【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2022年9月を振り返る

夏から秋へ移り変わる季節の変わり目。台風による気圧の乱高下で体調の維持も大変ですが、健康的に食べて寝ることが健康の基本です。特にカレーのスパイスは漢方薬として使われているものも多く含まれるので、日常的に食していきたいものです。そんな9月に紹介したのは以下の5店舗。

1. 下町にできた新しい感覚のネパール料理店

2. 神奈川で話題の南インド料理店が蒲田に支店を開店

3. カレー激戦区神田に登場したスパイスカレースタンド

4. スリランカ料理好きにおすすめのガツンとくるスリランカカレープレート

5. 名店の跡地に誕生した間借りカレーからの独立店

今後に期待できるお店ばかりですよ!

【第1週のカレーとスパイス】ネパール料理初心者も入りやすい! カフェ的空間が落ち着くネパール料理店が根津にオープン「CHYANGRA」

一昔前は本格的なネパール料理を味わえるお店は数えるほどしかありませんでしたが、今は大久保エリアを中心に数えきれない程に増えました。ネパール料理がマニアの間で認知されたことにより、それまでインド料理を元に日本人客にわかりやすく受けるようにアレンジした料理を出していたインドネパール系、通称インネパと呼ばれるお店でも、本格的なネパール料理をメニューに加えるところが増えたり、あるいは最初から本格的なネパール料理で勝負する新店舗も出てきたりしています。

今回ご紹介する根津駅近くにある「CHYANGRA」は本格的なネパール料理をわかりやすくアレンジしたのではなく、それを現代版にブラッシュアップさせたような料理を提供しているお店です。

こちらのお店は等々力にある「イエティ ロースタリー コーヒー」というネパールコーヒーをメインとしたカフェの姉妹店。だからこその洗練された雰囲気であり、6月にオープンしたばかりで新しく清潔感もあるので、現地感ただようお店を入りにくいと感じる方にもおすすめです。

「ダルバート」

看板料理はマルシというネパールの赤米をブレンドしたライスでいただく「ダルバート」1,650円。メインのカレーをチキンかマトンから選択、ダル(豆スープ)とバート(ライス)、サグ(青菜炒め)、タルカリ(野菜のスパイス炒め)、アチャール(スパイス漬物)、生野菜、ゴルベラコアチャール(ネパールのトマトチャツネ)、さらにドリンクと、シクルニというフレッシュベリーソースのかかったヨーグルトアイスもついてくる豪華版です。

それぞれ味も洗練されており、ネパール料理のワイルドな部分をそぎ落として上品に仕上げられたダルバート。カレーはマトンを選択したのですが、実に上品なカシコマス。ダルもカレーも上品で、ともすると一味足りないと感じる方もいるかもしれませんが、ダルバートとは混ぜて食べるもの。ご飯にダルやカレーをかけ、タルカリやサグやゴルベラコアチャールを混ぜてみてください。実にちょうどいい塩梅となります。

マルシ、バスマティライス、日本米をブレンドしたご飯の良さが活きるバランスの上質なダルバートでした。デザートのシクルニも甘さ控えめで爽やかな酸味のアイス。上品なダルバートの後のデザートとして完璧です。

「シクルニ」

ダルバートだけで満足しても良いのですが、ここではネパール料理をつまみにお酒を飲むのもおすすめ。「ネパールダークラム」650円を頼んだらサービスでおつまみもついてきました。これはうれしい。

「ネパールダークラム」とサービスのおつまみ
「ポークリブ」

これに合わせたのは「ポークリブ」750円。豚軟骨をネパール料理のセクワ的な味付けで炒めたもの。軟骨のコリコリとした食感にシンプルなスパイス感がとても合い、お酒が進みます。

「ポレコマチャ」

そして「ポレコマチャ」1,250円という珍しい料理も。わかりやすく言えばネパール風サーモンソテー。塩とスパイスでシンプルにグリルされたサーモンに、サグやじゃがいものスパイス炒めが添えられていて、そのまま食べても良いですしゴルベラコアチャールをサーモンにかけて食べてみれば、よりネパール感が強まって楽しい一品。これとご飯を頼んでディナーとするのも良さそうです。

