【第3週のカレーとスパイス】身も心もじんわり温まる。医食同源を体現するスパイス料理店が世田谷に誕生「eatreat.ruci」(イートリート ルチ)

世田谷にアーユルヴェーダ料理のお店「eatreat.ruci」が2022年12月にオープンしました。世田谷線の松陰神社前駅と世田谷駅のちょうど間くらいに位置する、細長い三角形という難しい敷地を上手に使ったお店です。

1階

1階はカウンター席、2階はテーブル席があり、細長い角の部分にはテイクアウト用の窓が配置され、特殊な形でありながらもそれを感じさせない雰囲気の良さが印象的。

2階

メニューはベジプレートとノンベジプレートがメインで、内容は日替わり。参鶏湯もありますがこちらは2人前なので2人での注文限定とのこと。この日のベジはソイミートのロールキャベツ、ノンベジはレモンチキンカレーだったので迷わず「ノンベジプレート」1,650円を注文しました。

食前の白湯

まず白湯が出てくるのがアーユルヴェーダ的。胃を温めて料理が出てくるのを待ちます。

「ノンベジプレート」

程よく温まったところでプレートが出てきました。レモンチキンカレーはシンプルなスパイス使い。野菜の粒子を感じるグレイビーにレモンの程よい酸味とほろ苦さがアクセントとなり、体がじんわりと温まるようなカレーです。

レモンチキンカレー

カレーの他に副菜が里芋のギー炒め、蕪と赤パプリカ炒め、煮卵が付き、ライスも人参ライスという面白い組み合わせ。アーユルヴェーダ料理と言っても本格的なインド料理というわけではなく、アーユルヴェーダの思想と手法で作った創作料理というスタイルで、どれも優しいおいしさに仕上がっています。

スープは、バターナッツスープ

食後に「チャイ」400円(セット価格)もいただいたのですが、これが実に良い感じ。クローブの香りときび糖の自然な甘味でバランスが良く、これまた体の芯から温まるような味わいでした。

「チャイ」

シェフは元々TV業界で働いていた中、激務により体調を崩し、アレルギーを発症してしまったところからアーユルヴェーダの勉強を始めたそうです。飲食を通してアーユルヴェーダの思想を伝える為に新たな道に進み、フレンチのお店でも修業を積んだ後に三軒茶屋で間借りカレー店を開始。それが独立して今の店舗となったという経緯。現在も飲食店営業のみならず料理教室も継続しています。

取材時、僕の他がお客さんもスタッフさんも全員女性だったのですが、日本においてアーユルヴェーダは男性よりも女性に広く浸透しつつあるのでしょう。日本ではエステなどのイメージが強いですが元々は医療としての思想であり、医食同源の言葉があるように食べることで体調を整えるという思想も内包するものです。

ということはつまり男女問わず、食事が好きな人ほど取り入れるべき思想だとも言えるのではないでしょうか。

朝はテイクアウトでスープやチャイ、焼き菓子などがあり、アーユルヴェーダの思想で最も重要とされる昼食がメインのお店です。

1階のテイクアウトカウンター

ジャンクなものを無意識に摂ってしまいがちな現代だからこそ、古くからの思想に触れてみるのも温故知新のごとく新たな発見があるものです。難しいことは抜きにしてもカレーとチャイがおいしいということは間違いありません。プラスアルファで何だか体が癒やされるような感覚も味わえますよ。

【第4週のカレーとスパイス】ネパール料理ブームの勢い加速中! 大塚に注目の本格ネパール料理店がオープン「ラーケ」

大久保エリアに続く第二のネパールタウンとなりつつある大塚。大塚駅の南口を出てすぐにある商店街に入ると、100メートル足らずの間にネパール料理のみならず様々なカレーのお店が立ち並ぶカレー密集地帯があります。その中で新たにオープンしたのが「ラーケ」。本格的なネパール料理のお店です。

ラーケとは、ラケーとも呼ばれるネワール族の鬼のような存在。と言っても必ずしも悪い鬼ではなく、日本で言えばなまはげのような立ち位置で、お祭りの際にはラーケのお面をかぶって踊るのだそうです。

こちらのお店がある場所は以前もカレーのお店が入っていたのですが、雰囲気はかなり変わって伝統的なネパールの雰囲気と現代を融合させたような内装。ちょっとした旅気分も味わえる空間です。

ランチでもネパール料理名物ダルバートを楽しめますが、こちらのお店の本領発揮はやはり夜。ネパール料理でお酒を飲むのがおすすめのお店なのです。

「バフチョイラ」

まずは「バフチョイラ」800円と「ギディフライ」700円で乾杯。バフチョイラは水牛のスパイスマリネ的な料理。濃いめの味付けとニンニクのパンチ、ピリ辛なスパイス感でお酒が進みます。水牛は噛みごたえのある肉なのですが、だからこそ噛めば噛むほどに口の中においしさが広がっていき、長い時間そのうま味を堪能できます。

「ギディフライ」

ギディフライは羊の脳みそのスパイス炒め。インド亜大陸の料理店で羊の脳みそを出すお店も少しずつ増えてきましたが、こちらのギディはフレッシュで臭みも少なく、白子のような食感でマニアが喜ぶ逸品です。

