【第3週のカレーとスパイス】カレー好きがこの夏一番歓喜する新店誕生! レジェンドシェフによるインド料理で味覚アップデート「インド宮廷料理 Mashal」

日本のインド料理界に多大なる影響を与えたレジェンドシェフ、モハメド・フセイン氏によるインド宮廷料理のお店が7月1日、大森駅近くのLuz大森3階にオープンしました。その名も「インド宮廷料理 Mashal」。

フセイン氏の経歴を簡単にまとめると、インド・デリーの老舗レストラン「カリームホテル」「タージ」、来日後は「アジャンタ」「シターラ」といった名店で腕をふるい、日本のインド料理の人気有名シェフ達にも大きな影響を与えた、まさにリビングレジェンド。一時池上で間借り営業と料理教室をしていましたが、遂に大森で実店舗の開店となった次第。文字通り待望の開店です。

複合施設の中のレストラン街的な場所なのですが、店内に入ればそこはこだわりの調度と内装でインド気分。落ち着いていてくつろげる雰囲気と丁寧な接客で居心地が良いです。

料理はインド宮廷料理からフセインシェフのオリジナル、そして得意のタンドール料理、南インド料理まで多種多様。まずはフセインシェフの得意とするタンドール料理から「タンドリーチキン」(1P)660円を。

「タンドリーチキン」

火入れの絶妙さはもちろん、下味がしっかりとスパイシーでありながら鶏肉自体の味が活きているということに驚きました。肉は骨に隣接した部分が一番おいしいとよく言われますが、その言葉の意味がしっかりと理解できるような逸品。素材を活かしたスパイスマジック。これは他とは一味も二味も違うタンドリーチキンです。

南インド料理から「マサーラードーサ」1,320円も。

「マサーラードーサ」

ドーサとは南インドのクレープのような料理なのですが、豆の粉でできた生地は「サクッ」と「フワッ」が共存。添えられたサンバルもチャトニもドーサの中に入ったポテトもすべてがおいしく、南インド料理専門店の名店にまるで引けを取らないクオリティの高さ。フセインシェフは南北インド料理どちらにも造詣の深い方だということを再確認しました。

写真左から「ルーマーリーローティー」と「マトンジャハーンギリーコールマー」

メインは「マトンジャハーンギリーコールマー」2,200円に「ルーマーリーローティー」550円を合わせて。余談ですがメニューのカタカナ表記にもこだわりを感じます。例えばマサラですが、正式にはマサーラー。インドの方は早口な方が多く、マサーラーもマサラに聞こえるということでマサラが一般的に使われていますが、あくまで正式にマサーラーと表記されているというあたりも流石だなと。マサーラーに限らず、すべてのメニューでそれを感じます。

閑話休題。ルーマーリーローティーはインドの言葉でハンカチが語源となっているロティーで、ハンカチのように薄いです。日本ではあまり見かけませんがインドではポピュラーで、僕自身もインド現地のお店でよく見かけ、食べた経験があります。

マトンジャハーンギリーコールマーはまさしく宮廷料理。クリーミーなグレイビーには骨付きマトンの持つうま味が隅々まで行き渡り、いわゆるクセの部分を見事においしさに変えています。クセを消しすぎるとおいしさも減ると思っているのですが、こちらは初心者でも大丈夫なくらいにやわらげつつも、マトン好きも納得するくらいに残しているという見事な着地点。具材にはピスタチオやマカナまで。マカナとはインドのスーパーフードで、ポップコーンのような食感のドライフルーツ的なものなのですが、これにクリーミーなグレイビーが半分染み込みつつも完全に染み込まないというバランスで実においしいのです。

濃厚で芳醇なカレーに対してロティーは粉の風味を感じさせるシンプルなものであり、だからこその相性の良さ。本当の意味での「ごちそう」だなと感じ、気分はもうマハラジャ。満足度が高すぎます。

他にも食べたい料理がいっぱい。これはまた行かねば。お値段は平均的なインド料理と比べると少し高めに感じるかもしれませんが、満足度がとにかく高いのでむしろ本当の意味でのコスパの良さを感じました。

インド料理マニアはもちろん、インド料理ってどこで食べてもあまり変わらないと感じている方にこそ食べてほしい絶品料理の数々。是非食べに行って、レジェンドシェフの凄まじさを体感してください!