店内では姉妹店のコーヒーも購入可

どれも味付け的にはオーセンティックでありつつ、盛り付けや見た目が今時という趣。他の料理とフュージョンさせたモダンネパールというジャンルも少しずつ増えてきていますが、こちらは他とフュージョンさせているわけではないのでモダンネパールと言うよりはネパールのモダンと言った方がより正しいでしょう。

客層もネパール現地の方のみならず日本人の若いカップルも見受けられました。ネパール人店員さんが若いカップルに「ダルバート食べたことありますか?」と質問すると「はい!」と答える二人を見て、時代は変わりつつあるのだなとしみじみ。是非デートでも使ってほしいお店です。

【第2週のカレーとスパイス】本格南インド料理にありつける! ビリヤニの名店が蒲田に姉妹店をオープン「ルシ インドビリヤニ 蒲田店」

神奈川・十日市場町にある知る人ぞ知る隠れた名店「ルシ インドビリヤニ」が、東京・蒲田駅のすぐ近くに姉妹店をオープンさせました。本店はコロナ禍が本格化し始めた2020年4月にオープン。その後飲食店としては大変な時代が続いている中でも着々とファンを増やし、遂に2022年8月に都内に店舗を構えたというわけです。素晴らしいことですね。

駅前の雑居ビルの5階にお店はあります。店内は南インドを感じさせる壁画やポスターが飾られ、明るい雰囲気で居心地が良いです。

店名の通りビリヤニから、ミールス、ドーサまで様々な南インド料理がいただけます。まずは「ペッパーラッサム」350円から。

「ペッパーラッサム」

ラッサムとは南インド料理ではおなじみの酸っぱ辛いスープです。通常はミールスなど定食の中の一つとしてあるものですが、個人的にこのラッサムが好きなので単品で頼み、食前のスープとして飲みました。こちらのラッサムはブラックペッパーの辛さがくっきりと際立ち、酸味も程よく、これを飲めば食欲に火がつくスープであり、スターターとしても優れたものでした。

「サンバルワダ」

続いて「サンバルワダ」750円を。ワダとは南インドの甘くないドーナツ。サンバルとは南インドの野菜カレーで、和食に例えるなら味噌汁的な立ち位置にあるものです。そのサンバルにワダを浸したものがサンバルワダなわけですが、このワダがとにかくフワッフワ。サクッとしたワダもあればしっかりした生地のワダもあり、お店によって違うのですがこちらのワダのふわふわ具合には驚きました。

それによく合うサンバル。ほっくりした食感の優しい野菜カレー。これ一品でも満足できそうなくらいにレベルの高いものだったので、こちらに来たらサンバルワダは是非食べてみてください。

「チキン65ビリヤニ」

これで終わっても良いくらいの満足感だったのですが、せっかく店名にビリヤニを冠しているので何かビリヤニをと思い、珍しい「チキン65ビリヤニ」1,600円で締めくくり。チキン65とは南インドのスパイシー唐揚げ的な料理。何故65なのかというとこれが諸説ありすぎて何が本当なのかわからないのですが、それを調べてみるとインドの面白い部分が色々と見えてくるので興味ある方は是非調べてみてください。

いずれにしてもこのチキン65が具材となったビリヤニは初めて食べました。ビリヤニと渾然一体になっているわけではなく、ビリヤニにチキン65がのせられているという形でしたがビリヤニ自体が香り高く、全体的にグレイビーが均一に混ざり合っていて何もつけずとも完成された味です。これにライタをかけてみれば爽やかさが増し、チキン65と一緒に食べてみれば満足感が増すという形。面白いです。

他にも色々と気になる料理がありましたがここでお腹いっぱいになってしまいました。店内は南インド系と思しきお客さんも多く、現地の方が足を運ぶお店だと言えます。実際に日本人向けの味とはなっておらず、現地で食べる味でした。本格的な南インド料理を味わってみたい方におすすめのお店です。

