定食王が今日も行く!

ゴロゴロビーフが口の中でホロホロとろけるビーフシチュー定食!

 

 

東京オリンピックの年に生まれた

お寿司屋さんは大衆食堂に

 

新宿駅を降りて新宿三丁目をつなぐ地下道を進むと、紀伊國屋書店の地下につながる短いエスカレーターがある。この地下街には隠れた名店が多い。奥へ進むとスパゲティー専門店の「ジンジン」。カレー専門店の「モンスナック」、焼きそばの「下町焼きそば銀ちゃん」などのお店が並ぶ。

 

 

そして創業1964年という大きな一枚の看板が目に入る。ここがカポネだ。元々は寿司屋として始まったというこの店だが、定食メニューは50種類以上に上る。11:30から22:30までぶっ通しで営業しているので、入店する時間によってさまざまな人間模様が見られるのが、この地下街なのだ。14時過ぎの遅いランチの時間帯には、近隣の百貨店の店員と思われる女性たちが、一人で黙々と定食を食べ、おそらくランチ休憩が終わるギリギリの時間まで、タバコを何本も吹かしている。後ろの席にも同様の方がもう一名。お互い会釈をしつつも、干渉せず。定食とスマホ、そしてタバコを堪能していた。百貨店の制服を着ているからこそ、こういったすべてを受け入れてくれる新宿の隠れ家は、女性の多い仕事場からの唯一のオアシスなのかもしれない。 夜になれば編集者や作家、これからゴールデン街へ飲みに行こうかといった、味のある文化人やサラリーマンたちが溢れる。入り口にあるカウンターの他に、テーブル席がいくつか、奥のソファ席と細長い店内には人生の悲喜交々が見受けられる。

 

40伝統の味、ご飯に合う!

ビーフシチュー定食!

 

50年以上続いていることもあり、実に多くの看板メニューがある。今回紹介するのは冬にぴったりのビーフシチューだ。とろとろに煮込まれた牛肉の塊がゴロゴロと入っている。口に入れるとホロホロと、繊維がほどけていく。甘みは旨味と言われた昭和の味を思わせる甘みと、どこか和風の隠し味を感じさせるシチューは、子供も喜びそうな懐かしい味がする。独特の濃厚さは、白いご飯と合わせるとぴったりだ! ぜひ、ご飯と一緒に食べてほしい。シチューの下にはスパゲッティーが隠れている(あえてパスタとは呼ばないのが、いかにも昭和っぽい)。 和食なのか洋食なのかわからないが、そこには40〜50年変わらない伝統の味がある。

 

 

ロールキャベツにポークピカタ!

昭和の洋食を余すところなく味わえる

 

この店の看板メニューは他にもある、それはロールキャベツだ。丁寧に巻かれたロールキャベツは、特にお肉自体に下味をつけてはいないが、コンソメスープでじっくりと煮込まれて、味が染みている。食べやすいようにと3つに切り分けられて、スープに浮かんでいる。ソースはケチャップというところも、このお店の素朴さを象徴している。アルタに近いという場所柄もあってか、芸能人や舞台役者さんが、テレビで紹介しているのをよく見かけた。

 

 

そして、個人的にオススメなのが、ポークピカタだ。最近ではなかなか見かけることがなくなった「ピカタ」。イタリア語や、フランス語が語源で、この店の作り方はフランス式のようだ。塩胡椒で焼いた豚のステーキに、溶き卵とパルメザンチーズを振りかけて、バターでソテーしたものだ。ドミグラスソースのようなソースがかかっており、それが溶き卵と交わることでまろやかになる。懐かしいにもほどがある、昭和洋食の絶品だ。

 

とにかくメニューが豊富で、秋の秋刀魚や、オイスターフライ、金目鯛など、いつ行っても飽きることがない。昼も夜も、老いも若きも、全て包み込んでくれる、紀伊國屋書店の地下街。ぜひ迷い込んでみてほしい新宿のオアシスだ。