〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

南仏の郷土料理がたっぷり堪能できる店

浅草駅から徒歩3分。人力車乗り場とホテルの間にあるビストロ。

「Lethe(レーテ)」は2022年3月にオープンした、南仏で修業したシェフによるビストロ。驚くほど濃厚でボリュームもたっぷりな郷土料理のブイヤベースやカスレが人気だ。

同店はコースを用意せずに、アラカルトで好きなものを選べるスタイル。オープンしてまだ数ヶ月であることからグランドメニューはそれほど大きく変わっていないが、初夏になればモンサンミッシェルのムール貝が登場するなど、季節や仕入れに合わせて少しずつ変わっていく予定だ。

客が思わずすすめてしまう、鰯のマリネの前菜

「鰯のマリネ」。仕入れに合わせて鯖など他の青魚のマリネになることも。

そんなLetheのオープン時から人気の前菜が「鰯のマリネ」1,580円。白身魚ではなく、南仏でポピュラーな鰯をマリネにし、蒸したジャガイモとベビーリーフを一緒にいただく。

ジャガイモの淡白さと鰯の相性は抜群。さらに、鰯の上にかかったドライトマトのソースの酸味とレモンの酸味、全体にかけられたバジルソースの香りなどが、脂ののった鰯の味をキュッと締めてくれる。

先に来ている客が、後から入ってきた初見の客に「これがおいしいよ」とすすめるほどの人気メニューだ。

魚介の旨みがぎゅっと詰まった濃厚なブイヤベース

ブイヤベースは2人前で1ポーション。スープの残りも提供される(右奥)ので、おかわりができる。

「ブイヤベース」3,980円も、同店に来たらぜひとも食してほしいメニューだ。魚介類と香味野菜を煮込んだスープだが、同店のものはひと味もふた味も違う。

スープは、その日に処理されたばかりのアラだけを使い、数時間かけて煮込む。最初の水分量から10分の1になるまで煮詰めることで旨味が凝縮。さらに出汁をとったロブスターなども殻ごとゴリゴリと、しかし丁寧に濾すことで“旨味のもと”すべてが詰まったスープになる。テーブルに運ばれてきた瞬間に魚介の香りが広がり、ひと口食せばまるで海の恵みを丸ごといただいているかのような濃厚さだ。

驚くべきは、このブイヤベース、塩を一切使っていないということ。塩味は魚介類が元々持っている塩分だけ。それなのに、しっかりした味を楽しむことができるのだ。

パスタは浅草開化楼のもちもち麺

コクのあるラグーソースに合わせるのはオランダ産の自然派ワイン。グラスワインは800円台~。

ビストロではあるが、同店ではパスタも扱う。シェフの菅又純一さん曰く、南仏ではパスタもよく食べられるそうだ。

おすすめは、浅草開化楼のパスタフレスカを使った「牛肉のラグーソース」1,600円。浅草開化楼は言わずと知れた人気の製麺会社で、数多くの行列ができるラーメン店の麺を扱う会社が開発した、パスタ用の生麺だ。

一般的なパスタよりも太めでもちっとした食感が、コクのあるラグーソースとよく絡まる。コシがあってもちもち感が持続するため、茹で上がったパスタにソースを絡めながらしっかり火を通すことができ、熱々の状態で提供できる。これが普通の麺だと、のびないようにサッと絡めるだけとなるため、なかなか“熱々のパスタ”にはならないそうだ。実際に口に運んでその熱さを体験すると、確かに「ここまで熱いパスタはあまり食べることがないな」と新鮮な感動があった。

ラグーソースは牛すじ肉と挽き肉、2種類の肉で食感を変えている。牛すじ肉はトロトロになるまで煮込んでいて、脂の甘みが引き立っている。ここはぜひ、スパイスの風味など少しクセがある自然派ワインの赤と合わせたい。