蒲田と言うとネパール系のお店が多い印象ですが、こうやって様々な選択肢が増えていくのは喜ばしいことですね。

【第3週のカレーとスパイス】カレーのトッピングにキーマカレー?! 神田に注目のスパイスカレースタンドがオープン「スパイスカレーダルマ」

毎年カレーグランプリも開催され、カレー激戦区としても知られる神田の街で、新しいカレースタンドが9月7日に開店しました。その名は「スパイスカレーダルマ」。

だるまというと縁起物の置物を想像される方も少なくないでしょうが、そのモデルにもなったと言われる達磨大師は中国禅宗の開祖とされるインド人仏教僧。インドと言えばカレー。色々なことを想像させる素敵な店名ですね。

場所はカレー激戦区神田の中においても特に飲食店激戦区である西口商店街にあります。開店前から気になっていたので開店日の開店時刻少し前に行ったのですが、雨の中既に行列ができていて神田のカレーファンの注目を集めているお店だということがわかりました。

しばし待って定刻に開店。券売機で食券を購入して席に着くスタイルなので予めメニューを見て決めておくとスムーズです。

カレーは主に4種。チキンカレー、ポークカレー、海老カレー、豆&野菜カレー。これにトッピングとして、バジル、梅、パクチーの3種類のキーマカレーがあります。

神田と言えば昔ながらの欧風カレー的なお店が多く、とんかつなどの揚げ物をトッピングしていくスタイルのお店をよく見かけますが、カレーのトッピングにキーマを加えるというのは新しいですね。お店自体もカウンターのみでいわゆるカレースタンドなのですが、内装も今時感があり、新しい形のカレースタンドだと言えるでしょう。ちなみに辛さは選べません。それぞれのカレーに合った辛さをこだわって作っているということです。

「ポーク+海老」に「キーマカレー梅」をトッピング

カレーはあいがけも可能なので、「ポーク+海老」1,280円に「キーマカレー梅」200円をトッピングして注文しました。

ポークはシャバッとしたグレイビーで予想以上にしっかりと辛さがあります。辛いだけではなく香りもあってそのバランスが良く、スパイス感は非常にシンプルでありつつも、だからこそ素材の味が活きていると感じるカレーでおいしいです。

海老はココナッツミルクの自然な甘みが特徴のカレーなのですが、ココナッツが突出しているわけではないので苦手な方でもいけるのではないかと思える着地点。何より海老自体が大きく、噛めば食感良く海老のうま味と甘味が口内に広がります。キーマは鶏ひき肉のジューシーな仕上がり。梅の爽やかな酸味が程よく、単体で食べて良し、他のカレーと混ぜて良しの名脇役。これをトッピングしてあるのは確固たる狙いがあるのだなと納得しました。

どのカレーもバランスが良く、それを受け止めるご飯も山形県産の雪若丸を使ったターメリックライス。今回はあいがけにキーマということで結果的に3種盛りとしたのですが、重すぎることのない適度な食後感。それでいて気づけばじんわりと汗をかいており、体がスパイスによって活性化していることがわかりました。

また、副菜としてアチャール(スパイス漬物)が添えられているのですが、その中にガリのアチャールがあるのが非常に面白く、こちらのカレーやご飯との相性がとても良いと感じました。

「チキン+海老」に「バジルキーマ」をトッピング

カレーの組み合わせを変えたり、キーマを変えたりと、シンプルなメニュー構成ながら選択肢の幅は広いので通い甲斐もあります。

味にしても値段にしても非常にバランスの良いスパイスカレーです。カレーの街と呼ばれる神田にも少しずつスパイスカレーのお店が増えてきていますが、こちらは特にわかりやすいスパイスカレーであり、昔ながらのカレーが好きな方にも受け入れられそうな味です。と同時に、様々なカレーを食べているマニアにも満足できる仕上がり。そういう意味でもバランスが良いです。ここを皮切りに多店舗展開していきそうな気配もあり、それを期待させるようなお店でした。