メインディッシュにまで昇華させた定番のお味噌汁
豆腐、お新香、焼き物と、和食の基本である一汁三菜をベースとしていますが、やはりお味噌汁が存在感を放ちます。こちらは築地の出汁専門店で削られたばかりの鰹節と、北海道の漁師から直接取り寄せている昆布で取った和風出汁に、有機栽培黒大豆と米麹をじっくり熟成させた「黒大豆みそ」を合わせたもの。しめじ、舞茸、えのき、なめこ、椎茸など多品目かつ大量のきのこが入っています。
各種きのこの豊かな香りと旨み成分が染み渡る、一般的なお味噌汁とは一線を画す贅沢な味わい。とくに、オーダーが入ってから網焼きで軽く炙って香りを高めている大黒本しめじが印象的。ぷりっと弾むような食感で、ほかのきのこと比べても旨みを強く感じます。
和洋中のジャンルにとらわれずお味噌汁の魅力を発信
浅草という場所柄、世界各地から訪れるゲストを意識したメニューも揃います。味噌のおいしさを知ってもらう入り口として、ポトフの要素を取り入れたというのがトマトと牛スネ肉のスープ。牛スネ肉のエキスを抽出したフォン(フランス風の出汁)を、トマト、玉ねぎ、ジャガイモといった具材に浸透させてから、有機大豆の風味を活かした「中辛口みそ」と自慢の和風出汁を加え、お味噌汁として仕上げたものです。
優しく煮込まれたトマトからフレッシュな酸味があふれ、出汁の旨み、味噌のコクと混ざり合い重層的なハーモニーを奏でます。斬新な味でいてお味噌汁らしさもしっかりと感じる絶妙なバランス。どの具材もフォンの旨みが染み渡りつつ、食感や風味といった個性もしっかりと保っており、丁寧な仕事ぶりが伝わってきます。
一番人気のメニューは味噌汁の一種であるとん汁に、フレンチや中華のエッセンスを加えたもの。フランス産赤ワイン、ドライフルーツ、ハーブで煮込んだ角煮に隠し味として五香粉を加えた具材が主役です。米麹の甘みを活かした「白みそ」と定番の「中辛口みそ」をブレンドして使用することで、個性的な角煮をとん汁らしい味わいに落とし込んでいます。
「一汁一菜でも成り立つメニューを考えました」とエディさんは言いますが、一汁だけの単品でも十分に満足できるくらい贅沢なお味噌汁ばかりでした。適度にお肉を使用したバランスの良いメニューの数々は、腸活を意識しつつ、なかなか足を踏み出せない方にもおすすめです。味噌を食べなれていない外国人のみならず、お味噌汁ばなれが進む日本人にとっても、その魅力を再認識させてくれる、目からウロコの名店でした。