので、スープに浸しながらいただきたい。

 

東龍さん

プリプリッとした大海老、旨味のある豚ひき肉、香りのいいニラがたっぷりとのせられていて、見た目も賑やか。食味も食感もそれぞれ違っていて、小気味よく食べ進めることができます。麺と合わせると三者が渾然一体となって、なかなか食べ応えもあります。

さらに料理長おすすめは、途中で自家製ラー油を垂らし、味変する食べ方だ。唐辛子パウダーと鷹の爪を油で煮詰めた自家製ラー油は、鋭い辛さではなくじんわりと広がる穏やかな辛さとコクが感じられる。お好みの量のラー油を垂らし、よりスタミナ要素を高めるのも良いだろう。

長年人々に愛されてきた「新北京」の冷麺は、食欲がなくとも箸が進んでしまう実直なうまさがある。茹る暑さの夏に、英気を養う一杯として重宝するはずだ。

※価格はすべて税込。

取材・文:中森りほ、食べログマガジン編集部
撮影:佐藤潮