【第4週のカレーとスパイス】早くも話題! カレー厳選区・西荻窪に腕利きシェフのインド風カレーライス店がオープン「カレーショップ フェンネル」

カレー激戦区である東京・西荻窪に、新たなカレーの名店が7月13日に誕生しました。その名も「カレーショップ フェンネル」。フェンネルとは葉はハーブとして、種はスパイスとして使われる植物のこと。ほのかな甘みが特徴です。

お店は住宅街の中にある建物の2階にあります。行列の場合は階段で8人まで待つことができ、その先は近隣に迷惑がかからないように一度諦めないといけません。開店初日に行ったのですが、話題のお店だけあって行列ができていました。

なぜ話題になっているのかというと、こちらのシェフはミシュランビブグルマンも獲得した名店「桃の実」の水道橋店(現在は本店と統合して御茶ノ水に移転)のメインシェフだった方なのです。桃の実以外でも数々の名店を渡り歩き、インド・ケララのホテルでの修業経験もあるという、知る人ぞ知る腕利きシェフだからこそ既にファンが多いということ。僕自身もその一人です。

古民家カフェ風の雰囲気の店内。壁に向かう形でカウンターの席が8席。メニューは時期によって入れ替わっていくとのことですが、開店初日は「ドライカレー」「ポークビンダルー」「バターチキン」の3種がありました。それぞれに副菜が付き、2種盛りやあいがけはできません。ここにこだわりを感じます。

昨今流行のスパイスカレーはあいがけできることが多いですよね。元々スパイスカレーは様々なカレーや副菜を混ぜて食べるスタイルのスリランカ料理や南インド料理に影響を受けたものなのであいがけも自然なのですが、フェンネルのカレーは南インド系でもスパイスカレーでもなく、あくまで「インド風カレーライス」なのです。

このインド風カレーライスという言葉。スパイスカレーという言葉が広まる前にはよく見かけられたもので、インド料理の手法で日本の米をおいしく食べられる、単体で完成したカレーのこと。シェフはそのスタイルにこだわっているのです。

「ポークビンダルー」

あいがけできないならば2皿食べてしまおうということで「ポークビンダルー」1,200円と「バターチキン」1,200円をご飯かなり少なめでいただきました。

まずポークビンダルー。こちらには「味玉」150円もトッピング。一口食べていきなりおいしい! 香りの良いチリをペーストにして使用したしっかりした辛味と酸味のカレーで、食べ進めるごとにテンションが上がっていきます。わかりやすいおいしさでありながら、インド料理としては油は控えめで、豚肉も余分な脂身を落とした状態で使用しているので重くないのです。味玉も辛さを和らげ、満足度を高める好相性のトッピング。

「バターチキン」

続いてバターチキン。トマトがしっかりときいており、スパイス感も華やか。バターの味わいはそこまで強くなく、それでいて存在感はあるというバランス。聞いてみるとバターではなくギーのみを使用しているそうで。だからこそバター感が強くはないもののちゃんとあるのですね。

副菜はマッシュポテト、茄子のスパイス炒め、ピクルスの3種だったのですが、これを箸休め的に食べたり、カレーに混ぜたりしながら食べることができ、最後まで飽きが来ません。

どちらのカレーも単体で完成しているのですが、ラジマ(金時豆のカレー)が一口サイズでご飯にのっています。これはあくまで主役のカレーを引き立てる為の脇役であり、引き算のおいしさ。桃の実でも同じようにメインのカレーがあり、セットになるとダルタルカが少し添えられていますが、そのスタイルを踏襲しつつ、同じにならないよう工夫されています。

そしてポークビンダルーにしろバターチキンにしろ、とにかく手間暇かけられまくっていて、完成されているが故に他と混ぜない方が確実においしいだろうと理解できる仕上がりでした。

「チャイプリン」

2皿も食べて大満足だったのですが、デザートの「チャイプリン」400円も追加。かためでしっとりとしたプリン。甘さは控えめでチャイの香りがしっかりと感じられ、このカレーにぴったりのデザートとなりました。