「ピロモモ」

続いて「ピロモモ」700円と「グンドゥルックサデコ」600円。ピロモモはネパールの代表的料理の一つであるモモを揚げて辛いソースに絡めたもの。しっかりと辛いからこそ、やはりお酒が進むのです。

「グンドゥルックサデコ」

グンドゥルックサデコは発酵青菜のスパイス和え。高菜のような、キムチのような雰囲気のある味に豆のぽりぽりとした食感が良いです。

「ディドセット」

ひとしきりおつまみとお酒を楽しんで、シメにいただいたのは「ディドセット」1,500円。ディドとはネパールのそばがき的な料理。これに様々なおかずがつくワンプレート。選べるカレーはマトンとチキンにしたのですが、こちらもしっかり味でネパールの家庭料理というよりはレストラン料理的な仕上がりであり、おかずにもなればおつまみにもなる濃厚なカレー。

ディドは口どけが良く、ギーにつけて食べれば喉越しも良いクオリティの高いもの。ディドは噛まずに飲み込むものだとネパールの方から聞いたことがあり、他のお店だと飲み込むのが難しいものも少なからずありますが、確かにこのディドなら飲み込めます。

第二のネパール料理の聖地大塚においても、他の人気店に負けず劣らずクオリティの高いお店ができました。実際に店内はネパール人のお客さんがほとんどで、現地人の舌に合う本格的なおいしさだということが証明されていたと言えるでしょう。ネパール料理飲み、おすすめですよ!

【第5週のカレーとスパイス】テーマはスパイス×ワイン。あの「カルパシ」が手がける新店が下北沢に誕生「BhelPuri」(ベルプリ)

カレー好きなら誰もが知る名店「Kalpasi」。千歳船橋の本店は、前菜・メインのプレート・デザートを基本としたミニコースを提供する、予約がなかなか取れない人気店であり、下北沢の姉妹店「Curry Spice Gelateria KALPASI」は、店名の通りカレーライスとジェラートのお店。こちらは予約不可のスタイルで連日行列を作っています。その下北沢店のほぼ隣に、カルパシ第3の店舗が2022年11月オープンしました。

こちらの店名はカルパシではなく「BhelPuri(ベルプリ)」。ベルプリとはインドの屋台料理で、ポン菓子のようなものとスパイスを合わせた軽食。お店によってその形は千差万別で自由度が高い料理なのですが、ベルプリという店名でもこちらのお店はインド料理店というわけではありません。昼は南インドの定食ミールスを。夜はユーラシア料理と銘打ち、アジア料理からヨーロッパ料理まで、世界各国の様々な料理をワインと共に楽しめるお店となっています。

「ランチミールス」

「ランチミールス」1,800円はプレートの上に敷かれたバナナリーフの上にサンバル、ラッサム、ダル、メインのカレーに副菜ものる形で、千歳船橋の本店で時折メニューに登場するバナナリーフミールスも想起させます。この日のメインはチキンカレー。クローブとカルパシの香りが印象的で、やはりカルパシの系列なのだなと納得。

下北沢はカレーの街として知られているものの、レギュラーメニューとして本格的なバナナリーフミールスを出すお店は僕の知る限り他にありませんから貴重な存在です。

「ベルプリ」

ランチも良いのですがやはりこちらの本領発揮はディナータイム。店名ともなっている「ベルプリ」600円は、野菜や柿を使用したフルーティーなもの。彩りも良く、他で見たことのないようなベルプリでこの後の料理への期待が膨らみます。

「スアロンハイ」

ベルプリのシェフはタイ料理歴が長い方ということで、タイ料理から「スアロンハイ」1,900円を。牛の骨盤回り、メガネと呼ばれる部位のステーキです。自家製のカオクア(ハーブと共に炒った米粉)の風味も印象的で、マッシュポテトと合わせるのがベルプリ流。

「マトンラグーのマニケ」

〆は「マトンラグーのマニケ」1,600円。マニケと呼ばれるショートパスタにマトンのキーマカレーを合わせた、インドとイタリアの味が融合した料理なのですが、これ、とても気に入りました。マニケが小さいのでおつまみとして機能し、キーマも絶妙に絡んで食べ応えはしっかりあるので〆としても申し分ない存在感です。

ナチュラルワイン各種

それぞれの料理に合わせてペアリングする形でワインを頼めば、シェフが豊富に取り揃えたナチュラルワインから合うものをセレクトしてくれて、丁寧な説明もあります。ワインが苦手な方はぶどうジュースもこだわりの品が揃っているので安心です。

ぶどうジュース

メニューは時期によって変わっていくとのこと。バルともビストロとも違う「Eurasian Room」というこだわり。行く度に違った楽しみ方ができそうです。

シェフに今後の展開を聞いてみると「より多くの人にスパイスとワインの組み合わせを知ってもらえるように、ワイン生産者やインポーターとのコラボイベントも開催したいです」と語ってくれました。

ワイン好きはもちろん、お酒は飲めなくともスパイス料理好きなら、あるいは下北沢のカレーファンも含めて、2023年に大きく成長しそうな要注目のお店です。

※価格はすべて税込です。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/