ここ数年はカレーと言うとスパイスカレーが主流となっており、新しいお店もスパイスカレーのお店の割合が高くなっています。そんな今だからこそ、一度原点に立ち返って本格的な現地料理を味わってみてほしいものです。スパイスカレーも様々な国の料理の影響を受けて日本なりに解釈し発展させたもの。ということは、それに影響を与えた現地料理への理解が深まれば、スパイスカレーに対する理解も当然深まるのです。よりカレーへの理解を深めるためにも、現地料理はおすすめという以上に必須です。

そんなわけで今月は現地の料理を味わえるお店を4店舗ご紹介しました。

  1. ミシュランガイドビブグルマン獲得経験のある北インド料理店
  2. ポップな雰囲気の中で気軽に楽しめる本格的タイ料理店
  3. 激戦区に誕生したアミューズメント性もあるネパール料理店
  4. まだまだマニアックなジャンルながら地域にとけこむ西インド料理店

以上です。スパイスカレー好きな方にはスパイスカレーばかり食べていて他のカレーを食べることが少ない人が多いように感じています。そんな方々にこそ食べてほしい現地料理。新たな魅力と、カレーに対する新たな楽しさが感じられると思います。

【第1週のカレーとスパイス】混む前に行っておきたい! 人気北インド料理店が銀座内に移転オープン「オールドデリー」

銀座MELSAの人気インド料理店「オールドデリー」がMELSAの閉店に伴い、同じく銀座5丁目にあるEXITMELSAの7階へと移転しました。

オールドデリーと言えばミシュランビブグルマンにも選出されたことのあるインド料理店なのですが、高級インド料理店のように見えて、実は庶民派のインドネパール系のお店のような日本人向けアレンジメニューも少なからず存在する面白いお店です。

本格的な高級インド料理店となるとインドにない料理は出さないことが多いですし、逆に街中でよく見かけるインドネパール系の料理は本物のインド料理かと問われるとうなずくことはできないのですが、独自の進化や工夫があって面白いと感じることもあり、それぞれに良さがあり、基本的にその両者が共存することは稀です。そしてそれが共存する文字通り稀有な例がオールドデリーなのです。

新しい店内はなかなかの広さで落ち着きがありながらもインドを感じさせる内装。

メニューを見るとやはり面白いですね。「ドライなトリヒキ」など、高級インド料理店では見かけないものもあって興味津々となりながら、まずは「ササチキ」520円からスタート。

「ササチキ」

これはわかりやすく言うなら鶏ササミのタンドリーチキン。略してササチキというわけです。ササミというと硬いイメージを持っている方もいるでしょうが、こちらのササチキはふんわりとした食感で実においしい。通常のタンドリーチキンやチキンティッカよりも肉が淡白な分、スパイス感が立っていて一緒にお酒を飲みたくなる一品です。

「マトンローガンジョシュ」(写真手前)と「ベジタブルピラオ」(写真奥)

メインのカレーは「マトンローガンジョシュ」1,520円にしました。合わせる主食はいつもならロティを選ぶところですが、せっかくのオールドデリーですから変化球で「ベジタブルピラオ」680円をセレクト。

ローガンジョシュとはカシミール地方の名物料理であり、ローガンが「油」、ジョシュは「煮る」という意味を持つカレーです。名前から想像すると脂っこいものが浮かびますし、実際にインド現地でローガンジョシュを食べると日本人の味覚からすると驚くべき油分のものが出てくることもあるのですが、こちらのお店は確かに油は浮いている部分があるものの、全体的にはトマトのフレッシュな酸味が味を引き締めて爽やかな仕上がりとなっています。

マトン自体もよく煮込まれていて柔らかく、北インド料理ならではの良さを失わないまま上品に仕上げたものとなっています。

ベジタブルピラオはパプリカやブロッコリー、そしてナッツとクミンシードが印象的な野菜スパイス炒飯。日本米で作られており、このあたりがオールドデリー節とも言えるもの。

