〈今夜の自腹飯〉

写真:お店から

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

幅広いシーンで使える人形町のヒップな酒場「チュウノジョウ」

日本橋人形町エリアというと、老舗の料理店が軒を連ねるイメージがあるが、近年酒好きの心をくすぐる気さくな雰囲気の飲食店の出店が相次いでいる。2022年10月26日にオープンした「チュウノジョウ」もその一軒だろう。予算1人当たり3,500円程度で、気の利いた料理や酒が味わえる。

場所は水天宮前駅と人形町駅の間、どちらの駅からも徒歩1分ほどで着く路地裏だ。元々穴子屋だった建物の趣を残しつつ、壁面に遊び心を感じるイラストを描き、モルタル調のモダンな雰囲気に仕立てた。

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店内は1階と2階で造りが異なる。1階はサクッとお酒や餃子を味わえる立ち席、2階はゆっくりと食事や会話を楽しめるテーブル席と、利用シーンに合わせて選べるようになっている。

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同店でメインシェフを務めるのが、佐賀県唐津市出身の重松大樹氏だ。元々料理家の家系に生まれたこともあり上京後はフランス料理「クイーン・アリス」でデザート開発の責任者を務め、近年では三軒茶屋立ち飲みバル「富士屋本店」、渋谷「富士屋本店ダイニングバー」の立ち上げ、店長兼料理長を務め、その後「ドゥ マ ゴ パリ 渋谷本店」の料理長を務めた人物だ。

メインシェフの重松大樹氏

オーセンティックなフレンチに精通しながら正統派ビストロ、バル、カフェ、カジュアル業態など枠にとらわれない新しいジャンルにもチャレンジし続ける重松氏。そんな彼が今回新たに挑戦したのが、餃子だ。

一過性の流行ではなく、ロングセラーを目指したしみじみおいしい餃子

「餃子(ニンニクあり)」390円
「餃子(ニンニクあり)」390円   写真:お店から

リサーチのため、1年以上かけて日本全国の餃子を食べ歩いた重松氏。結果、辿り着いたのは目立つだけのベストセラーではなく10年、100年愛されるロングセラーとなるような餃子だった。

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「チュウノジョウ」の代表格となる餃子は全て自家製。筋肉内脂肪が良質でやわらかく、細かく挽いてもジューシーさが残る国産豚を7、高原で育った甘みが溢れる国産キャベツなどの野菜を3の比率で混ぜ合わせている。

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餃子の皮は独自開発で、国産小麦粉にこだわり製造。チュウノジョウ自慢の餃子餡のうま味を引き出しつつも、餡の味わいに負けないように作られている。

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羽根がつかない程度の適度な粉打ちで仕上げた餃子は、強火で一気に焼き上げる。香りが強いゴマ油やコッテリとした植物性油ではなく、焼き上がりがくどくならないよう米油を使用するのがポイントだ。

パリッとした餃子の香ばしさがありつつも、ツルッとした舌触りにもちっとした食感の餃子の皮。そして餃子を口に含んだときに肉汁の濃厚なうま味が感じられ、後味はスッキリまとまる。口の中に残る甘みの正体は、隠し味の紹興酒とキャベツによるものだ。1個20g程度のため、一口でも頬張れるサイズ感なのもうれしい。テーブルに置いてある花椒(ホアジャオ)がしっかり利いた自家製ラー油も、お好みで合わせたい。

「合法ハーブ餃子」のほか「餃キム」「二郎餃子」各550円もある
「合法ハーブ餃子」のほか「餃キム」「二郎餃子」各550円もある   写真:お店から

餃子はニンニクありのもの(390円)と、ニンニクなしのもの(390円)のほか、タレに漬け込んだ大葉を使った「合法ハーブ餃子」550円などもある。こちらは味がしっかりついているので、そのまま食べるのがおすすめだ。

生から仕込む10食限定のアジフライや、四川よだれ鶏、〆カレーも見逃せない

餃子が売りのお店ながら、店頭の看板やメニュー表で餃子を前面に出していない。一品メニューも餃子と同じくらい手をかけているからだ。

「生アジフライ」650円
「生アジフライ」650円   写真:お店から

例えば「生アジフライ」は、メニュー名の通り九州産の生アジをお店でさばき、タルタルも手作りするという専門店さながらの手間のかけよう。仕込みにかけられる時間にも制約があるため、1日限定10食しか提供されない。生から作るアジフライはカリッと揚がった衣の中から、ふっくらとしていてジューシーさを保ったアジの身が現れ、適度な酸味がありみずみずしく軽やかな味わいのタルタルソースが優しく寄り添う。

「四川よだれ鶏」550円
「四川よだれ鶏」550円   写真:お店から

餃子に合わせ、中華風の一品メニューもそろう。「四川よだれ鶏」は辛さをそこまで強くせず、黒酢と豆豉(トウチ)を利かせ、後味にほんのりと酸味と香ばしい苦みが感じられる。

「インディアンカレー」650円のほか「インディアンカレーうどん」550円もある 撮影:中森りほ

〆カレーも強いこだわりを持つ。「インディアンカレー」という名前や、添えてあるキャベツの浅漬けからもわかる通り、大阪で人気を誇る「インデアンカレー」にインスパイアされたカレーだ。桃などのフルーツをたっぷりと時間をかけて煮込んだカレールーは、甘くこっくりとした口当たりながら、後からピリッと唐辛子や胡椒由来のスパイシーさが舌を突く。お酒を飲んだ後でも重たすぎない、適度なとろみの付け方に配慮を感じる。

大衆酒場定番のシャリキンレモンサワーや日本酒、ナチュラルワインもラインアップ

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気になるドリンクの方は、大衆酒場的な飲み物から、クラフトビール、ナチュラルワインもそろえトレンドも押さえる。「チュウノジョウレモンサワー(ちょい甘)」は自家製のレモンシロップに凍らせたシャーベット状の焼酎、シャリキンを合わせた同店の看板ドリンク。同店ではフローズンマシンを使い、シャリキンを作っている。

日常使いできる気取らない価格帯ながら、丁寧で真っ当な料理と酒が楽しめるチュウノジョウ。人形町の路地裏にまた新たな賑わいが生まれそうだ。

※価格はすべて税込

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材:中森りほ

文:中森りほ、食べログマガジン編集部