こだわりの自家製麺と特製ソースのハーモニーが魅力
焼売や春巻きなどのおなじみの料理や、腸粉(チョンファン、米粉巻き)など日本では珍しい料理が数多く並ぶメニューを見ると、まるで現地の飲茶専門店にやってきたような錯覚に陥るが、その中でも塩沢さんの心をガッチリとつかんでいるのは「具のない焼きそば」こと、鼓油皇炒麺である。
使用しているのは自家製の細麺と特製の広東ソースのみ。豚バラ肉やキャベツなどの焼きそばには欠かせない具が何も入っていないという異色のメニューだ。
塩沢さん
ソースはおそらくオイスター。これ一皿で満足させてやろうという気概を感じさせない、脇役気質の味付け。そこがまたシメにうってつけなのです。
目黒さんに伺うと「もともと味坊集団は『日本で誰も食べたことがない、本格的な中華料理を提供する』というのがコンセプトなんです。この焼きそばは、中国の広州、いわゆる香港定番のメニューで、広東料理や点心がメインのこの店に何か麺料理をということでメニューに加えました」とのこと。
麺しか入っていないという個性満点のビジュアルに興味を引かれ、食べてみるとシンプルな味わいでおいしいということで評判になり、今や店でも人気のメニューとして愛されている。
麺をかみしめる食感がヤミツキに
繰り返すが、鼓油皇炒麺の材料は自家製の中華麺と特製の広東ソースのみ。あまりにシンプルなものだが、その中華麺は自社工場でこのメニューのためだけに作られたという特別な物。通常の焼きそばよりも細麺にしたちぢれ麺で、卵の比率も広東ソースとなじませた時に色合いが美しくなるように調整されているという。
ゆでても軟らかくならない、かみしめる感じの食感は一度食べたらヤミツキになること必至で、純粋に麺を食べたいという方にはまさに最適な一皿と言える。
塩沢さん
エッジの立った細麺。プツプツッと歯切れがいいので、シメにぴったり。
都内にいながら本場中国の味を堪能
麺の味を楽しむことにとことんこだわった鼓油皇炒麺だが、単に麺の味わいを楽しむだけではないのがこのメニュー。塩沢さんは添えてある生姜やネギ、さらに腸粉を食べ終わった後のタレを付けて味変を楽しむというが、このメニューをオーダーする客はみな、オリジナルな食べ方をしているという。
「お客様が実際にやっていた食べ方で『おいしそう』と思ったのは、チャーシューで麺を巻いたり、エビワンタンスープに浸したりする食べ方ですね。シンプルなメニューだからお客様それぞれの好みでアレンジできるのがこのメニューの楽しいところですね」と目黒さん。
都内にいながら本場中国の味がそのまま楽しめる「宝味八萬」の鼓油皇炒麺。とにかく麺を食べたいという時にこそ食べに行きたいメニューだ。