やはり何を食べてもおいしい! しっかりとスパイシーでありながら重くならないバランスのカレー。毎日でも食べられそうです。重ねて書きますがスパイスカレーではなく、あくまで「インド風カレーライス」。あいがけにしない理由は食べれば理解できるでしょう。

新しいお店ですが、古くからのカレーファンにとってはどこか懐かしさを感じる仕上がりであり、昨今のスパイスカレーファンにとっては逆に新しさを感じるようなカレーとも言えるでしょう。いずれにしても名店が誕生したことは間違いありません。西荻窪界隈の方が本当に羨ましい!

【第5週のカレーとスパイス】エスニック料理タウン・錦糸町に人気南インド料理店が移転オープン!「カレーリーブス カフェ&レストラン」

十条にあった南インド料理店「カレーリーブス」が2022年7月、錦糸町に移転。「カレーリーブス カフェ&レストラン」としてオープンしました。

錦糸町と言うとカレーマニアの間ではバングラデシュ料理が有名ですが、もともとタイ料理店が多いエリアであり、最近ではインド料理やスリランカ料理のお店も増え、エスニック料理天国とも言える地域になってきました。そんな中、十条の人気店が加わったというわけです。

南インドと言っても広いわけですが、こちらのお店はケララの料理を中心としたレストランです。まずは南インドの代表料理であるミールスを。ベジとノンベジを選べるのですが「ノンベジミールス」1,650円は、サンバル、ラッサムなどミールスを構成する基本的なおかずの他に、チキンカレー、チキンティッカ、そしてチキンビリヤニまで付いてくるというチキン祭り。

「ノンベジミールス」

十条時代から相変わらずのスタイルであり、これだけチキンだらけでもそれぞれ味付けのベクトルが違うので飽きずに最後まで食べることができます。特にチキンカレーはチェティナードチキンですっきりした辛さと香り高いスパイス感。ご飯が進みます。

写真上の色付きのご飯はチキンビリヤニ、白米はバスマティライス

ちなみにミールスのご飯はバスマティライスで、これとサンバルはおかわり可能なので食いしん坊におすすめです。

「ケララパロタセット」

そしてもうひとつ僕のおすすめをご紹介しましょう。「ケララパロタセット」1,550円です。ケララパロタとはケララ地方の名物料理でデニッシュタイプのパンなのですが、インド料理のパンの中ではこれが一番好きだというファンも多いものです。これにチキンカレーとケララビーフローストがつくセット。

「インド料理なのに牛肉を使うの?」と思う方もいるかもしれませんが、ケララはリゾート地であり、世界中から様々な人が旅をしに来る場所。だからこそ牛肉を食べる文化があるのです。そんなケララ名物でもあるビーフローストをわかりやすく言えば骨付きビーフのドライカレーなのですが、店名にもなっているカレーリーフをたっぷりと使い、牛肉自体が持つうま味がスパイスによって凝縮した形で引き立てられた料理であり、牛肉好きにはたまらないおいしさとなっています。

濃厚なケララビーフロースト、切れ味のあるチキンカレー、そして優しい味わいのケララパロタ。完璧なおいしさの三角形。

「ホットチャイ」

セットにはドリンクもつくのですが、食後に「ホットチャイ」をいただきました。南インドはとても暑い地方ですが、食後のチャイはホットに限ります。日本の夏も負けず劣らず暑いですが、やはりここはホットで。これによってすっきりと辛さが引き、満足度と幸福度を上げてくれます。

他にもマニアが喜ぶようなマニアックな南インド料理が色々とありますから、通い甲斐のあるお店ですね。十条時代からカフェ的な雰囲気でマニアじゃなくとも入りやすいお店でしたが、錦糸町でもそのイメージが引き継がれています。

南インド料理好きはもちろん、そうでない方にも行ってほしいお店です。期待を裏切らない味とクオリティの名店が移転してきたことによって、錦糸町のアジア料理がますます盛り上がっていきそうだなと感じました。

※価格はすべて税込です。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/