見た目は似ていても味わいは別物。個性が際立つ麺3品

小林さんイチ押しの「さらうま」と二枚看板メニューの「こくうま」、こだわりがつまった「みそラーメン」をご紹介。ぱっと見はちょっと似ているけれど、味わいはびっくりするほど全く違う個性的な味わいの3品、ぜひご賞味あれ。

ラーメンとカレーの味のバランスが絶妙な「さらうま」

「札幌スパイシーラーメン さらうま」890円

醤油ベースのスパイシーラーメンが「さらうま」だ。鶏ガラ、豚骨、香味野菜で取った澄んだスープに、昆布や煮干しなどの和風だし、十数種類のスパイスを配合。「大切なのはラーメンとカレーの味のバランス。カレーの味が勝ちすぎないように調整して、ラーメンが勝つようにしています」

札幌は味がやや濃いめのため、寅乃虎の味を継承しつつ、関東にも受け入れられやすいようアレンジを加えている。

チャーシューの焼き目は提供直前に付ける。燻されたような香りがまた食欲をそそる

チャーシューは豚バラブロックを2時間ほど煮込んだ後、提供直前にスライスし、一枚一枚ていねいに鉄板で焼き目をつけて仕上げたもの。ほどよく脂が落ちているため、かなり分厚く切られたバラなのに脂っこさは感じず、しかも想像よりもずっとやわらかく食べやすい。焼き目を付ける際に出る煙で肉が燻されたようになり、燻製のような香りがするのもおいしさを押し上げている。

 

小林孝充さん

和風だしも入ったさらりとしたスープにスパイスを香り高く利かせてあり、森住製麵の中太麺との相性も抜群です。しっかりと焼き目が付いたチャーシューも、ほろほろとやわらかくおいしいですよ。

モチモチ、しっかりしたコシのある中太ちぢれ麺も食べ応えあり

スパイスの風味でまずカレーを感じるのだが、食べ進むうちに、動物系のうまみ、和風だしのうまみが立ちはじめ、丼の中でスープカレーと醤油ラーメンが絶妙なバランスでそこに存在している。スープに浮いている黒っぽい小片はバジル。口中をすっきりさわやかにしてくれる。

パンチのあるスープに負けない玉子麺は噛み応えがあり、箸を持つ手が止まらない。夢中で食べ終わる頃には、額にジワッと汗が噴き出してきて、体の内側から元気があふれ出そうな一杯である。

 

小林孝充

辛さは細やかに5段階に分かれ、辛さなしの「普通」、「小辛」「中辛」までは無料、「大辛」は100円、「特辛」は150円で調節可能です。自分好みの辛さを見つける楽しみもありますね。

味噌のコクとスパイスが融合したこってり味の「こくうま」

「札幌スパイシーラーメンこくうま」890円

「さらうま」よりもスープの色が濃く、麺が透けて見えないこちらが味噌ベースの「こくうま」だ。どちらも見た目は似ているが、味は全く別物だ。スープは、味噌ベースらしく濃厚かつスパイシーでキレがあり、味噌のコクと相まって、鼻に抜けるスープの余韻がまた心地よい。「さらうま」にはないゴマもアクセントになっている。

「こくうま」「さらうま」ともに、麺を食べ終える頃になってもアツアツ状態が続くのも驚きだ。その秘密は「切立丼(きったちどん)」とよばれる丼とラード。側面がシャープに切り立ち、深さがある切立丼はスープが冷めにくく、本場札幌流にスープの表面にラードで幕を張っているため、熱々が長く保たれるのだ。

一杯で二度おいしい! ご飯も一緒に注文を

米の品種は特に決めていないが、スープと合わせたときにべちゃべちゃしないよう炊き上がりの水分量には気を遣う

カレーライスならぬ、カレー雑炊を味わえるのも「札幌スパイシーラーメン」の醍醐味。食べ終えた丼の中に白飯を投入するもよし、茶碗に盛られたご飯にスープをかけるもよし、お好みの食べ方でどうぞ。スープがスパイシーなだけにお米の甘みをしっかり感じられ、別次元のおいしさに出合わせてくれる。

やみつきになる味! 4種のみそをブレンドした「みそラーメン」

「みそラーメン」880円に味付玉子120円をトッピング。玉子には「森内」のロゴの焼き印も

北ノ麺 もりうちでは、辛いものが苦手な人でも食べられる「みそラーメン」「白しょうゆラーメン」も提供している。例えば大人はスパイシーラーメン、子どもは白しょうゆなど、家族で訪れてもメニューを選べるのがありがたい。

濃厚かつ奥深い味わいに魅了されるのが「みそラーメン」。味噌は、北海道・青森・新潟・愛知の4種をブレンド。愛知の味噌は赤味噌で、一度焼いて焼き味噌にしてから合わせるなど、ひと手間かけてあり、トッピングのすりおろし生姜で味変しても美味だ。

醤油・味噌・塩に次ぐ新ジャンルをここから確立させたい

「気取りの要らない住みやすい街、鶴見からスパイシーラーメンを広めたい」と森内さん

寅乃虎の味に出合うまでは、自分が何年後かにラーメン店を開くとは想像していなかったと話す森内さん。実は自分で店をやろうと決める前、関東近県でカレー系のラーメンを提供する店を数多く食べ歩き、寅乃虎と味を比較。やっぱり寅乃虎が一番うまい!この味を関東に持ってきて広めよう!と心が決まったという。

味に魅せられ、味を継ぎ、スパイシーラーメンを醬油・味噌・塩の次に加えて確立させたいと立ち上がった森内さんの気合を感じる一杯、ぜひ味わってみてほしい。

※価格はすべて税込です。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

撮影:齋藤ジン

文:池田実香・食べログマガジン編集部