ベジタブルピラオだけ食べると塩気が少ないので物足りなさもあるのですが、そもそもこれはカレーと合わせてその真価を発揮するタイプの料理ですから、ローガンジョシュをかけて食べましょう。上品なローガンジョシュにクミンシードのパンチが加わり、野菜の食感で変化も出て、スペシャルなカレー&炒飯となるのです。

「マサラチャイ」

食後には「マサラチャイ」490円も忘れずに。こちらのマサラチャイは生姜やブラックペッパーが利いており、生姜辛さと胡椒辛さがあるのですが、それとチャイの甘味が絶妙にマッチし、食後の満足感を確実に上げてくれるものとなっています。

移転前のお店は人気店でいつ行っても人が多かったのですが、取材時はまだ移転したという事実があまり認知されていないせいか空いていました。言ってみれば気軽に入れるミシュランガイド掲載店です。

いずれ認知度が上がればまた混み合うこと間違いなしですから、ゆっくり楽しめる今のうちに是非行ってみてください。

【第2週のカレーとスパイス】1,000円あれば大満足のランチにありつける! タイ料理好きなら知っておきたい新店がオープン「バンコック ポニー食堂 岩本町店」

東京各地に「バンコック〇〇食堂」という名前で展開しているタイ料理店があるのをご存じでしょうか? 〇〇の中身は色々で、ピーナッツだったりコスモだったりポニーだったり。かつてはラララというお店もありました。そんな中で最近はポニーが増えてきているのですが、岩本町駅近くに新たな「バンコック ポニー食堂」が2022年9月に誕生しました。

こちらの系列のお店はどこへ行ってもポップな雰囲気とタイ現地の空気感が共存しており、昨今流行のネオ大衆酒場に近い部分も感じます。今時の若者にはレトロがブームとなっていますし、中年以上の年代には懐かしさも感じる雰囲気のお店作りは老若男女に受け入れられるのではないでしょうか。

まずはランチタイムに訪問。「カオソイ」900円に「ミニグリーンカレー」100円をつけて注文。

「カオソイ」と「ミニグリーンカレー」

カオソイとは、タイはチェンマイの名物料理で、茹で麺と揚げ麺どちらも入ったココナッツカレーラーメンのこと。ココナッツの甘味とスパイスの辛味とハーブの香りの三位一体。レモンを搾れば酸味も加わって味が引き締まり、おいしさの輪郭が際立ちます。

ミニグリーンカレーも大きくカットされたチキンや茄子がごろごろと入っていて、ミニサイズながら食べごたえがあります。

どちらも現地の味にかなり近い本格的なおいしさで、辛さのみ日本人に合わせて多少控えめになっているというバランス感です。辛さが足りないという方は卓上にある調味料で調節可能なので、マニアもライトなタイ料理好きもどちらのニーズにも応えられる形となっています。このバランス感が素晴らしいですね。

とにかく本格的なおいしさのカオソイとミニグリーンカレーを合わせて1,000円という価格は激安で驚くばかり。満足度の高すぎるランチです。後日ディナータイムにもうかがいました。夜はタイ料理をつまみにお酒を飲めるお店となります。

「パットマラクン」

「パットマラクン」890円はクンパッポンカリー(海老の卵カレー炒め)のゴーヤ入りと説明すればわかりやすいでしょうか。ふわふわ卵にぷりぷり海老、そこにゴーヤの食感と苦味が加わって最高のおつまみです。

通常日本人向けにローカライズされたタイ料理となると、マニアからするとその魅力は半減してしまうことが少なくないのですが、こちらのお店はローカライズの仕方が見事であり、最も重要な部分はオーセンティックなスタイルと変えず、辛さなどの調節可能な部分をマニア以外でも楽しめるように工夫しているという狙いが見事であり、ズバッとそれがハマっているからこそ、各地で人気が出て店舗数が増えてきているのでしょう。

昼も夜も使えるタイ料理店。テイクアウトも対応しているので様々なシーンで利用可能です。店員さんはタイの方がほとんどですが、タイは微笑みの国と呼ばれるだけあってみなさん笑顔が素敵で気さくな方々ですし、日本語もお上手なので安心です。秋葉原駅からも神田駅からも徒歩圏内のエリア。タイ料理好きな方は要チェックですよ!