〈広島お手軽ランチ〉

新たな飲食店が次々とオープンし、入れ替わりの激しい広島市中区本通界隈で、45年以上親しまれている一軒のカフェがある。ユーモラスな表情が特徴の看板馬・ドンキー君が迎えてくれる「T’s café ゲートイン」で、人気のランチやスイーツを教えてもらった。

純喫茶とカフェが融合したような、ほかにない佇まい

看板馬の“ドンキー君”が目印

東西577mにわたってのびる歩行者専用アーケードの広島本通商店街には、昔から営む商店や流行りの新店などがひしめき合っている。周辺での店舗入れ替わりも多い中、西側にある「T’s café ゲートイン」は創業1976年と古く、常連客はもちろん若者世代も多数訪れる稀有な店だ。

新聞や雑誌なども置かれ、ゆっくりとくつろげる店内

目印となっている馬のマネキン・ドンキー君の存在と、“ゲートイン”という店名からも察しがつく通り、競馬が大好きという創業者の高橋真さんが脱サラしてオープンさせた。開店当初は純喫茶の趣で、競馬新聞を片手に早朝からコーヒーやモーニングを楽しむ男性客で賑わっていたそう。

現在、店を切り盛りするのは、2代目店主の高橋肇さん

2代目の高橋肇さんが店を継ぐ際に、老朽化してきたこともあり全面改装が決定。今までの雰囲気を壊したくない真さんと、もっと今風にして新規の客を呼び込みたい肇さんとで意見が衝突し、改装方針が定まらなかった時期もあったという。「結果的には互いが譲歩するかたちで今の店になったんですけど」と、肇さん。

変わらぬ味の手作りランチに、種類豊富なフードメニュー

日替わりランチ

「日替わりランチ」830円

店の名物のひとつが、創業時から変わらない「日替わりランチ」。なんと累計83万食を突破しているという人気のメニューで、日替わりのおかず2品にサラダ、小鉢が付き、ライスかパンを選べる。すべて手作りのおかずは、家庭的でほっとする品が並ぶ。11~15時と遅めの時間帯まで提供しているのもうれしいポイント。

グリーンサラダやポテトサラダで野菜もしっかり摂れる

この日のメインは、カニグラタンコロッケとしょうが焼き。ザクッとフォークが入る厚めの衣にクリーミーなホワイトソースが絡むコロッケは、どこか懐かしい味わい。甘辛く味付けしたしょうが焼きと味のしみたコンニャクの煮物で、ついご飯が進む。メインの肉料理は、鶏、豚、牛を日替わりで使用し、焼いたり揚げたりと調理法を変えるので、毎日訪れても飽きることがないよう工夫されている。

広島たこドリア

「広島たこドリア」1,320円

日替わりランチの他にも、手ごねハンバーグや三元豚のポークカツプレート、豚キムチ丼、ピラフ、パスタ、カレーなどのフードメニューが豊富にそろう。

店は平和記念公園に近く、観光客も多い立地。「県外の人に広島名物を知ってもらえたら」と開発された「広島たこドリア」にも併せて注目したい。歯応えが楽しい三原やっさタコと広島菜をメインに、味付けは地元「毛利醸造」の「カープソース」を使用。ソースのスパイシーさがホワイトソースに意外にもマッチする。タコのコリコリ&広島菜のシャキシャキ食感が味わえる新しいドリアは、こんがりトロトロの見た目からも食欲をそそる、ぜひ一度オーダーしてほしい一品だ。

慣れた手さばきで料理を仕上げる様子に釘付けになる

入口に近い席からは調理中の様子が見え、勢いよく注文を捌いていく高橋さんとスタッフさんたちの姿が確認できる。「お客様をお待たせしないように」と手際よく作りつつ、連携の取れた動きで接客する点もまた、同店が人気である理由のひとつだろう。