握りはまぐろ赤身。まぐろはすべて、アイルランド産の本まぐろを使用している。脂ののりもほどよく、国産に負けない旨みを有している。酸味と鉄分の心地よい赤身は、やはり寿司屋の醍醐味だ。

もう一品はかまとろ。まぐろの「かま」とは首の部分の弓形の骨のことで、かまとろはその骨についている脂がのった部位。中トロのような舌触りでとても濃厚な旨みがある。1尾のまぐろから2つしか取れない、希少部位でもある。

終盤のハイライトは手巻きずし「玉ねぎトロ」。玉ねぎをあられに切ったものとまぐろの相性がとてもいいので、それを軸に、季節によってわさびの千切りや大葉の千切りを入れるなど、そのときどきのアレンジで食べさせてくれる。

しゃりは赤酢に白酢と黒酢をブレンドした寿司酢を切りこんだ、ねたを引き立てる味わい。握りはしっかりしているが、はらりと口にほどけ、心地よい。ねたによって煮切りの量を調節したり、握る圧を変えたり、寿司飯の温度を調節したりと、細かな心遣いにも感心する。

例えば、まぐろは口の中でとろっとさせるためにも、温かめのしゃりに合わせ、逆に光りものには温度を下げたしゃりで握るといった具合だ。「おまかせ寿司 すしのすけ」が、決してリーズナブルなことだけが魅力の寿司店ではないことがよくわかるだろう。

お酒もリーズナブルな価格設定で存分に楽しめる

そしてうれしいことに、飲み物もリーズナブルなうえに、品ぞろえも豊富。ビールやハイボールなどは600円。グラスワインは900円~。そして「モエ・エ・シャンドン」がボトルで6,000円と、百貨店などで購入するのと変わらない。グラスで1,200円とは、シャンパンが一番安く飲める店と言えるかもしれない。というわけで、お酒で高くなってしまうのではという心配は無用。お腹いっぱい食べて存分にお酒も楽しめる、幸せな店なのである。

余談だが、江見氏は来年早々にも2号店を出すそうだ。なるほど、これだけ人気ならと思ったが、場所はなんとマレーシア。大学時代から海外で仕事がしたいと漠然と思っていて、飲食業の中では一番の武器になるのが寿司と考えたというのだから、戦略家だ。「すしのすけ」というネーミングも覚えやすくて、カジュアル感のある店名として考えたのだそうだ。たしかに一度聞いたら絶対に忘れない、実に的確な判断だ。早々の成功もそうしたビジネスの手腕があってのことだろう。

予約が取りにくいのだけが難点だが、毎月1日に翌月の予約を取るというシステム。頑張って予約を取って、訪れてみようではないか。

※価格はすべて税込。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

撮影:大西尚明
文:小松宏子、食べログマガジン編集部