クライマックスは塩のパイ包みから現れる「いわて短角牛」!

この演出に拍手と歓声が!

シェフが運んできた焦げたパンのような摩訶不思議なものは塩パイ包みにした「リブロース」。ナイフで周りに切り込みを入れて開けると藁やハーブとともにいわて短角牛の塊が顔を覗かせます。

「リブロース」

「中にエシャロット、タイム、ローリエ、藁を入れて塩パイ包みにし、香りをつけながら2時間ほどゆっくり火を入れています。本日はリブロースを使っていますが、脂肪分が少ない短角牛は火入れしすぎるとパサついてしまいます。いろいろ試しましたが、保温しながら焼けるパイ包みが最適でした。さらに骨も脂もつけたままで焼くと間接的に火が入っていくので理想的な仕上がりになりました」と言うように、赤身肉のほどよい歯ごたえがありながらしっとりとやわらかい。さらにオーブンで休ませながら火を入れ、最後は炭焼きに。

最後は炭焼きで仕上げる
絶対の自信があるソース

このリブロースにはベーコンといわて短角牛のガラの2種類の出汁をベースにモリーユ茸、エシャロット、グリーンピース、イタリアンパセリでコクを出し、ビネガーで酸味をつけ、フォワグラ油でリッチに仕上げたなんとも贅沢な味わいのソースを添えています。このソースに負けない力強さと味わい深さをもついわて短角牛とのコンビネーションは記憶に残る食体験となることでしょう。

カウンターは特等席!

ひとつずつ食材が増え、華やかに仕上がっていく皿の様子を見ていると、フランス料理の醍醐味を感じます。津野シェフは食材のポテンシャルだけに頼ることなく、フランス料理に欠かせないソースに重きをおいています。

フレンチ王道のソースが光る

桜の塩漬けのソースもシャンパンのソースも、モリーユのソースもどれも本当に素晴らしい。叩き上げられた優れた技術をもとに、“おいしい”を追求した新しさを作り出す津野シェフの料理を堪能できるおまかせのコースは「スタンダード(9品前後13,200円)」と「tsumugi(11品前後16,500円)」の2種類。21時からは自家製XO醤と口直しに登場した絶品コンソメスープのラーメンなど「シェフの気まぐれアラカルト」が楽しめます。カジュアルな街並みのちょっぴり秘密めいた場所で本格的なフランス料理が堪能できる、間違いなく行きつけにしたい店の誕生です。

※価格は全て税込・サービス料別。

文:高橋綾子、食べログマガジン編集部
撮影:溝口智彦