〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、食通が「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、フードジャーナリストの東龍さんがおすすめする「山の上ホテル」内の中国料理店「新北京」。老舗ホテルで多くの人に愛されてきた伝統の冷麺を紹介する。

教えてくれる人

東龍

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方や飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

数々の文豪に愛されてきた「山の上ホテル」の中国料理レストラン

JR御茶ノ水駅から靖国通り方面へ坂を下る途中、西側に見えてくるアールデコ様式の建物がある。1954年に開業後、川端康成や三島由紀夫、池波正太郎をはじめ数多くの文豪に愛されてきた「山の上ホテル」だ。

全35室と客室数はそう多くはないが、ホテル内には7つのレストランやバーがある。その一つが中国料理を提供する「新北京」だ。オープンは1980年。日本のホテルに中国料理店が少なかった頃、新橋の北京料理店「王府(ワンフー)」より料理を引き継ぎ(レシピを継承)、「山の上ホテル」に「北京烤鴨 新北京」として開業した。当初は赤と緑をベースに、龍の刺繍の壁紙が印象的な店内で北京の伝統料理(宮廷料理)を中心に提供してきたが、2008年3月7日に中国料理「新北京」としてリニューアル。現在は白と青で統一したスタイリッシュな装いとなり、北京料理だけでなく中国各地の特徴ある料理を提供している。

「北京風チリソース」は1〜2名用4,000円、3名以上6,000円がある。写真は1〜2名用

「新北京」のシグネチャーの一つが、「王府」時代から振る舞われている「北京風チリソース」だ。ベースのタレには一般的な四川風のエビチリに使われるケチャップと水溶き片栗粉を使わず、紹興酒、濃口醤油、マルカン酢、砂糖だけでさっぱりと仕上げている。大海老は卵と片栗粉の衣をつけて白絞油で揚げ、薬味にもネギとニンニクではなく、ショウガとニンニクを使い、さらに豆板醤ではなく粗切りの唐辛子で辛さをつけたオリジナルだ。

プリッとした食感の大エビに、モチっとした衣、この衣に特製ダレがよく絡む。醤油味がベースで辛みと甘さがありつつ、お酢で後味にキレを持たせたサラッとしたタレのため、味にパンチがあるもののくどさがない。このタレのファンは多く、花巻(中国の蒸しパン)につけて食べる人もいるという。