〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

「にくの匠 三芳」が京都烏丸に肉鍋専門店をオープン

とろける和牛のおいしさは世界に誇る日本の味覚。その和牛を手軽に楽しめるのが、京都・烏丸にある肉鍋専門店「伖(以下かねぐら)」だ。

通りに面した大きな窓からスライサーで肉をスライスする様子が眺められる

祇園にある肉割烹の名店「にくの匠 三芳」が手掛けたとあって、和牛の質の高さは折り紙付き。その肉を使ったオリジナルの鍋とアラカルトを2~3品頼んでも5,000円ほどという破格の料金。おいしい肉をたらふく食べて、さらにお財布に優しいという肉好きにはたまらない店だ。

カウンター6席、4人掛けのテーブル席が4つある

店があるのは四条烏丸の南側エリア、佛光寺近く。古民家を改装した店はグレーカラーが印象的なシンプルでモダンな内装。入口近くにはカウンター席が、奥にはテーブル席が並び、一人でもグループでも気軽に使えそうだ。

名店仕込みの知恵が詰まった鍋

鍋もアラカルトも1人前が基本。グループならそれぞれが好きな鍋を頼むこともできる

「使っている肉は『三芳』と同じ肉です。世の中にあまり出回らないような高品質の和牛を、気軽に食べられる店を作ろうと思いました。『三芳』の方で大きな仕入れがあるので、こちらを割安にしてもらい、この価格を実現しました」と語るのは、店主の櫻庭 優太朗さん。「三芳」で和牛についてとことん学び、大将から全幅の信頼を得て、店を任されている。

「伖(かねぐら)肉鍋」 1,300円(税込)

コロナ禍でなかなか大勢で鍋が楽しめない中、一人でも鍋を楽しんでもらおうと考案したのが看板メニューの「伖(かねぐら)肉鍋」だ。玉ねぎともやしで築いた山を幾重にも覆うピンク色に輝く和牛のビジュアルに目が釘付けになる。

「肉の部位や量から野菜の量、鍋の種類に至るまで何度も試行錯誤しながら、誰が作っても和牛をおいしく食べられるレシピを考えました」(櫻庭さん)

3分間蒸し焼きにした後、タレを回しかけて1分半。あっという間に鍋が仕上がる

鍋のレシピは実にシンプル。肉に覆われた野菜を強火で蒸し焼きにし、じんわりと水分が出たら、特製のタレを一気に回しかける。ジューッ、パチパチッと豪快に立ち上がる音と、肉にタレが絡まり焼ける匂いがたまらなく食欲をそそる。

タレはすき焼きのタレをベースにしょうゆや砂糖の種類や配合を工夫。くどさがなく、スッキリしている。初めはたっぷりの野菜と水分であっさりした味を楽しめるが、煮詰まってくると濃厚な味に変わり、白いご飯が恋しくなる。

鍋には松阪牛、神戸牛、近江牛のいずれかその日一番おいしく食べられる肉を使う

なんといってもこの鍋の魅力は、火を入れるとさらにおいしくなる牛肉の味わいだ。使う部位は肩バラ肉。適度に脂が入っているため、多少煮込んでも硬くならない。

「サックリと噛み切れて、けれど薄くなり過ぎないように。何度も厚さを試して、この厚みにたどり着きました」と櫻庭さんは語る。鍋も焦げ付きにくいものを使用するなど、最後までおいしく食べてもらう工夫が隅々まで行き届いている。

玉ねぎは食感があるように厚切り、もやしは食感と味わいにこだわり2種類使っている

脂の融点が低い肉は、溶けた脂が口の中でスッと甘みに変わり、胃もたれすることがない。くどすぎないタレは肉の旨みと甘みを引き立て、肉の旨みがしみたシャキシャキの野菜と共に食べれば、箸が止まらなくなるおいしさだ。